第7話 あれ?かけがえのない大切な存在……じゃなかったの?

 ここから先はリーシャの話を元に俺の推測を含んだ個人の見解になる。


 人族にとっての真の敵は魔王リーシャではなく、魔族最強ゼローグだった。


 どういった成り行きでリーシャが魔界を追放されるに至ったのかまでは知り得ないが、とにかく人族は本来の敵を見誤った形で300年もの間、魔王リーシャを討つべく魔王城へ勇者を向かわせていた。

 

 その間、ゼローグは魔界を完全に掌握し、その主導のもと魔族は人界へ向けて侵攻を開始。

 こうして長い戦争状態へと移っていく事となった。

 一部推測も入ったが、おおよそこれが真相だろうと思われる。


 ……という俺の推測が正しければ……ここで俺はある事に気付く。

 それは俺が魔王城にて倒した魔物達の事だ。


 彼らは300年もの間、討伐隊や勇者の猛攻からリーシャを守ってきたわけで、あの魔物達はリーシャにとってかけがえのない大切な存在だった、という事にならないだろうか?


 ――それを俺は殺してしまった。

 リーシャはその事について俺を責めたりはしないが、きっと心の底では憎んでいる事だろう。


「……リーシャ」


「何ですか?急に落ち込んだような顔で」


「いや……今更なんだけど、その……悪かったな……」


 何の事を言っているのかさっぱり分からないといったキョトン顔をするリーシャ。


「はい?何がですか?」


「魔王城で俺が倒したお前の手下達の事だよ。あいつらはゼローグって奴に付かずに魔界故郷を捨ててまでお前に付いて来た、言わばお前にとってのかけがえのない仲間だったんじゃないのか?そんな、300年もの間お前の事を身を呈して守ってきたあいつらを俺は殺してしまった。だから、すまなかった……」


 そう謝罪すると、リーシャは吹き出すように笑った。


「――あはははは! 何?あいつらが私にとってかけがえのない仲間ですって!? あははは!面白い冗談ですね!」


「な、何がそんなにおかしんだ!?あいつらはずっとお前の事を守ってきた命の恩人だろ!?」


「まぁ、確かに、これまでの人族による猛攻から私の命を守ってくれたという点においては事実ですね。でも、それは私の為ではなく、あくまでゼローグの指示によるものですので、それを私があいつらに感謝する筋合いはありません」


「それは一体どういう……?」


「まだ分かりませんか?私は魔王城あそこに住んでいたのではなく、監禁されていたんですよ。あの魔物達は私の見張り役です」


「何?そうだったのか!?」


「えぇ。なので、勇者君にはむしろ感謝してるくらいなんです」


「そういう事だったのか。それにしても、ゼローグって奴は一体何故にリーシャの事をそこまで執拗に自分の管理下に置きたいんだ?」


 ゼローグの目的が魔界の掌握、ひいては人界の侵略だとして、魔王リーシャを魔界から追放できた時点でゼローグの勝ち。追放後のリーシャなど脅威になり得ない事から別に野放しにしても特に問題無さそうなのだが……そこはやはりアレか?リーシャが〝真の魔王〟だからか?

 リーシャが持つ魔王の証〝魔王石〟にその理由が隠されているのか?

 そんな予想を立てていたのだが、返ってきた答えは予想だにしない斜め上をいくものだった――


―――――――――――――――――――

作者より


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