第1章 第14話 代償という名の呪い

 魔剣の代償


  それは本来語り継がれていくものであった。だが、戦争という愚かなる争いが、人々にそれを忘れさせた。


  世界には8本の魔剣が存在していた。そのうちの3本が消滅してしまっている。その理由が、魔剣の代償だという。






 ・・・






「ここなら大丈夫そう……降ろしてくれる?」




  玲奈に背負われながら理事長室まで移動した。実を言うともう普通に動けるのだけど、玲奈に降ろしてと頼んでも降ろしてもらえなかった。まぁ、楽だからそのままにした。




「それで、魔剣の代償って?」


「えっとね、その前にまず大前提として。魔剣を使うためには1つ、契約を結ばなければならないの」




  私は今、少しだけ禁忌を犯す。でも、これは魔剣の代償を話す上で必要不可欠なこと。そもそも、魔剣の代償を露呈すること自体が禁忌なのだから。




「その契約の存在は知ってる?」




  私のその質問に首を縦に振ったものはいなかった。それもそうさ。このことを知ってるのは世界で7人しかいなかったんだから。




「その契約は魔剣の本体と結ぶの。そうすると、契約者は魔剣の力を自由に使うことができ、魔剣は契約者の中に身を置くという関係になるの」




  それを聞いたふたりの表情が一気に険しくなる。まぁ、そうだよね。力を得るために体を売ったって言ってるようなものだもんね。でも、私の中の子達は大人しいよ。そうだね……もう本題に入ってもいいかな。




「それでね……魔剣を使うと、その強すぎる力を使う代償だいしょうを払うことが決まってるの。これはどの魔剣も同じ。内容は違うけどね」




  苺ちゃんが何か言いたげだった。私はどうしたの?と問いかけた。




「1つ、質問。どうしてそれが、呪い?」


「う〜ん……難しい質問だね。あのね、これは私が勝手に呪いって言ってるだけで、本来は代償なの。分かりにくい言い方でごめんね」


「納得した。私こそ、話遮って、ごめん」




  二人とも顔の険しさが抜けきってはいないけど、少しは和らいだかな。優しいね。出会ってまだそんなに経ってないのに、ここまで心配してくれるって。




「魔剣の代償のろいは、魔剣の番号が低くなる毎に強くなっていくの。力に比例するようにね。それで、私の魔剣の代償は……」




  本当にこの先を言うべきなのだろうか。でも、もう戻ることは出来ない。ここで立ち止まることは、2人への裏切りでしかない。


  だから私は、覚悟を決めて言う。もう、苺ちゃんには気づかれちゃってたけどね。




「寿命なの」




  鼓動が加速する。空気が張り詰めて行く感じがする。この感覚はなんだっけ?でも、そんなのを考えてる暇はない。




「それと、もう1つ……私、私ね……」




 その先は音にならなかった。目からこぼれ落ちる雫は、音にせずとも2人には伝わったであろう。


  2人は何もせず、じっと私を見つめていた。優しい、慈母のような表情で……


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