第2話 降臨2
素足のままタタッと軽やかに僕の前を横切る少女。
冷蔵庫の前で立ち止まると、中から牛乳
ど、どうやら、僕の存在には気づいていないようだ……。
あれれ?
牛乳
目の前で巻き起こる
どうしよう……声、かける? ……でも、何て声かければいいの?
うおー、全く思い浮かばない。てか、何を言っても不正解な気がする。
どうすりゃいいんだー!!
たぁーっ、落ち着け、落ち着くんだ。
……にしても
……中学生くらいだよな……?
あまりにも無防備なその……その……後ろ姿に、視線は
雪を思い起こさせるような透き通った白い肌。
……だよね。一人暮らし? なら、バスタオルなんて巻かないよね……もちろん、下着も何も身に
腰に手を当てて、真っ裸のまま仁王立ちで牛乳を飲む後ろ姿は、
「ぎゅるるる~」
げ、なんてこった。こんな非現実的な状況において、僕の腹の虫は現実的に空腹を
少女がゆっくりとこちらを振り向く。
まだ
目が合った。
「……ハ、ハハ……腹減ってたんだ……そういや、今日は
コンビニの袋を、
少女は、状況を全く理解していないのか、ぽかんと首を
完全に真正面から向かい合った。
ダメだ、目をそらしちゃダメだ。
その
生存本能とは違う別の本能に、僕は負けた。
少女は、見る見る顔を赤く
プレイボールの
まるで吸い寄せられるように、僕の
……はずなのに、僕の目にはスローモーションのように
あー、これ、当たったら痛いぞ……絶対に
縦回転と横回転。複雑な回転を見せながら近づいてくる牛乳瓶。
残り数センチ。
反射的に目をつぶるその直前、『
おでこに衝撃が走る。同時に、グワ〜ンと脳内が揺さぶられる。見事命中!
「ストライーク!」いや、「デッドボール?」どっち? どっちでもイイか……。
あぁ、意識が遠のく……もしかしたら、このまま目覚めないかもしれない。ひょっとして、異世界転生しちゃうかも……。
目の前の少女は、僕のことを
いや、本当に普通に鍵を開けて入っただけなんですよ。ここ、僕の部屋だと思うんです? 信じてください、お願いします。
証人だって、ちゃんといます。……アナタですよ? そこのアナタ! とぼけないでください。……こんな小説、読んでる場合じゃないですよ?
んなこと言っても、もう遅い……意識が
二十年、短い人生でした……って大げさですかね?
でも、
そう……そうだ。誤解は解けないまでも、あの子に、これだけは伝えなくちゃ……異世界転生しちゃう前に、コレだけは伝えておかなくちゃ。
彼女のこれからの人生が、豊かであるために。
僕ができるせめてもの
「そ、そこのキミ……うぐっ」
「……な、なんですか?」
「高め、高めだよ……はぁ、くぅっ」
ダメだ、気絶しそうだ……こらえろ。
「え? ……た、高め?」
「そう、高めだ……低脂肪じゃダメなんだ……キミは、ぐはっ」
もう少しだ、がんばるんだ。
「低脂肪……?」
「
僕はその場に倒れ込んだ。
「なっ……バカーーーーーッ!!」
薄れ行く意識の中、少女の悲痛な叫び声が、部屋中にこだましていた。
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