第1章 第1話 白夜学園
「来てくれてありがとうございます」
「いえ。私の方も引きこもりを卒業するいい機会かなって思ったから」
学校なんてものとは無縁だった私も、一般教養位は身についてる。散々お父さんに叩き込まれたから。
それはさておき、一つ気になることがある。どうして目の前の理事長が私と同じ服を着ているのだろうか。
「まずは入学手続きからですね。それでは──」
玲奈は再確認するように学園についての説明をしていく。これは事前に渡したパンフレットに目を通しているかの確認だろう。試しているのか。単なる作業なのか。どちらにしても、しっかりしている。
「───で以上となります。質問が無いのなら、最後の入学手続きをしますが?」
「大丈夫だよ。もう頭の中に入ってる」
「わかりました。では───」
玲奈が立ちあがり、理事長専用の教卓の向こう側に行き、振り返りながら言った。
「ようこそ!白夜学園へ!」
・・・
私が白夜学園に入ろうと思ったきっかけは、結構どうでもいい所だった。
そう。それは玲奈に渡されたパンフレットに書かれていた、大きな見出しだった。
『魔法使い専門の戦闘訓練学校』
これ以上に楽しそうなものあるだろうか?いや、私は知らない。より強い者との戦い、その中で自分を見出すこと以外の楽しみなんて。
それ以外にも、長らく感じることのなかった悦びを感じたところ。そこに惹かれた。
「楽しみだな〜。殺しちゃいけないから、本気では出来ないけど……」
白夜学園には魔法剣という特殊な戦法を用いて戦う定例戦なるものがあり、それによって学園内の順位が決まる。
つまり、全力の戦いがあるということ。
私にとってそれは、1種の本能から来る欲望を満たすために必要なことであった。
「大丈夫かな……ちゃんと、人と接することできるのかな……」
人生で何度目かわかららない弱音を零しながら、茜色に染まった空の下で、ただ立ち尽くすのだった。
・・・
「こいつは今日から編入となる
想像以上にぶっきらぼうな紹介と、まばらすぎる拍手に出迎えられ、私は学園の日常に参加した。
学校の授業は退屈で、聞き流す程度で受けていた。ただ、いつの時代も転校生は珍しいのか、休み時間は質問攻めだった。「どこから来たの?」「誕生日いつ?」等から「どんな魔法を使うの?」に至るまで三者三様で、一つ一つに答えるのが面倒くさかった。
「莉音さん、放課後に生徒会室まで来てください」
そんな中でこんな放送が流れてしまったもんだから、質問の勢いは増すだけだった。
「玲奈、絶対わざと…………」
教室の隅でこちらを見ている玲奈に、私は涙目になりながら怒りの眼差しを向けるのだった。
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