第14話 お供え
二階層への階段はすぐに見つかった。地図の通りに歩いているだけであるし、そんなに大きなダンジョンというわけでもないわけだが、常に洞窟の中を一人で歩いていると、変わり映えのない景色に不安になりつつあったのは間違いなかった。だからこそ、こうして変化がある事にホッとしていたか、息を軽く漏らし、道中の敵の内臓を袋たっぷりに詰め込んで降りていく。
もし、内臓を袋パンパンに詰めているところなんて見られたら、通報でもされそうだ。小鬼の肝臓だけならまだしも、他のものまで抜き取っているのだから。悪魔の儀式にでも使うのかと、言い逃れすら出来無さそうである。
ダンジョンモンスターが倒されてから、大体一日後に死体が消滅するらしい。そのおかげでダンジョンに死体が貯まることはなく、常に綺麗な状態ではあるのだが、であれば、今はまだ、内臓なし小鬼の死体が一階層に残ったままということになる。この後にダンジョンに入った人がいたら、恐怖に震えることだろう。それを少し考えると面白くなってくる。イタズラ心でしているわけではないのだがな。
このダンジョンでは、二階層から小鬼が武器を持つようになる。武器といっても棍棒ではあるが。つまりは俺と同じ武器を持つということ。だが、身長の差があるため俺の攻撃の方が先に届く。まだまだ、気を抜いてさえいなければ危険はない。
何度か対峙したが、特別気をつけることはなかった。爪による引っ掻く攻撃よりもリーチが長くなったが、それだけだった。
棍棒は持ち帰れるが、腐りかけているので売り物にならない。換金しようにもほぼゴミ収集みたいなもんで、むしろ引き取ってくれるだけありがたいというものである。一応強くはなっても金銭的な価値としては全く変わらないのであった。
石像を探しつつ小鬼を倒して行くと、ようやく見つけた。目当ての石像。確かに見てみればあのキツネそっくりである。俺の腕に噛みついてきたあの憎たらしい顔は一日で忘れることなどあるわけもなく、たとえ人間以外の生物であろうとわかる。
とりあえず、石像の目の前に解体してきた内臓を全て供える。これでいいのかはわからないが、情報が膵臓が好物くらいしかない俺にはこれしか出来ない。
お供えをしたわけだし、一応お祈りもしておく。目の前に現れて、知っていることを全て話してくれと、説明してくれと、願ってみる。
「およ、二日連続で来るなんて感心感心。よっぽど信心深いやつなのだの。わしも素晴らしい信者を引き当てたかもしれん」
後ろから声が聞こえ、そちらを振り向けば昨日出会った白い毛並みのキツネがそこにはいた。
先程聞こえた言葉から、昨日とは別の個体であると、そういうわけではないと確信づけてくれる。
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