第3話 魔王がこんなに美少女だなんて聞いてない!
前世の頃も含めてもここまでの美少女を俺は見た事が無い。
そんな少女の首元に俺は刃を向けたまま、完全にその美貌に見惚れ、固まっていた。
「どうしたんです?殺さないんですか?」
黒髪の少女が言った。
綺麗な声だ。
凛とした清く澄んだような、それでいて甘い声音。
その全てがまるで〝魔王〟とは思えない。
美しくも可愛い、いたいけな美少女だった。
「お前、魔王じゃないだろ?」
こんな娘が〝魔王〟であるわけがない。
だから俺は彼女へそう問うた。しかし、彼女から返って来た答えは、
「いいえ。間違いなく、私が〝魔王〟です」
魔王である事を肯定する言葉だった。
だが、その容姿で言われてもやはり信じられない。
「嘘つけ!!じゃあ、何故〝魔王〟ともあろうお前がこんなにも弱いんだ!?魔族の頂点に立つ者の力とは到底思えなかったんだが?」
そう詰めると少女は悔しそうに表情を歪め、薄っすらと涙を浮かべながらこう答えた。
「魔王が魔族の中での〝最強〟だなんて、誰が決めたんですか?……私は……あなたの言う通り強くはないけれど、確かに〝魔王〟なんです!」
どうやら彼女は自分が弱い事を自覚し、尚且つそれを嘆いているようだ。
〝魔王〟でありながら力を持たない己の不甲斐無さがその涙から見てとれた。
――てかさ、超絶美少女で最弱の魔王って……そんな事ある?
どうしても彼女が〝魔王〟と呼ばれるような存在とは思えない。
理由は無論、その力の無さと、魔王どころかまるで天使のような、あまりにもかけ離れたその容姿だ。
「俺は〝魔王〟を殺しに来た。君みたいな〝女の子〟を殺しに来たわけじゃない」
でもまぁ、かといって、魔王に憧れを抱く美少女――コレはこれで中々に不思議な存在であり、何より何故コレが
「だから! 私が魔王だって言ってるじゃないですか!!そんなに私、魔王に見えませんか!?」
「うん」
思わず即答してしまった。
そして気付けば俺はもう、少女の首元から剣を下ろしていた。
自称〝魔王〟を名乗る少女は俺のその舐めきった対応に相当腹を立てているらしく、『絶対に許さないっ!』ってな感じで奥歯を噛み締めたような表情で俺を睨んでいる。
だが俺の中では既に、この少女が魔王だという線は完全に捨てている。
その為、『だったら魔王は一体どこにいる?』と、少女から視線を外し、思考を巡らせているところだった。
そんな時、とうとう少女が怒りの声を上げた。
「もういいです!!だったら見せてあげます!!私が〝魔王〟である証拠を!!」
少女はそう叫ぶと、羽織っていたローブをバッと脱ぎ捨て、頬を赤く染めながらも次はその中に着ていた服のボタンを外し始めた。
「……お、おい……お前、な、何してんだ?」
「あなたが私を馬鹿にするからです!!だから知らしめてあげると言ってるんですよ!!」
そして、ボタンを全て外し終えた少女は躊躇なくそれを左右へ勢いよく広げた。
「……おい! ちょっと――」
俺の咄嗟の制止も虚しく、少女のいたいけな上半身の全てが俺の眼前で露わとなり、そして俺は固まった。
まるで陶器のような真っ白で美しい肌に、多少小ぶりでも形の良い可愛らしい美乳。
男なら誰しも釘付けとなってしまうであろうその絶景の中に異様な赤い輝き。
正直、美少女の裸よりも一番に目を引いたのは彼女の胸の中心付近、その谷間部分に直接埋め込まれた、まるで宝石のように赤く光る石だった。
「――!!」
「ふふっ、これで信じて貰えましたか?」
いや、そんな変質者ポーズでドヤ顔されてもだな……。
しかし、この少女に一泡吹かされたのは確かで、その赤い石はまさに謎に包まれてきた魔王についての唯一言い伝えのあったその特徴と完全一致するものだった。
胸に埋め込まれたその赤い石――それは〝魔王石〟と呼ばれるもので、魔王を証明するこれ以上ない証だ。
「あぁ。確かにお前は〝魔王〟で間違いないようだ。」
俺は剣を握る手に力を入れ、再び構える。
「やはりお前は……殺さなければならない……!」
―――――――――――――――――――
作者より
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