最終話 輪廻始初
私は夏になると実家の近くにあるお墓参りに家族で行っている。そしていつも子供にこの話をする。今年は夫と出会った話もした。「パパが自転車貸してくれたからおじさんは生きてるんだよ」運命じゃんと言う息子を見て私は頭を撫でた。空はあの日のように碧天の空と白練り色の入道雲が夏を表していた。
「二人とも先行ってて」私は夫と息子に告げ、しゃがみながら言った。「お父さん。お母さん。私、ずっと勘違いしてた。弟を助けてゴールじゃなくて、助けてからがスタートだったんだ」ふと風が吹く。私は立ち上がり、彼のお墓にも水をかける。「私を助けてくれてありがとう。今から私の物語が始まるから見てて」そう言い後にした。
奥にいる二人は、はしゃいでいた。「じゃああそこまで競争しよー」と息子が言う。「ママ、スタートって言って―」私はニコッと笑って声高らかに言った。「よーいスタート」こだまする私の声に包まれた墓石たちは心なしか微笑んでいた。
Crouching 四季式部 @sikisikibu
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