第6話 手を繋ぎたい

「まずはメリーゴーランドだよね!」


 遊園地に入園すると、真っ先にめぐみは俺に提案する。

 メリーゴーランドといえば、ホワイトウォッチーズがロケした場所だ。メリーゴーランドの前でダンスしたり、メンバーが木馬に乗るシーンがパフォーマンス動画に盛り込まれていた。

 だからこの提案は想定内。だってこれがめぐみの今日の目的なんだから。


「じゃあ、行こっか!」


 俺は、めぐみとピッタリのタイミングで駆け出した。




 メリーゴーランドの前でスマホで写真を撮るめぐみを横目に、俺は入場客を観察していた。

 女の人、男の人、子供連れの家族も多い。

 俺が注目するのはカップルたちだ。悔しいことにほぼ全員、手を繋いでいる。

 高校生らしき二人、大学生らしき二人、女性同士のカップルもいる。なんだかすごく羨ましい。早く自分もそうなりたいとしみじみ感じてしまう。男同士ってのは嫌だけど。

 それにしてもあの女性同士のカップル、ちょっと怪しい感じだなあ。二人ともサングラスを掛けてるし。お忍びなんだろうか——と目で追っていると、「次どこ行く?」とめぐみから声を掛けられた。


「じゃあ、ジェットコースターでも行くか!」

「うん、行く行く!」


 もちろん歩き出しも一緒だ。

 思わず俺たちは顔を見合わせ、くすくすと笑い合う。

 なんかいい雰囲気じゃないか。ああ、めぐみと手を繋ぎたい。

 そう念じていた俺は、いつの間にか二人の物理的な距離が縮まっていたことに気づかなかった。


 その時だった。

 めぐみの肩に俺の腕が触れる。

 刹那、ビビっと時計からの刺激が「今だ!」と脳に訴えた。


 ゆっくりと繋がれる手と手。

 そのタイミングもバッチリだ。

 掌を通して彼女の温かさが伝わって来る。と同時に、心もジーンと熱くなった。

 愛おしさが爆発しそうになり、俺はぎゅっと強く手を握る。するとめぐみも握り返してくれた。

 言葉は必要ない。そんな至極の時間が、俺たちを包んでいた。

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