第1章 第11話 出現!伝説龍(後編)

「どうしてこんな所にいるの!?」




  玲奈は目の前の巨大な生物を見た瞬間にそう叫んでいた。


 世界には、勝利不可能と言われている生物が3種類いる。まずは「神獣しんじゅう」、次に「破滅種ロストモンスター」、そして最後に「伝説龍レジェンダリードラゴン」。


  それらは基本的に洞窟の深層や、遥か上空。あるいは、別次元にいる個体すらも存在している。つまりは、人間の住処に居るはずがないのだ。


  だが、今目の前にいる龍は大きな体に蒼炎をまとい、そして四足歩行だ。この特徴に当てはまる生物は一つだけ。




「イフリート……しかもあなた亜種ですわね!」




  玲奈と苺は剣を構え既に臨戦態勢だ。だが、相手はじっと2人を見据えて動こうとしない。実力では圧倒的優位に立っているはずの伝説龍イフリートが、何かに怯えているかのように微動だにしない。




「不気味……この子、私たち以外の何かを怖がってる」


「そのようね。どうする?でも引くわけには……」




  2人がどうしようか迷っていた時、どこからかこちらに走る気配と、飛んでくる気配が近づいて来た。




「グガァァァァァァァァ!!!!!」


「あーもう!来てそうそううるさいな〜」




  そして、莉音ともう1匹の伝説龍が同時にその場に現れた。






 ・・・






「えっと?これはどういうお出迎えなのかな?」




  二匹の伝説龍と対峙しながら、私は剣を構えていた。




「グガァァァァァ!」


「ゴアァァァァァ!」


「あ〜もう!うるさいって言ってるでしょ!」




  私は剣で牽制しながら、玲奈と苺を庇える位置に移動した。昔はかなり苦戦していたけど、今はどうだろう。わからないけど、まぁ勝てるかな。いうてイフリートとその亜種だし。




「り、莉音!まさか戦おうって言うんじゃ!?」


「もちろんそのつもりだけど?」


「いや!馬鹿なの!?本気で死にたいの!?」




  玲奈が必死に止めにかかってくるけど、正直死なないんだよね。ほんと、死ぬか死なないかの戦いをしてみたいものだよ。




「大丈夫だよ玲奈。見たくないなら、私が合図してから10秒だけ目をつぶってて」


「何を、するのです?」


「抜くよ。魔剣」




  そんな会話をしている間に、二匹の伝説龍は猛スピードで突進してきていた。無謀だね。腐っても伝説龍なら、相手との実力差くらい気づけっての。




「そうだとしても伝説龍2体同時にって!あまりにも無謀過ぎます!」




  そんな玲奈の声を置いて閃光が弾けた。「天穿雷鳴レイクライシス」の名の通り、その魔剣は光より早く、何よりも遠い場所まで届く光を放つ。


 


「口ほどにもないね」




  倒れる2体の伝説龍の間で、心底残念そうな顔をしている少女を見て、玲奈と苺は呆れしか感じなかったという。

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