小説を書く
今村広樹
本編
小説を書き始めてみる事にした。
こうして書き始めるのに何のルールもない。思いついたテーマ、使えそうな言葉、伏木蔵からの借り物で文字を埋める。
急に爆発的に書かれることもある。書く必要のないところまで地の果てまで埋めようとする事もある。どういう意味だろうと自分自身でも思うこともある。でもとにかく続ける。とにかく書く。そして何となく区切りのつくところを見つけては投げ出す。書くときもあるし、そのまま本棚に放り込むこともあるし、友の一人に渡してその持ち主の小説に使ってもらう時もある。
書き上げたものはそのままもう名前も登場人物も変えた別作品につくりかえることができる。そこまで行ってしまうと自分の作品のように思えていたものが実は出鱈目だったのだとわかって恥ずかしくなる。案外悪い物ではないのだ。
今私は冒頭を何一つ覚えていない。物語がどこから始まってどこで終わっているのかもわからない。もう終わったのかどうかもわからないし、もはや始めたくもないし、なあなあで終わるつもりはない。果たして続きはあるのか否かもはっきりしない。だがこれが地道に作り続けているわたしの小説であることだけは間違いない。
ふと思い出した。
昔、彼女が私がモジモジしているのを見かねて、手を取って
「ここから始めよう。一歩が大事だよ」
と、言っていたことを。
ただ、それだけの話だ。
小説を書く 今村広樹 @yono
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