ひたすら進む
red13
ひたすら進む
僕の両親は、僕が小さい頃に離婚した。僕は父に引き取られ、育てられた。今の僕はごく一般的な高校二年生であると思う。親しい友人が一人もおらず、彼女もいない。そんな僕をクラスメイト達は陰キャラであるという。
そんな僕はある時、父から誘われ散歩に出かけた。父と一緒にしばらく歩いていると海の上にある歩道橋が見えた。その歩道橋を歩いていると、父が
「ここの海をしばらく眺めてみないか」
と提案してきた。僕はその提案に乗り、父と一緒にしばらく海を眺めていた。
ふと、父が何か思い出したかのように
「お前は彼女を作ったりしていなかったと思うが、最近、好きな女の子はいたりしないのか」
と聞いてきた。僕は父に対して、
「いや、いないよ。いたとしても、僕は付き合うことが怖いから、告白したりはしないだろうけど」
すると、父が
「そうなのか? 小さい頃は春香ちゃんに結婚してください、と大胆な告白をして。その後、振られたことをずっと引きずっていたから、今でも好きな女の子がいれば告白して付き合うとばかり思っていたが」
「僕は昔とは違うんだよ。父さん」
僕は父の言葉に即答した。
そんな話をしていると、僕は秘密にしていた思いを父に伝えようと思った。
「父さん」
「なんだい?」
「実は話しておきたいことがあるんだ」
父は僕が何らかの決心をして話し始めることを察したようだ。真剣な眼差しでこちらをみている。僕は心情を告白することにした。
「僕は父さんを、いや、親を憎んでいるんだ」
「なぜ?」
父は驚きつつも僕に質問した。
僕がなぜ親を憎むようになったのか? それは両親の離婚がきっかけであったのは間違いない。僕の母は自分の幸せのために結婚し、子供を産んだような人だった。それは誰でも親なら持っている側面であっただろう。しかし、母はそれが露骨すぎた。僕が生まれた直後から母は自分が達成できなった夢などを押し付けてきた。僕が3歳になると、思った通りに僕ができなければ暴力を振るうくらいだった。自分も達成できなかった夢を息子に押し付けているくせにと僕は思っていたが。そんな母の行動を見かねた父は母と離婚することにしたのだ。それ以来、僕はすっかり過敏になってしまった。母だけではない。父や、世の中の親という存在そのものを憎むようになった。そして、親になってしまえば、僕も親のエゴイズムを子供に押し付けてしまうだろうと。だから、僕は親になりたく無いのだ。
「そうか。お前が親を憎んでいることはわかった。だが、別に結婚したら必ず子供を作らなければならないわけじゃ無い。それに、デートすれば結婚しなければならないわけでも無い」
「僕はかなり過敏なんだよ。親予備軍の連中とも付き合いたく無いんだ」
僕は父の質問に対して、そう答えた。そうだ。付き合えば幸せになれると思っている奴ら、結婚すれば幸せになれると思っている奴ら、子供を作れば幸せになれると思っている奴ら全員、俺は憎いと思っている。
ふと、灰色の海を見る。父に話せば気分は晴れると思っていた。しかし、ちっともハレやしない。俺は灰色の海のようだ。そうだ、話せば楽になれると思っていた僕も、子供ができれば幸せになれると思っていた連中も本質は変わらない。そうなれる保証がなくとも人は進むしか無いのだ。
「行こう」
僕は父にそう言うと歩き進めた。そうだ、人は自分の道を進むしか無いのだ。僕の気分は晴れない。しかし、進むしかない。
ひたすら進む red13 @red13
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます