第1章 第2話 私の居場所

  人は神になろうとした。どうしてか。


  それは愚かだからだ。


  愚かだからこそ人間は、神になるために戦い、争い、醜い結果ばかりを残していく。


  だからこそ、「人」が神になるという「夢」を持つことが「儚い」とされているのだ───






 ・・・






  永い間、私は夢を見ていたのかもしれない。長きにわたった戦争を終わらせ、英雄の名を欲しいままにして消えたとされている私は、神にでもなった気分でいたのかもしれない。


  でも、実際蓋を開けてみると何の変哲もない人間で、周りと同じ場所に立っている。


 


「結局、私は何も変われてない」




  戦争中に必死に生き延びようとしていただけの私から、何も成長してない。


  あの日の、「どうして生きるために戦うの?」への答えを私は知らない。


  そんなことを考えているうちに、生徒会室の前に着いた。光はついてるから、誰かいるのだろうか。




「すみません、失礼し──」


「だ〜か〜ら!理事長直々の推薦を受けてるんだから充分ここに入る実力はあるって!」


「お前が何を言おうと俺は認めん。今日1日観察してみたが、あれはダメだ。鍛えられてない細々とした肉体に加え、魔力値は平均ときた。あんな者がこの学園に通ってることすら不思議なくらいだ」




  ドアを開けて入ろうとした時、中から喧嘩している声が聞こえた。私の事でもめちゃってるのかな?それだとしたら申し訳ないな……




「ここは聞かなかったことにして帰ろう……」


「どこに帰るって?」


「ひゃあ!?」




  びっくりして変な声が出てしまった。そりゃ無いよ……振り返ったら怖〜い笑顔で玲奈が立ってたら驚くよ誰でも。もしかして聞かれちゃったかな。だとしたら…………




「なんであの子がここに入る価値があるってわからないのかな?!馬鹿なの!?死ぬの!?」


「何度言われようと変わらん。それに俺は馬鹿でもなければ死なん」




  なんて思ったけど、うるさい口喧嘩は続いていた。そのことに少し安堵したのも束の間、玲奈の行動に度肝を抜かれた。




「おらぁ!お前ら!!喧嘩なんざしてねぇで仕事しろ、仕事ぉ!!」




  ガシャーンという音とともに怒号が鳴り響いた。というか、今更だけどさっきの喧嘩の原因って……




「さ、莉音。おいで」




  眩しい光を背に私の方に伸ばされた手を、取る以外の選択肢が私の中には無かった。その一瞬で全てが変わったかのように、私の中に何かが広がって行った。




「ようこそ。白夜学園執行部へ」




  無機質な言葉なのに、骨の髄まで染み込んでくるような感覚だ。そっか。やっと見つけることが出来たんだ……私の居場所。私が本来居るべき場所を。




「ここに…………あったんだ……」




  たった1粒の涙と共に零れたその言葉。血に濡れた少女の心に落ちたそれに気づいた者は、誰一人としていなかった。

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