第13話 リーシャを犯そうとした奴の末路
「〝勇者〟と呼ばれる人がどれほど強いか、あなたはそれを知った上で今の話をしていたのですか?」
怒ったような口調で言うリーシャ。
俺の事を馬鹿にされ、それで怒っているのだろうか?
だとしたらちょっと嬉しい。
だが、感情のままに行動を起こさないで欲しいとも思う。俺は俺でリーシャの身が心配だ。
何せ、我が身を守れる程リーシャは強くない。魔王なのに、弱い。多分、このゴロツキ共よりも。
「あぁ?お前、俺様のこの筋肉が見えねぇのかよ!?あんなヒョロっとした勇者なんかより俺様の方が強いに決まってんだろ!? あ?」
そう言ったゴロツキの一人、よりガタイの良い方がリーシャへ自慢の筋肉を見せるよう腕を差し出した。するとリーシャはそれに対して、
「筋肉馬鹿。あなたみたいなのを〝雑魚〟って言うんですよ」
と、冷たい口調。
ゴロツキは真っ赤に顔を染め、
「んだと、テメェコラ!!もっかい言ってみろ!!」
そう怒声を上げてリーシャの被るフードを払いのけた。
するとリーシャの美貌が露わとなり、ゴロツキ達はそれを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ほう。お前中々の上玉じゃねーか……」
そう言ったゴロツキはすかさずリーシャの体をヒョイと担ぎ上げ、暗がりの路地裏の方へと歩き出した。
「――ちょ!?え!? な、何するんですか!?離して下さい!!」
担ぎ上げれたリーシャは体をジタバタさせ必死に抵抗するが、か弱きリーシャがそこから抜け出せるはずもなく、
「ギャハハハ!!俺様といい事しよーぜ?なぁ、お嬢ちゃんよぉ」
「最近俺達溜まっててよぉ。嬢ちゃんのその綺麗な身体で良い思いさせてくれよ、なぁ!その代わり俺達も嬢ちゃんに色々な事仕込んでやっからよぉ!!ギャハハハ!!」
ゴロツキ2人はそんな喜々とした声を上げる。
「な、何を、言ってるんですかっ!?――本当に、離してッ!!嫌ッ!!」
――やれやれ。
絡むなら、身の安全が確保できるくらいの強さがあった上でやって欲しいものだ。
俺はリーシャを助ける為、ゴロツキ達の後を追った。
◎●◎
「きゃ!!――や、やめて、お願いだから……」
表通りとは違い、人気の全くない路地裏へ連れ込まれたリーシャはゴロツキの一人に羽交締めにされ身動きが取れない状態にあった。
そこにもう一人のよりゴツイ方のゴロツキが下衆ついた笑みを浮かべながらリーシャの全身を舐め回すように見つめ、
「おうおう!そそるねぇ!まぁ、安心しな?痛い事はしねぇ、むしろ、気持ちよくしやっからよ――っ?」
服を剥ぎ取ろうと手を掛けたその瞬間――
「――ぼぐぎゃッ!?」
――ッドン!!!……ガラガラ………
俺はその下衆い横っ面を思いっ切りぶん殴った。
殴られたゴロツキの巨体は軽々と飛んで行き、何かの建物だろうか?その石造りの外壁に凄まじ衝撃音と共に打ち付けられた。
なお、ゴロツキはぴくりとも動かない。
「――な、何が起こった!?」
リーシャを羽交締めにしたもう一人のゴロツキが慌てた様で視線を散らす。
が、行動を起こした当の俺は未だ姿を消したまま。
ここで俺はようやく、
《
「――お、お前は……」
俺の姿を目にしたゴロツキは怯えたように言葉を詰まらせる。
「……なんだよ、そんな目で見んなよ。お前、俺なんかよりずっと強いんだろ?――いいぜ?やろうぜ」
「……あ、いや……」
ゆっくり歩み寄る俺と気絶した仲間のゴロツキを交互に見ながら表情を恐怖に歪めていく。
そしてその恐怖からか、自然とリーシャを押さえていた力が弱まり、
「――勇者君!!」
リーシャは俺の方へと駆け寄り、抱きついてきた。
「……恐かった……。もう、ダメかと思いました……」
そんなリーシャを俺は「もう大丈夫だ」と、頭を撫でてやると、リーシャへ俺の背後へ行くよう促した。
ガタガタと巨体を震わせながら後退るゴロツキへ、歩みを進めながら挑発する。
「――なぁ。やらないのか?来いよ!ほら!?」
「……わ、悪かった……俺達が悪かった……だから、許してくれ……」
「……馬鹿が。謝ったってもう遅ぇんだよ。俺の可愛い弟子を犯そうとしたお前達の罪は重い」
――ドスン!!
「――グェッ!?」
俺は相手が気絶しない程度の力加減でボディブローを見舞った。
「――ガハッ!!ゲホッ、ゲホッ……」
「……んだよ……大した事ないのはテメェらじゃねーか。しかし、アレだな。俺への冒涜だけならまだしも、リーシャに乱暴を働こうとした事はどうしたって看過出来ない。悪いが、死んでもらう他ない……」
地に手をつき、激しく咳をするゴロツキの髪を掴み上げ、俺の目線の高さまで持ち上げる。
「すまない!!悪かった!!全て俺達が悪かった!!だから助けてくれ!!」
泣き喚くゴロツキ。
俺は背中の剣に手を掛ける。
しかしその瞬間、
「――勇者君!殺しちゃ駄目!!」
制止するリーシャの声が響いた。
「――ちっ!命拾いしたな雑魚」
俺は掴み上げたゴロツキの顔を睨みつけるが、
「……ひぃ……」
怯えきったゴロツキは俺を見ようとはせず逃げるように視線を逸らす。
「おい、俺の目を見ろ……」
そう言うと怯えながらも俺の方へと視線を向けてきたゴロツキ。
俺はとっておきの術を発動させる。
幻瞳術――
《
直後、ゴロツキは白目を剥き気を失い、脱力しきった体はダランと、宙を揺れる。
俺は掴んでいたゴロツキの髪から手を離すと、その巨体は力無く地に転んだ。そして、その股間からはジョワ……と、黄みがかった液体が。
失禁したようだ。
「いい夢見ろよ……クソ野郎」
そう捨て台詞を吐いた後は今度は最初にぶっ飛ばしたゴロツキの方へと歩み寄る。
そして頬をバシバシと激しく叩き、無理矢理起こす。
「おい、起きろ。そして、俺の目を見ろ」
「……ひぃ」
《
直後、さっきと同じように白目を剥き気絶する屈強ゴロツキ。そしてその股間からも同じように尿が流れ出る。
「お前も、良い夢見ろよ……」
その言葉を最後に、俺とリーシャはその場から立ち去ったのであった。
―――――――――――――――――――
作者より
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