第8話 ボス戦

 結局、健人は解体出来ないようであった。刃物で死体を切ろうとすると吐き気を催してしまうらしい。俺はその感覚がなかったのでイメージ出来ないが、実際にそうなのだから仕方あるまい。

 というわけで、俺が全て解体することになり、倒した分の石は自分たちで、肝臓は全て俺が貰うことになった。そもそも、肝臓は最初から要らなそうだったので、あっさりと決まった。

 そして、とうとう次の階層へと降りる階段が見つかる。とはいえ、このダンジョンは二階層しかないので、次で終わりではある。

 早速降りてみれば、そこは大きな広場が広がっているだけだった。これが最終階層の基本的な形態。いわゆるボス部屋だけがある階層ということだ。

 ここのボスは小鬼が探索者の数プラス1出てくるだけ。初心者向けの簡単なダンジョンと言われるだけはあって、ボスの難易度も大したことはない。一人一体を相手にしつつ、余った一体をどう警戒していけるかという、基本を考えられる。

 お互いに目を見合わせ、広場の真ん中へと進んでいく。と、反対側にもう一つある、俺たちが入ってきた通路とは違う通路から煙が噴き出てくる。それが止まるころには、小鬼が三体。俺たちがそれを確認した瞬間、相手が雄叫びをあげながら駆けてくる。

 俺たちはお互いに離れるように駆ける。近くで戦うよりも程よい距離をとった方がいいだろうという判断である。

 すると、俺の方に2体寄ってくる。だが、場所を移動したために縦に並んでいるように近づいてくるのであった。ここまで思い通りになってくれるとは、やはり最初のダンジョンというだけはある。

 手前の一体をすぐさま殴り倒す。その時にもう一体の方に倒れるような力の入れ方をして、相手の動きを阻害する。すれば一瞬、避けるために固まる。それを狙って殴りつけられれば、あっという間に二体を片付けられる。

 あまりにも上手くいった。こう簡単にいくのは、最初だからに違いない。別に俺が特別な才能があるわけではない。そこで調子に乗れば死ぬとでも思わなくては。俺は天才ではない。凡人なのだと言い聞かせ続ける。

 向こうももう終わっている。さっさと解体を終わらせる。メインはこの後に待っている。

 先ほどまでは無かった宝箱と形容すべき木箱が、広場の真ん中に出現しているのである。


「さてさて、何が入っているかな」

「今まだ出てきたものの目録とか見たが、大したものはないぞ」

「わかってるけど、初めて開ける宝箱なんだから、興奮ぐらいさせてくれよ。で、俺が開けていいんだよな」

「まあな。言い出しっぺが健人だし」


 それに、最初の簡単なダンジョンですら宝箱に興奮している奴から、開ける役を取り上げられるだろうか。大人しく譲ってやるべきだろう。それに俺の方が素材の分で、儲かっているわけだし。中身の利益は折半とはいえ、開ける役まで奪うほど悪魔ではない。

 興奮からの震えを抑えつつ、健人は宝箱を開けた。

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