第11話 ダンジョンの不思議

 家に帰って、色々と調べてみる。特にあのキツネのことを。というか、あれしか調べていない。それが一番喫緊で知りたい情報であり、それ以外はどうでもいい。

 が、軽く検索した程度で出てくる情報であれば、わざわざ隠そうとなどとは思わないが。ダンジョンでキツネだと、キツネのモンスターの情報ばかりが出てくるばかり。で、そのモンスターたちと、俺が出会ったキツネは全く似ても似つかない。つまりあれはモンスターの攻撃ではないわけだ。それは一安心できる材料か。

 色々と検索ワードを変えて調べてみると、『ダンジョン 不思議』でとある内容がヒットした。

 そのワードでヒットするものは、基本的にはダンジョンの七不思議的な、都市伝説的なものを楽しむような、そんなお遊び的な掲示板ばかりが目立つばかり。それをまとめたサイトなんかもある。

 だがそれは、ダンジョンの中に存在する石像の話であった。どうやら、ダンジョンの二階層目のどこかに、石像が一体置かれてあるらしい。今の所、発見されたすべてのダンジョンで確認されているということだ。

 それは男の人を模っていたり、女の人であったり、犬や猫であったり、狐や狸であったり、様々だそうだ。

 石像の画像も沢山ある。どのダンジョンにどの石像があったか、どこにあったかまでも事細かに記載されている。

 何か意味があるのではと思って、色々実験してみたが、今の所何も変わったことは起きていないと、ただの飾りなのだろうと、現在は結論づけられていた。

 で、その石像に関する都市伝説がばーっと並べられる。何のために置かれているかわからないからこそ、妄想空想がさらなる想像を生み出して、メチャクチャなものになっていた。

 本来であれば、そんな噂話など、俺の知りたいことの参考になるわけなどない。事実だけを知りたいのだから。俺の身に起きたことを、解き明かしたいのである。

 だがしかし、単なる偶然というわけではあるまい。偶然と片付けて、これを無視するのは勿体無いと思わせるだけのものがあるのだから。偶々、ダンジョンでキツネと出会い、たまたまダンジョンにキツネの石像があるわけではないだろう。

 恐らくは、キツネに噛まれた人間がキツネの石像で何かをすることで、何かが起きるのだろうと思われる。というか、そうでなければ肩透かしである。

 ただ、正解がわかっていないのも事実。ここで手詰まりのような気もしないでもない。あまりにもフワフワとした考察なせいでか、馬鹿馬鹿しくなる。


「•••そういえば、あのキツネって膵臓が好物って言ってたな」


 まさかそんなことがあるだろうか。いやしかし、それぐらいしかヒントがない。やるだけならば損をするわけでもあるまいし。デメリットは人に見られたら人としての尊厳が急激になくなるというぐらいか。明日学校終わりにでも、キツネの石像のあるダンジョンへと向かうとしよう。

 俺はそう決意を固めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る