推しがどんどん『卒業』していく

常世田健人

推しがどんどん『卒業』していく

※本エッセイを一読いただく際のBGMは『月と星が踊るMidnight』『孤独な瞬間』『居心地悪く、大人になった』『After you!』のどれかをオススメします。


 日向坂46 齊藤京子 というメンバーが、2023年1月11日に卒業を発表した。

 その瞬間、私は――「またか」――と思った。

 日向坂46の歴史は長く、改名前はけやき坂46(ひらがなけやき)というアイドルグループで、齊藤京子はその一期生だった。

 正直、けやき坂46結成当初からけやき坂46を好きだった訳ではない。

 最初は『サイレントマジョリティー』で鮮烈なデビューを飾った欅坂46が大好きで、その派生グループという位置付けで結成されたけやき坂46に対して、特に強い感情は抱いていなかった。

 しかし、オードリーがMCを勤めることになった『ひらがな推し』という番組でけやき坂46がフューチャーされ、回を重ねるごとに――面白いメンバーが多く、バラエティに全力で取り組んでいる姿が、徐々に私に熱を帯させていった。

 そうして人気を培っていったけやき坂46は、『日向坂46』に改名し、欅坂46の派生グループではなく――乃木坂46から連なる坂道グループの三グループ目として存在感を出していく。

 ――その直後、二名のメンバーが卒業した。

 その内の一人――井口眞緒というメンバーが、けやき坂46時代からの推しだった。

 ダンスも歌も正直なところ上手くはないものの、何事にも全力投球かつ、何をしでかすかわからない意外性を推せた。

 卒業した。

 ……とはいえど、魅力的なメンバーはまだまだいる。

 例えば宮田愛萌というメンバー。文学が好きでいて、ぶりっ子をさせたら誰も太刀打ちが出来ないという唯一無二のキャラが推せた。

 例えば影山優佳というメンバー。才色兼備で、サッカーが大好き。W杯の際には専門家も目を見張るほどのサッカー分析を魅せて、日向坂46の人気を牽引したと言っても過言ではない力強さが推せた。

 ――二名とも、卒業した。

 もちろん、推し以外にも素晴らしいメンバーはたくさんいる。それが日向坂46である。層が厚いという表現がこれほどまでに似合うグループはないだろう。表題曲のセンターを務めたメンバーも多く、誰もがどんな現場でも爪痕を残せるポテンシャルを兼ね備えている。

 そんな中でも、目を見張る存在が――推しである。

 私の観点での推しであり、別の人物の観点を踏まえたら、別の推しが現れる。

 そうすることによって全メンバーが誰かの推しであり続けてくれる。

 これほどまでに素晴らしい状態はない。

 ――無いはずなのに。

 ――私の推しは、どんどん卒業する。

 日向坂46は、現在四期生までいる。四期生も魅力的なメンバーが多い。バラエティーに全振りしているメンバーも居れば、私の地元出身で発言が全て天然なメンバーも居る。

 それでも、悲しいかな――推しとまでは言い切れていない。

 井口眞緒も、宮田愛菜も、影山優佳も、齊藤京子も――何がとは言い切れないものの――推しと言い切れる何かがあった。

 推しだから、推したい。

 当たり前の事象すぎる。

 それなのに、卒業してしまう。

 ……ここまで連続して卒業しまうのは、最早私が推しているのが原因なのではとまで思い始めている。

 勿論そんなことは無いのはわかっている。それでもそう思ってしまう性質だから仕方がない。

 例えば、影山優佳が全試合寝ずに見ていたW杯。

 私は、自分が見ているともし負けた時に取り返しがつかないので、全試合結果を新聞で見た。

 推しが全力投球しているコンテンツでさえこの行動を選択している。

 矮小で、劣悪で、誰からも見向きもされていない自分なんかが世界の杯に影響しているなど思うのは――傲慢で、大罪で、思い上がりでしかないのは分かりきっている。

 だけど、耐えきれない。

 自分が関わることによって何かが変わってしまうことに、やるせなさを感じる。

 ――そんな中で、結果、推していたメンバー全員が卒業することになった。

 何故だ。

 何故なんだ。

 思い返してみれば、他のグループでもそうだった。

 乃木坂46は橋本奈々美というメンバーが大好きで、大好きになった時にはすでに卒業を発表していた。

 欅坂46(現在は櫻坂46に改名)では、今泉という天真爛漫なメンバーが大好きで、本当に色々あって卒業してしまった。色々ありすぎた彼女が幸せでいてくれることを強く願っている。

 どのグループも、推しが卒業してしまったため、箱推し(グループ全体を推すことの総称)に移った。

 だが、日向坂46でさえ推しの卒業が止まらないとなってしまうと、箱推しなんて悠長なことは言ってられないのではと思う。 

 俺は、もう、誰も推さない方が良いのではないのかとさえ、思ってしまった。

 ――私は、アーティストのライブに多々いく。

 フレデリック、BUMP OF CHICKEN、the pillows、sumikaなどなど……好きなアーティストは多く、ライブに行っている。

 その中でも、アイドルという趣味は異端ではありながらも続けていた。

 何故なら、推しがそこにいるから。

 ――推しが、そこに、いない、場合は?

 ――俺は、何を、すれば、良い?

 わからない。

 わかる筈がない。

 でも、だからこそ――一つだけ言えることがある。

 齊藤京子は、まだ日向坂46に所属している。

 卒業コンサートは遠方かつ平日のため、現場参戦は難しい。

 それでも、おそらく、オンライン配信は行なってくれるはず。

 というか絶対に配信して欲しい。

 カメラ越しで良いから、推しの姿を最後まで見続けて応援したい。

 推しを最後まで推せることが、ファンの幸せだから――



 ――というわけで、本エッセイは終わりです。

 エッセイというよりかは心境の吐露に近いですが、少しでも楽しんでいただけましたら何よりです。

 いや本当に、何で卒業しまくっちゃうんですかね!

 井口も宮田も影もきょんこも、全員好きで、推していたんですよ!

 友人からは「お前まじで俺の推しを好きになるなよ」とか言われる始末だし! せめて慰めてくれよ!

 特にきょんこは、初表題曲センター宇宙初お披露目ライブに参戦できていたので、思い出補正が尋常じゃないアイドルです。センター発表の時、ライブ会場で思わず立ち上がって泣きましたからね……号泣ですよ……。うわああああああああああああああああああああああああああ何故卒業するんだと思いつつ、全力で引き続き応援させていただきます。

 声良し顔良し歌良し演技良し――全てを兼ね備えた最強アイドル齊藤京子の卒業コンサートは、2024年4月5日(金)です。

 どうせオンライン配信、あります。

 本エッセイを読了いただいた皆様は、私と一緒に、2024年4月5日(金)に全裸待機しましょう。

 

 推しは、推せる推せる時に推せなんていうけれど!

 いくら推しても、推し切れないんですよこちとら!

 

 ※【再掲】本エッセイを一読いただく際のBGMは『月と星が踊るMidnight』『孤独な瞬間』『居心地悪く、大人になった』『After you!』のどれかをオススメしました。


 上記の楽曲、絶対に絶対に聴いてください、よろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しがどんどん『卒業』していく 常世田健人 @urikado

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ