3回目 秘密

「これが街...」

俺はさっきまで遠くに見えていた街を目の前に予想以上に大きく、驚いていた。


―――――――――――――――――――――――


早速街に入ろうと入り口を探す。

(大体こんな場面だと入り口に検問があるんだよな...)

そんなことを思いながら入り口を見つけるが何事もなく入り口は開門しており、検査とかもないようだ。

少しほっとしながら街に入ろうとしたとき、

「ちょっとまってくれ!!」

そんな声に少し顔を上げるとそこには街の傭兵らしき格好をした人たちがこっちへ走ってきた。

「すまないが今日からこの街は検問をすることになった」

「......は!?」


―――――――――――――――――――――――


門を潜り抜ける途中だったものの、現地の鎧を着た人に逆らえるはずもなく少し戻っていつの間にか用意されていた机で軽くアンケートを書いてこの街にようやくは入れた。

街に入るとそこそこ賑わっていた。現地の人が話していたことを聞くと今日は能力鑑定士が1年に1度の祭りを開いているらしい。

行くところもなかった俺は早速祭りの会場へと向かった。


―――――――――――――――――――――――


会場に着くとちょうどなんとも魔術師らしい恰好をした人が台の上でスピーチをしていたが内容は全くわからない。

まるで聞いてますよ風にぼーっと立っていると急に隣の人に肩を叩かれた。

「君...?......まさかぼーっとしてたのかい?」

苦笑いをしながら周りを見渡した。すると周りの人と魔術師の人がみんなこちらを見ていた。

「もう1回言ってあげようw......選ばれたのは君だよ、おめでとう」

魔術師の男がそうやって俺に微笑んだ。


―――――――――――――――――――――――


スピーチが終わると彼は俺の方に向かってきた。

「さあ、場所を変えようか」

そう言って彼についていくようにしてある建物の個室の中に入った。

「聞いてなかったってことは僕のことを知らないんだろう?......僕は国直属の能力鑑定士をしている。君は僕が鑑定するかどうかの抽選に当たったってことだよ」

「はあ、......」

俺はされるがままに彼の言う通りに鑑定してもらった。


―――――――――――――――――――――――


「鑑定が終わりましたよ。この紙に書いておきました......この紙はここを出てから見てくださいね」

そう言われてお礼を言ってここを離れた俺は早速紙を開いて詳細を確認した。


======================


名:ヤマモト

能力

  :危機一髪・悪(常時発動型スキル。天使を不機嫌にさせた罰でヒヤリハットが多発し、??%の確率で致命傷を負う。ただ運が悪いだけ)


  :無敵・聖(常時発動型スキル。あなたを不憫に思った神が追加で付与してくれたもの。ある程度の傷は回復し、魔王の攻撃以外で死ななくなり傷による痛みも緩和される)


  :鑑定士の気遣い(発動済み。スキル内容を見て鑑定士が気遣ってくれたもの。付与されたとき、すでに取得済みの能力を良い方向に強化する)


======================


気遣い、...かぁ......付近の椅子に座りながら鑑定士からもらった紙を見つめた。

痛みの緩和はありがたい。...それにしてもただ運が悪いだけて......

休憩しながら周りの声に少し耳を傾けてみた。


―――――――――――――――――――――――


ある親子の会話だろうか、

「ねえお母さん、私...いい、能力じゃなかった......」

そんな子供の発言にその子のお母さんらしき人がなだめるように言った。

「じゃあ能力の秘密教えるね...いい?......どんな能力もそれぞれ使い方があって悪い能力なんてないの。だから帰ったらお母さんと一緒にどんな風に使うか考えよっか」


―――――――――――――――――――――――


この世界では普通の会話なのだろうか。

そのスキルの使い方があって悪い能力はない...か......

...俺の中で考えがついた......鑑定士のおかげで使い方によっては無双できそうだ。

試しに使ってみよう、俺は頭の中で念じた。

(硬貨が頭に降ってきたら嫌だなぁ...痛いし、)

能力詳細の??%が当たるまで何度も念じた。

数十秒も経ってないだろう。頭にこつんと何かが当たった。急いで確認するとそれは間違いなくこの世界の硬貨だった。

それを確認すると周りの目も気にせず、ずっと念じ始めた。

(魔王城に行きたくないなぁ......今行っても必ず負けるし、)

この世界に来た時のようにふっと視界が切り替わり、まがまがしい城が目の前に現れた。

これが魔王城かミスったな、とか思いながら本当に思っていることとは逆のことを考えながら魔王を倒した。


―――――――――――――――――――――――


これ補正ついてんのかな...とか考えながらまた視界が切り替わり、天使と神の元へ戻ってきた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ライと天使たちのことについて話していると人間が戻ってきた。想定よりずいぶん早かったな......

「想定よりずいぶん早いですね、この速さは天使たちを追い抜いてますよ」

そう言うと彼はどうしたらいいかわからないとこちらを見た。

「無事に帰ってこれて記録も更新できたことですし褒美を与えましょうか、...何か願いはありますか?」

そう言うと彼は考え込んでいる。


―――――――――――――――――――――――


人間でいうところの約3時間後、彼は答えを出したようだ。

「神様になりたいです」

私はこの願いを受理し、神様見習いとして彼を天使たちと一緒に過ごさせた。


楽しみがまた増え、ついでに現在直面している異世界転生問題の解決が彼に丸投げできそうで思わず表情が顔に出てしまった神様なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

3回出来た【カクコン9】 羽鳥 雲 @kumo28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ