第4話 本物なの? この時計

「えっ、この時計って……」


 金曜日の放課後、誰もいなくなった教室でめぐみに時計を渡す。

 時計を見た瞬間、めぐみは瞳を輝かせ始めた。つまり、これがどんな時計なのか瞬時に理解したということ。さすがライブに通うだけのことはある。


「ホワイトウォッチーズの時計じゃん。どうしたの、これ。今度レプリカを発売することになって、お姉さんからサンプルをもらったとか?」

「違うよ、本物だよ。姉貴から借りてきた」

「えっ…………」


 瞳をまん丸にするめぐみ。

 絶句するその表情だけでも、本当にホワイトウォッチーズのことが好きなんだと分かる。そんな彼女のことを、思わずぎゅっと抱きしめたくなってしまった。


「どうしちゃったの? こんな大事なもの私が借りちゃってもいいの?」

「だって明日行く遊園地って、ホワイトウォッチーズがロケしたとこなんだろ?」

「うん、そうなんだよ」

「だったら、それ着けて行ったら気分は爆上がりだろ? 遊園地から帰る時に帰してもらうけど」


 マスターとかサーヴァントとか、そういう話は内緒だけど。


「ありがとう。翔、大好き!」


 めぐみが両手で俺の手を握ってくれる。

 こういう行動が勘違いの元なんだよ。それに、そんなにキラキラした魅力的な瞳で見つめないでくれ。ますます好きになっちゃうじゃないか……。


「じゃあ、今からこの時計着けるよ。明日の夕方までずっと」

「まあ、いいんじゃない。風呂はダメだぞ、たぶん」

「そうだよね。超お宝だもんね。へぇ、これが本物の時計なのね……」


 めぐみはまじまじと時計を見つめている。

 ディスプレイの縁が金色に光る白い時計を。

 こうして俺のデート大作戦が始まったのだ。

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