第15話 キツネとの対話
「昨日ぶりです。力を与えられたとおっしゃっていましたが、それはどんな力なのか、教えてもらいにきました」
会ったらすぐにでも目的を伝える。適当な予想で出会えたことはかなりの幸運。であれば、その幸運を最大限に利用しなければ損でしかない。
俺の言葉を聞いたキツネはユラユラと真っ白な毛並みの尻尾を揺らして、黙ったままである。考え事をしているのであればそれらしい姿勢でもとって欲しいが、そんなこともなく、こちらをじっと見つめたっきりである。
「あの、何かは言ってもらわないとこちらとしても困るというか」
「ふむ、力とはわしの力。わしが使える妖術をお主も使えるようにしたというまで。それを教えるも何もないの」
「いや、その使い方を知りたいんですが。今の所それらしい力を感じないし、力もうが何しようが、何も起こらないんですよ」
「そんなことはないはずなのだがの。確実にお主とわしとの繋がりがあるわけで•••お主、妖気石は食ったか? それを食わんことには何も始まらんぞ」
「妖気石を、食う?」
あの紫がかった、透明に透けている石を食おうだなんて、誰が思う。換金アイテムとして、売り払う物という認識しかない。中のエネルギーを使って機械を動かしているが、それもまた企業レベルの規模でのことであり、個人レベルでは換金よりも有益な使い道などない。それはこの世界のすべての人間が同じだろう。
「当たり前じゃろう。わしに供物をすることで、どんどんと一度に受け渡せる力が強まっていくし、妖気石を食うことで一日に使える妖気の最大値が上がっていく。そうして妖術を人が扱えるようになっているのだ」
「お供えでも妖術が強化されるのですか?」
「当たり前だ。わしに対して供えをすればするほどより強い妖術を使用できるようにする。わしに対して献身的なやつは好きだ。そんな奴には死んでほしくないしの。ま、そういうわけだからさっさと石食って、妖術を使いこなせるようになれ」
と、急かされるように、石を入れている袋を突かれる。これは今すぐにでも食べなければ、解放はされないだろう。
取り出せば妖しく光る石である。これを食うには相当覚悟が必要だろう。間違いなく健康にいいわけがない。
「死んだりしないですよね?」
「わしと力の繋がりがなければ死ぬだろうエネルギーの塊だが、お主はそうではないからの。問題なく、威勢よく飲み込めばいい」
何故そうも不安にさせることを言うのか。その発言のポジティブな所だけを受け取れるほど能天気ではないのに。間違いなく、キツネに噛まれてないやつは確実に、石を食べたら死ぬと言われたのだから。
聞かなければよかったと後悔しながらも、覚悟を決めて一つ飲み込んだ。これで死んだら絶対にキツネを呪い殺してやろうと強く思いながら。
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