第1章 第3話 自己紹介

「とりあえず、自己紹介から始めましょうか。と言いましても、2人ほどいませんが」




  机の上に紅茶と少々の袋菓子を置いたタイミングで、唐突に玲奈が切り出した。




「じ、自己紹介ですか?」




  予想はしていたけどあまりにも早い展開で戸惑っていると、この場唯一の男性が1番に口火を切った。




「俺は黒宮くろみや まさるだ。言っとくが、俺はお前と馴れ合うつもりは無い。わかったらあまり干渉してくるな」




  どうしてそこまで私のこと毛嫌いしてるのだろう。さっきの喧嘩の時に言ってたみたいに、弱い人には興味無い的な感じなのかな?それとも、昔のことで……?


  いや、そこまでは考えすぎかな。




「次は私だね!私は須藤すどう こころって言うの!ねぇ君、ひとつ聞いてもいい?」


「な、なんでしょうか?」




  心は私の目の前に来てものすごく小さな声で大きな地雷を踏んで行った。




 ねぇ、何番の魔剣持ってるの?




  私以外に聞こえないように配慮したのだろうけど、私にもたらされた動揺は計り知れない。動悸が速くなる。冷や汗が背中からぶわっと出てくる。声が出なくなる。




「ねぇ心。莉音になんて言ったの?」


「ん?私とあの子だけの内緒話だよ〜」




  どうして分かったのだろう?私の正体を知っているか。それとも───




「次は莉音だよ。私は呼んだ時にしたから良いよね」




 ───私と同じ、魔剣を操りし者なのか




「ほえ?」


「ほえ?じゃないよ。次、莉音だってば」


「え?あ、はい。私は桜崎 莉音です。ちっちゃいけどこれでも16です。はい……」


「え〜!それで16!?見えない!え?!ずっと年下だと思ってたのに」




  失礼か!?この人失礼か!?いや、でもまぁ常識弁えてはなさそうだし。初っ端魔剣に触れるとか、結構なタブーなんだけどな……




「心、それくらいにしときなさい。莉音が泣きそうよ」


「違うもん。泣きそうじゃないもん……なんかうるうるしてるだけだもん……」


「いや、それを泣きそうって言うんだけど……」




  初日から慌ただしい……でも、こんな日常も悪くないなって思えるのが不思議だ。魔剣のことは、忘れよう。もう二度と抜くことは無いだろうから。




「そういえば、莉音ちゃんのデータはどうするの?取るの?」


「取るに決まってるでしょ。むしろ取ってみたいくらいよ」




  データ?そんなのがあって何になるのかな?あ、もしかして生徒として必要だから?なら仕方ないのかな。




「そうね……莉音、明日って空いてるかしら?」


「はい。というか、いつでも空いてますよ」


「わかった。それでは、明日の放課後に模擬戦を行います。ルールは特にないので全力でやってくださいませ。不死の結界の中でやってもらいます」




  なんだか物騒な模擬戦……というかそれは模擬なのか?!半分殺し合いじゃ……




「相手は将で」




「え!?!」


「はぁ!?」






  同時に2人の声が響く中、何か企んでいるような笑みで私を見ている玲奈がそこにいた。

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