第35話 反響


♢♢♢ 八十九日目 王都脱出残り三日


今日も朝ご飯を一緒にと、ビッグがやって来た。いつもと違い眉間に皺がよっている。

「どうしたビッグ、朝からシケタ面して。糞詰まりか?」 揶揄うシャム

「ちげーよ、昨日のデモンストレーションで撒いた餌に寄って来てんだ。宵の口から騒がしいぜ。 寝不足でお肌が荒れちゃうぜ」 ヤレヤレ顔のビッグ

「早いな。昨日は五人だったな。今はどうなんだ?」 シャム

「四組だな。気配が違うから昨日の者と違うし人を増やして結界を破る気だろうな」 ビッグ

「ビッグの結界もやっぱりアレなの? ほらシャムの様な強くなるかんじ?」エル

「おぅ、知ってんのか!そうだぜ!そうそう破られねぇよ!」自慢げなビッグ

「鑑定持ちかな、一人 特殊技能持ちが居たね。何処だろね。あいつ引き込めないかな?」 ニヤけるシャム

「なんか違和感がすごいです。本当に喋るんですね」 驚いてるジョン

「可愛いのにお話方がおじさん臭いね」 素直なケリー

「なんだケリー、可愛い方がお好みか?」シャム

「だって見た目とのギャップがスンゴイ」めっちゃ素直なケリー

「ハッハッまぁ、そんなものよ。 ご飯にしましょう」 頼れるベティ

エル達一行にビッグにジョンにケリーが加わり七人で食卓を囲み後ろには二頭の小型馬が、グレッグ?グレッグは食卓の端に宿木を置いてもらい、そこに陣取ってベティに餌をねだっている。


食事後のお茶時間に珍しくキリングがやって来た。

「やあ、おはよう諸君。初顔もある様だ。私はキリング・ライムグリンだ、よろしくな。

それでだ、昨日は何をやらかしたんだ? 俺は詳細は知らないが、昨日の夕刻の帰り際に王家の近衛隊の友人から噂を聴いた。本当か?!」

「昨日の件でしたら、エインサーク様に監督していただきました」 しれっとエインサークを絡めたベティ

「何、お祖父様も噛んでいるのか? 何も聴いてないぞ」 キリング

「まだお会いになっていないからではありませんか? あと数名居られましたが、お名前を存じませんので私どもは分かりません」 やっぱりしれっとベティ

「先に教えておいてくれ、頼む」 片目を瞑り両手を合わせてお願いキリング。イケメンはお願い姿も様になる。

「大した事ではありませんよ。薬草の検証実験です。 お噂でお聴きになりませんか?アネストの王宮の薬草の件。 これ以上は有料でございます」 ニッコリベティ

「まさか、 あの  君達か 。後はお祖父様に聞けと言う事だな、わかった恩にきる」 驚き戸惑うキリング

「ここに居さして頂いていますもの、侯爵家の為になるのなら」 にこやかベティ

「わかっているよ。ありがとう」 冷や汗キリングはそそくさと去って行く。


「さて、今日の予定ですが、このまま今回の作業で使う言葉と計算を午前は教えます、午後は一回製品を組み立てましょう。想像がつきやすいでしょ」 ベティ


ベティが講師として教えて、エルが補足して教える。途中にロジーとエリスとも合流して簡単なマナーも追加される。

ケリーは計算が好きなのか、すぐに理解しだしそれをエルが褒める、褒めるとケリーは喜び、頑張る。良い循環が出来て三桁の足し算、引き算は理解して四桁以上も考え方は一緒だよと教えると、「勉強って楽しいんだね」って。ケリーはもう大丈夫。

問題はジョンだ。足の指まで使ってる。無理があるぞそれは。数字の順番をちゃんと覚えないと計算まで届かない‥木材の長さはわかっているのに。


昼からはジョンの得意分野だ。体を動かす、組み立てだ。完成品は見ているので簡単な指示で組み付けていく。サンプルなので木目のまま、生地も安いケリーの練習用だ。しかし出来上がると機能的には問題なさそうだ。二人は完成した事に喜んでいた。

ケリーに、生地を長い生地に替えるともっと伸びるよ、ただ巻く生地が多いと太くなってロールの木箱に収まらないんだ。だから生地の長さと厚みが大事なんだと教えておく。

あと、仕上げもしないといけない事。一回バラして組み直すと修理の仕方もわかるからと、ジョンに分解させる。バラバラに分解された部品をジョンとケリーで組み立てる。ケリーはまだ小さいので力が無く背も低いので馬車に組み付ける手が足りない事に気付いた。

もう一人雇うかとベティと話しているとジョンが弟が居るが呼んでも良いかと聞かれ、話しを聴くと住み込みで働いているとの事で、今の仕事場がちゃんと辞めれるのならと。

今、時間をもらえるなら呼びに行ってくると言うので、ビッグを連れて迎えに行かした。


待っている間にベティとケリーと話していると肝心な事を忘れていた。販売価格を知らない事。特許の使用料はもらっているが販売価格の割合でもらっていて売値を知らなかった。

これは拙いと言うことで急遽商業組合に出向き組合長に会う。一時間は待たないといけないがしょうがないと諦め、三人と姿を消したステルスシャムと第二応接室で待つ。ケリーはソワソワしているので「お菓子でも食べて待ってなさい」とお菓子を与えた。ケリーが震え出し、「毒か!」って思ったら「おいしー」って叫んでズッコケた。

初めてのお菓子が高級菓子。さぞかしサイコーに美味しいでしょ。

ケリーに「頑張ればこのお菓子も自分で買える様になるわよ」って言うベティに「本当ーですか?!わたしやりますっ」って言うケリーは力強かった。

ケリーがお菓子を平らげて暫し、組合長がやって来た。

「お待たせしてすみません。お聴きしているのはこれ迄の販売価格でよかったですね。何か間違いでもありましたか?」 ちょっと冷や汗の組合長

「あっ、いえそう言う意味ではないんです。私達は販売価格を知らなくて幾らぐらいかを聴きたかったんですよ。この子とお兄さんが主体でサンプルを作っているんですが価格を知らない事に気づきまして、アハハハハ(アハハハハ)」 乾いた笑いのベティとエル

「そうでしたか、びっくりしましたよ。不手際が有ったのかと。  よかった燃やされずに」 ホッとする組合長 最後の言葉はベティとエルには聴こえていない模様。

「リストに出してあります。他国のリストになるので詳細まではわかりません、金額だけになります。」 安心顔の組合長

「ありがとうございます。助かります。 しかし良い値段で売っていますね。仕上げが良いのかな?どう思いますベティさん?」 エル

「こんなものよ。貴族相手ならもう少し高くても良いくらいよ。 そうね、仕上げを良くして価格を上げましょう!」 平然とするベティ

「まだ上げるんですか!」 驚くエル

「ケリーもお菓子買いたいよね?」ベティはケリーを味方にする作戦にでた。

「お菓子が買えるなら上げるべきです!」お菓子に釣られるケリー、ベティはニヤける。

「そう言うわけで、仕上げ屋さんは紹介して下さいね!」 ニッコリベティ

「YES ma'am」 知らないはずの組合長までもが…



宿舎に戻るとジョンとビッグが帰ってきていて、ジョンに似た顔が増えていた。


「何処に行ってたんだよ。連れて来たぜ」ビッグが喋ればジョン似の弟が驚く

「犬が喋んの?!」 弟

「バズ兄ちゃん、ビッグ様に失礼だよ。ジョン兄ちゃんの足を治してくれた人達なんだよ!」 ぷんぷんケリーは可愛い

「あっ、そうだった。兄が大変お世話になりありがとうございました!」 九十度に腰を折り礼をする弟バズ

「お茶をしながら自己紹介しましょう。お菓子も買ってきたわ」 ベティ

「また食べられるの?」 お目々キラキラケリー

「一人ひとつよ!」 笑顔のベティ

「ハイっ、用意します!」 ダッシュでお茶の用意をするケリー。微笑ましくみるベティとエル。


お茶の時間で自己紹介とジョンの足の事を説明してバズが何度もお礼を言う。この邸で間借りして居る事と仕事の内容で手がたりなかった事、バズか手伝いを受けてくれるかどうか?を問うと。「兄の足を治してくれて又、三人一緒に暮らせるなら手伝わせてください」とジョンよりもしっかり者だ。

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