第10話 二十分録

急にお腹が痛くなる。急いでトイレに行ったが、弟を見失った。時刻は11時40分である。やばいと私は弟にどこにいるか電話を掛けた。するとすぐに出た。「どうしたん」という弟にどこにいるかと尋ねた。「あぁ大屋根通りの商店街」しまったと思った。ここから走っても20分以上かかるだろう。また私は愛する人を殺めてしまうのかと思ったが考えるよりも先に頭が動いていた。「財布渡すので自転車貸してくださいあとで絶対返します」そういい男の人から自転車を奪って爆走する。町の大時計は11時55分を刻んでいる。ここにきて信号待ちだ。深呼吸をして青になった刹那私は音も置いて弟の元へ漕いでいた。

 「キャー」と悲鳴が上がる。本当に通り魔が出たんだ。通り魔は弟を見るとにやりと笑い一目散に走り始めた。弟は必至で車いすの車輪を押すが、やはり追いつかれるのも時間の問題だろう。私は自転車を乗り捨て通り魔の元に駆け出した。「死ねぇぇぇええ」と通り魔がナイフを弟のお腹に振りかざした。

 「おらぁ」と飛び蹴りを食らわせる。「こう見えて私、護身術としていろいろ勉強してきたんだよぉ」どすのきいた口調で通り魔をあざ笑った。「あぁ」弟と通り魔は同じ顔で驚いていた。

通り魔は近くにいた大人たちに拘束され、警察によって連れていかれた。私は「弟に会おうとしたら通り魔が居たので退治しただけです」と言い、事なきを得た。

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