第9話 三輪家と白峰家は親戚です ②
※
「お待たせしましたぁ。マルゲリータのミートソースにオムライス。カルボナーラです」
「うわぁ。凄い大きなオムライスぅ!」
まんまるなお目目を輝かせる
何だか。凄く多くね?
1人前? 3人前くらいの多きさじゃね? ほら
「食べれるかな……」
だよねだよね。
「いただきまぁす」
「いただきまぁ~~す!」
いあ、もう食べる前から分かってる。これ絶対美味しいヤツだと。
案の定と言うべきか、そりゃぁもう今日の昼に食べたサンドイッチよろしく美味すぎだった。そして向かいの席に座る
「美味しい~!」
口元を手で隠しながらうっとりとした口調で感想を述べる
美味い。美味いのはいいんだけど、この量……食えんのかよ! そんな心配を抱きつつも次々と平らげて行く
「お姉ちゃん。ちょっと頂戴」
小皿に分ける
だが……いくら空腹だと言っても限度があるだろう。最初見た時にもコレ絶対食べきれねぇと思ったが、思った通りに限界が来るのであった。外食で残すなどとあってならぬ! などと妙な正義感だけで頑張ったが流石にもう無理だって。
「大丈夫ですか? ちょっと多い。ですよね?」
気づいてくれた
半分以上残っているカルボナーラ。美味しい。美味しいのにもう限界すぎる。そう思ってると、横から沸いて出て来たのは
「すいません。ちょっと厨房の方で間違えちゃったみたいで特盛になっちゃってました。ごめんなさいね三輪さん。下げましょうか?」
特盛ってレベルじゃねーって! 3倍パンチだっつーの!
鼻からパスタが出かかったが、何とか思いとどまった。ウチは返事できずにいると
だよね? この量は絶対おかしかったよね? 一人で食べれる量じゃないもん!
お相撲さんとか、フードファイターが食べる量だって。
ささっとお皿を回収していく
「ごめんなさぁい! お、お、オーダー間違えちゃって……しょの。しょの。多い方がいいかなって……食べれるかなって……」
あの……弟さん? 何でそんなに顔赤くしてクネクネしてるの?
「あのっ! お代はその……通常料金で大丈夫です。あっ! やっぱり無料でもいいです。こちらの間違いですからっ。無料ですよ。全部無料です」
え? これには
「あっ。もし良かったらデザート。デザートお持ちしましょうか? パフェとか、いかがですか?」
思わず口の中のモノが出そうになったが、それはウチだけではなく
特盛マルゲリータミートソースを3人前くらい食べただけスゲーけど、やはり
「もちろん。無料……無料。かな? 無料で良いと思いますよ~」
さっきから意味不明な言語と笑顔を振りまく弟さん。何だよこの喋り方は! その顔でまさか男の娘だったの? いや! 待て! もしかして本当に女の子? そう思った次の瞬間――
「ぐはぁ!」
断末魔のような叫び声をあげた弟ちゃん。イケメンらしからぬ変顔を見せた後、その場に崩れ落ちるのだった。その後ろには
え? いま何をした? 分からねぇ。なんとなく
弟さんの首根っこを掴み、さっさと店内に退散する
そんな事があったにも関わらず
マジで凄いわこの人。全然大丈夫じゃねーと思うのはウチだけなのか?
※
「ありがとぉございました。
とりあえず「また来ます」と返事した
「またね~
厨房から弟さんがめっちゃ手を振っていた。これにはウチも手を振らざるを得なかった。
な、何であんなにフレンドリーなの? それが全くもって謎なのである。
店から出た後、
「あの、ここからコンビニって近いですかね? 出来れば寄って帰りたいんですけど」
まるで店内での話をすっ飛ばしたように
「ビックリですね~
あ。そうか。
「ピンクの髪のお姉ちゃん凄かったね。ビュンビュン走り回ってて、お姉ちゃんみたいだった」
お姉ちゃんみたい? 華凛(かりん)ちゃん? どういうこと?
えっと~それは楓蓮(かれん)お姉さんみたいだったってこと?
「凄かったよな。メイド服着ててあの俊敏な動きはやべぇ。っていうか何だか……俺達の知ってる
そ、それ! その話がしたいんだよ!
「べ、別人だよね?」
「ですよね。別人なくらいキャラが違いましたもん」
ほら!
見た目は同じ。中身が全然別人なんだよ!
さぁその話で盛り上がろうよ。そう思ってたら
「今日知った事は、男の子の時とは別に考えるんだよね?」
そう言いながらまた
「そそそ。別人として考えるんだ」
「
「つまり~今日は、親戚である
「なので
なるほど。意味が分かったぜ。分かりやすい説明ありがとう! そして美人すぎるぜ。
「
「うんうん! 分かってるよ」
う~ん。知ってるのに知らないフリか。何だか面倒臭そうだな。
「そろそろ
別人として生きていく……か。その時ふと、挙手する三輪さんは、
「何か手伝えることはあります?」
などと口走ってしまったが、ウチにも……ウチにも何か出来ることは無いのかな?
すると
「これからきっと、三輪さんには助けてもらうことになると思います。その時はよろしくお願いします」
えぇ~? ウチがこの
「ねぇ
突然言われたのでビックリしたが、即答でコクコク頷くと、微笑を見せる
なんで? めちゃくちゃ便利で最高の人生じゃないか?
男としても女としても生きることが出来て、更にその恵まれた容姿に何が不満なんだよ。
「それが……全然便利でもなくて、わりとその、苦痛だったりするんですよ」
え? 苦痛?
確かに今の
「まぁ、それは追々説明していきます。実は俺達家族って普通に暮らしてるようでも……色々と大変なんです」
色々とありそうだな。そう思わせる口ぶりに
「何か出来ることがあったら、私にも教えてください」
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