第30話 再会

♢♢♢ 七十八日目 


エル達一行プラスわんこのビッグとはすっかり一緒に行動している。食べなくても良い筈の食事を一緒に食べてる。


今日もココさんの生地問屋で作業開始だ。 

ベティさんもココさんとの商談が落ち着いてこちらに手伝いに来た。ベティ様サイコー。

平らになった板を各サイズの大きさに、各部品毎に、裁断する。 

共通部品で部品の点数を減らして汎用性を持たせ、修理がし易い様に。

二人で作業すると早く片付く。 


金物屋さんでハトメを聞くもまだ無く、穴あけポンチと金属片、鉄板を買ってきた。

ココさんに火を焚いても良い場所を聞き金属片を溶かして金床と治具をつくる。

鉄板を熱して治具を用いてハトメの駒を作っていく、なかなかの熱い作業で汗をかきながら作業している。 ハトメに刺すポールの先も金属で作っていく。木でオス型を作り、サラサラ砂でメス型を作る、溶かした金属を流し入れてを繰り返すと。今日も一日が終わる。


夕方は早めに仕事を片付けてグレッグの為の狩りに行く。血抜きして解体した後の餌と肉屋さんで買ってくる餌では食い付きが違うので狩りに行く事にしていた。その日も変わらず。


ココさんの事務室に挨拶に行くと先客が居たので待つも、入ってと声がかかる。

「失礼します。」とエルが言うと「ご無沙汰じゃのう」とケップさんが居た。


少しの挨拶と少しの会話、話す事も無いので、「それでは」と話しを終え、帰ろうとすると「逃げるのか」とケップさんが言う。

「ええ、無駄な事はしません。用事がありますので」と言うと「貴族に対して不敬だぞ」と脅しとも取れる言葉をかけてくる。


「そう取って頂いても構いませんし、切り捨てますか? エル君行こう。ココさん今日まで場所をお貸し下さりありがとうございました」 ベティ

「どうして?」 戸惑うココ

「私たちだけでは抗うだけの力はありませんから」 部屋を出て行くベティ達


間借りの仮工房で加工した物を馬車に積み込み店を出てすぐ、ベックさん率いる軍団がいる中を素知らぬ顔して通り抜けるとシャムの結界にカキンと甲高い音が聞こえてくる。キャッパオから馬車までを繭で覆うかの様な結界でそのまま移動して行く。キャッパオは堂々ピンキーはオドオドしながら。前に立ちはだかる者は見えない繭に押し除けられる様に排除される。

暫くそのまま進むと騒ぎを聞きつけ衛兵や騎士がやって来る。

また、こいつらか。心の声が聴こえてきそうだ。


「防衛の為の攻撃は有罪?無罪?」 ベティ

「内容による」 騎士は当たり障りない返答

「貴族に対しての不敬罪だ!」 の声が周りから聞こえてくると、

「彼らがお貴族様かしらお奇賊様ではなくて、おほほっ」 ベティは騎士に語る


騎士はなんともしがたい顔でベティを見る。そこに呼ばれてやって来たキリング登場。


「又、お前達か。 これは、結界か。まあ良い、何があった?」 キリング

「貴族に対する不敬罪であり、お館様の屋敷を焼こうとした者達。それに奴らは妖を連れている、その猫と小型馬だ。排除せねばならない」 ベック

「んっ、小型馬を排除とは?」 キリング

「言葉通り!骨も残してはならん、人の真似をした妖ども」 ベック

「お前はどこの貴族だ?席は? 周りの者は?」 問いかけるキリング

「我らはオレンジベリーシティ、ケップ・スタルーン男爵の家臣ベック。周りは連なる者だ」 ベック

「では、私も名乗りをあげよう。我はライムグリン侯爵家が長子キリング・ライムグリン。その者達は、我が家の客人であり要人だ。 剣を向け攻撃した事、即ち侯爵家に意を唱える者。戦線布告と捉えるが間違い無いか!  あぁ、連なる者で言うならばその者達は我が家に連なる者。組合で調べれば良い、登録してある。 男爵風情が侯爵家に楯突くか!」 ニヤリと笑うキリング

「なに、 爵位を持ち出すとは」 ベック

「貴族に対する不敬罪なのだろう? 私はお前を切り捨てられるがどうする?庶民? それともう一つ、部下の不手際は当主が負うぞ。ハッハッハッ」 爵位マウントのキリング


ブロロ『なんか安物の芝居みたいね、エル。それに妖って私かな』 悲しげなピンキー

「キリングさんって、ちゃんとしているんだね」 ピンキーの背を撫ぜながら小声のエル

「そりゃ侯爵家長子だもの、教育は厳しいよ」 小声のベティ

「それくらいで勘弁してあげてください、気のいいパイセンなんです」 小声の会話が聞こえていた騎士я

「あらっ、聞こえました。ごめんあそばせ。おほほっ」 手を口にするベティ


キリングがエル達の馬車に寄って来た。

「よっ、Tメーカーって呼ばれているんだって? うちもこのまま引けないしシャム殿とモグ殿の力を借りたい。アネストの南門騒動の様な結界は張れるか?あれなら被害が抑えられる。謝礼はする」 お願いキリング

「見たとこ散らばってて通りは封鎖になるぜ良いのかい」 シャム

「構わんよ。むしろ頼みたい」 キリング

「(コツン)どうだ。確認して来いよ。キリング」 キリングをパシらせようとするシャム

「もう、終わったのか。見てくるわ」 疑わないキリング

「キリングパイセン、私が反対側を」 気のいいキリングを気に掛ける後輩騎士я


「撤収だ!」 キリングが全隊に声掛けする

「逃げるのか!」 ベックが負けじと声を発するが

「いや、処置したからな。 お前などに構うほど暇ではない」 キリング

「侯爵家は腰抜けか!」 ベックは煽るがキリングは無視、他の騎士と打ち合わせし

「侯爵家への侮辱罪が成立します。スタルーン男爵の出頭を要請します」 監査騎士がベックに言い渡す。

「何を、茶番を言うか」 掴み掛かろうと前に出るベックを結界が遮る

「当分頭を冷やせ、のぼせるかもしれんがな。ハッハッハッ」 高笑いのキリング


~~


ココの店の前の通りは文字通り封鎖状態、人の通れる隙間すら無く結界が張ってある。

[鉄壁の問屋街封鎖事件]としてキリング・ライムグリンも又、鉄壁と呼ばれる様になる。


王都の通りの一つを封鎖してお咎めがない訳なく、当然に罪状と報告を求められる。

キリングは王宮に説明の毎日、エインサークは楽しげにキリングにお供している。


ケップも又、王宮に強制召集されて尋問を受けていた。


スタルーン男爵家家臣がライムグリン家長子に喧嘩を売り結界に閉じ込められる、一箇所空いている握り拳大の隙間から水や食糧を渡す日々が続く。 その隙間もライムグリン家から提供されている。因みに水や食糧はケップからの依頼でココのメイド達が配達している。


そしてここは問屋街、 商人が行き交い情報が早く回る地域。男爵家が侯爵家に喧嘩を売り男爵家の面々が結界に囲われて通りを封鎖している、噂はすぐに[問屋街封鎖騒動]として王都外に、そして国外へと…。シルフィエットの元にも情報が舞い込む。




「何やってんのあいつら‥」 

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