第32話 フレンチ気分
♢♢♢ 八十六日目 王都脱出残り六日
今日は朝も早よからスラム街に来た。
馬車は離れた所にシャムを乗せて置いてある。現場の勧誘部隊はベティ隊長の元、エル隊員、ビッグ隊員、グレッグ翼長の四名。 ターゲットになる対象とはまだ接触出来ず。
「そろそろ、朝の仕事に就いてる頃ですね」 エル隊員
「同じ轍を踏む事なく時間を早めたけど、無駄かな?」 ベティ
「浅めに侵入しますか?」 エル
「さて、残り者はどうだろね、使える奴ならいいがね」 嬉しそうなビッグ
『ピィピィ』 グレッグがベティにツンツンしてる
「グレッグ火はダメだよ、私達が縄張りに入っているから周りが警戒しているんだよ」 優しいベティ
『ピッ』 グレッグの了解の様だ
「そう思うならサッサと帰った方が良いよお嬢さん!」 道端に腰掛けている爺さんが話しかけてきた
「少し人手を探していてこっちの方が良いよと聞いたので」 ベティが答える
「誰がそんな事を教えるんだ、変わり者だな」 爺さん
「ここには孤児院が無いそうで」 ベティ
「孤児がお好みかい?」 いやらしく笑う爺さん
「そんな用事じゃ無い。仕事を教えるんだ」 エル
「坊主がか!わっハッハッハッ」 笑う爺さん
「だろ、普通の職人じゃ、 女、子供に教えを乞うのはしねーんだよ」 不機嫌エル
「それで孤児を使い潰すか」 爺さん
「子供に教えて任すんだよ。オレ達はもうこの街を出るからな、それまでに教えてーんだよ。爺さんの相手なんかしてらんねぇ。行こう」 投げやりエル
「嘘では無さそうじゃ。 こっちぃ来い」 爺さん
「お爺さん?何者…」 怪しむベティ
「お嬢さんは気付くかの、着いたら話そう」 爺さん
爺さんの後をついて古屋に入ると部屋の真ん中に下へと降りる石造りの古びた螺旋階段があった。後について降りて行くと階段の下は川が流れている。
「ほぇー、スラムの横に川なんて流れてたんすねー。城門の前の川よりめっちゃ綺麗ですよピンキー達連れてきたら喜びますよ」 テンション高めのエル
「待ちなさい、これは何、幻影? 音、匂い、視覚、」 エルを自分の後ろに隠しチェックするベティ
「お嬢さん、慌てなさんな。
…世の中、嘘と誠が入り交じっておる、
交わる思考、交わる時間、交わる空間、交わる次元、 そして交わる者達。
汝の常識を疑え、
ほっほっほっ待っておるぞ。
ラビリンスの扉は汝の傍に有ろうぞ!」 爺さん
「エル君ゆっくり階段迄戻るよ。手を離さないで。ゆっくり」 汗だくのベティ
「ベティさん大丈夫? ビッグ!グレッグ! いない?逸れた?」 何も分からず呑気だったエルも慌てだす
螺旋階段を上がる上がる降りる時より登っている、上に上に螺旋階段を登り切った時にグレッグの声が、ビッグの声が聞こえた。 小屋の部屋には石造りの螺旋階段は見当たらない…
外は夕刻の太陽が赤く染まっていた。
「馬車迄戻ろう」 疲れ切っているベティ
馬車迄戻るとシャムとピンキーが『何があったの』と聞くが取り敢えず帰ろう。と帰路につく。
宿舎に戻るとベティさんが熱を出して倒れ込んだ、キャッパオとグレッグが心配そうにベッドの傍にいる。
シャムとビッグとピンキーで今日の出来事について話す。
ブロロ『‥‥ラビリンス。そう言ったの?』
「最後にそう聞こえた」 エル
「スラムに少し入った時にグレッグがベティに警告したんだそのあと二人の気配が消えた、次に気配を感じたのが夕刻のあの時だ。その間、約7時間何があった?」 ビッグ
「グレッグがベティさんの頭をツンツンして、ベティさんがグレッグに諭してたんだ。そしたら横に爺さんが座っていて、ここはお前達が来るところでは無い、的な事を言ってきて、人手を探しに来ただけだと答えたら、古屋に来いって言うから着いて行くと、古屋の中に螺旋階段があって降りていったんだよ、そしたら降りた先に綺麗な川が流れていてオレが前に行こうとするとベティさんが構えてここはオカシイと言い出したんだ。冷静になると確かにおかしいと思う。そして螺旋階段迄戻るとすぐに上に上がったよ、降りた時の何倍も登ってたよ、やっと着いたら夕刻さ。そして、螺旋階段も無くなってて、 もう信じられないよ」 興奮気味のエル
「エルは耐性がある、ベティは耐性がない いや弱い、 か」 シャム
「シャム、俺たちが感知出来ないのには何が考えられる?」 ビッグ
「グレッグも見失っていたんだろ。しかも、ベティの肩に乗っていて、気配が消える。 ビッグ、俺が結界の中の馬車に居るのは感知出来てるだろ。これが知らない気配を感知出来るかだな」 シャム
「ああ。そうだな俺はシャムを意識せずに感知出来るのはシャムを知っているからだな、しかし知らない相手も感知は出来るぜ。敵か味方か分からないだけで何かが居るのはわかる」 ビッグ
「そう だよな。知らない何かは俺も感知してるわ」 悩めるシャム
「ちょっとベティさん見てくるわ。 ビッグ、氷出してよベティさんのタオル冷やすから桶に入れて」 エル
ブロロ『キャッパオも心配してるからしっかり看病してね』
「ベティさん入りますよ」エルは桶に入れた氷を持って部屋に入るとベティの枕元に行き額のタオルを氷水で濯ぎ絞りまた額に戻すを繰り返す。
少しでも早く良くなる様に。ベティの左手を両手で包み込む様に柔らかく握っていた。
日の出過ぎに目が醒めると、額には体温で温くなったタオルが掛けられていた、横には自分の手を握るエル君が居る。
「ありがとう」cho!!唇に軽く触れるフレンチキス。私だけの秘密。
ブロロ『やっるー!!』 ピンキー
ブロロ!! キャッパオ
-−−–
ベティはピンキーの言葉もキャッパオの言葉もわからない。 だがこの一瞬分かった気がした。
「(揶揄われている)」
驢馬娘にもなる藍子はわかる。キャッパオまでも(揶揄われている)のにショックと恥ずかしさで真っ赤になっているであろう顔を、姦しい騒ぎで起きたエルにみられ、耳まで紅くなり、エルに一日ベッドでの安静の指示が下された。
ピンキー&キャッパオはニヤケ顔がおさまらない。
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