第3話 彼女のサーヴァントになりたい

「ほら、俺のクラスメートに東鳴ひがしなるめぐみって子がいるだろ?」

「えっ? ああ、あのめぐみちゃんね」


 めぐみは、最近俺と仲良くしているクラスメートだ。

 彼女——と言いきれないのは、めぐみには恋愛感情以外に俺に近づく理由があるから。


「この前もライブ来てたわよ」


 そう、めぐみの推しはホワイトウォッチーズなのだ。

 だから俺と一緒にいるときは、いつも姉貴の動向を聞いてくる。

 俺がメンバーの弟と知って近づいて来たのは明らかだ。


「そのめぐみに、週末遊園地に行こうって誘われてるんだよ」

「女の子と遊園地に? それってデートじゃん。やったね!」

「やったね、じゃねぇよ。めぐみの目的は俺じゃないんだよ。だって最近遊園地でロケしたんだろ? パフォーマンス動画を撮るために、ホワイトウォッチーズはさ」


 心当たりがありそうな表情をする姉貴。

 やっぱりそうだったのか……。

 めぐみにとってその遊園地は正に聖地。一人で聖地巡礼するよりも、関係者と一緒に行った方が心が沸き立つに違いない。


「めぐみちゃん可愛いもんね。ホワイトウォッチーズ目当てで近づいてきためぐみちゃんのこと、翔は好きになっちゃったんでしょ?」

「そうだよ、悪いか?」


 正直に姉貴に打ち明ける。

 確かにめぐみは可愛い。クラスの中でも上位に入るくらいに。

 そんな女の子が、クラスの男子の中では俺だけに親しげに話しかけてくるのだ。勘違いするなと言う方が難しい。


「めぐみの本心が知りたいんだ。遊園地で聖地巡礼だけがしたいのかってことを。俺という男が隣にいるんだぜ。手を繋いだりするくらいに、いい感じになったっていいはずだろ?」


 いい雰囲気になったら二人で観覧車に乗っちゃったりして。

 この時計があれば、キスのタイミングだって掴めるかもしれない。


「じゃあ、単刀直入に聞いちゃえばいいじゃん?」

「それマジで言ってる?」

「ダメなの?」

「ダメに決まってるだろ? もし俺には興味がないって言われたらどうすんのさ。二度と立ち直れないよ。だからそういうのをさりげなく探りたいんだよ、この時計を使ってさ」


 たとえ俺に興味がなくても、一緒に遊園地に行ける今の関係を維持したい。単刀直入に聞いてしまうと、そんな淡い関係すらも壊れてしまう可能性がある。

 仲良く話ができる関係を続けているうちに、もしかしたらという急展開があるかもしれないんだから。


「事情はわかったわ。大丈夫、お姉ちゃんが応援してあげるから」

「この時計を貸してくれるだけでいいよ。間違っても余計なことはしないでよね?」

「わかった、わかったよ……」


 なんだかちょっと嫌な予感がする。

 俺は姉貴のことを視線でけん制しながら、二台の時計を受け取った。

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