第28話 組合長とのお話し

♢♢♢ 七十六日目 


エル達は侯爵家での待機の日が続き、進展が無ければ海に行こうかと朝ご飯時に話しがまとまり、午前は商業組合で進捗を聞き、まだまだ時間が掛かりそうなら午後からとっとと出発しようと満場一致で可決された。

なぜか満場一致はプラスわんこも参加しており、ビッグも行く気になっている。あの日以来毎朝食事にやって来る。 妖精は食べなくても良いんじゃないのか? なんて無粋な事は言わずに暖かく迎えている。あの方に連なる者だから。


いつもの一行にビッグも加えて馬車で移動、組合の馬車置場が変更されていた。 何となく聴くのが申し訳なくなり、しれっと無視して停めている。グレッグはもちろん車内に待機、ビッグが一緒に居てくれている。


受け付けで組合長にアポを取ると、ただ今接客中で一時間事に交代する決まりらしい。そろそろ一時間なので第二応接室で待つ事にした。廊下を歩いてると第一応接室からの声が漏れ聞こえてくる。 ダメだと思うがつい聴き耳を立てる、 


「なんで侯爵家が出て来るの!」 「私が先に目をつけた」 「侯爵家と繋がり?」 「私も調べたけどアネストでしょ」 「トラブってる」 「特許」 「フラッツでは無い」 


案内の方も苦笑い。ハッハッわかりますよ。

「商売って激しいですね、ベティさん」 と呟くエル

「そうだよエル君、商人にとっては戦争と一緒だよ」 とベティ

「たまに居られますよ。 ここが第二応接室です、中は防音になっております、本来は。時間までお茶でも飲んでお待ち下さい。」 苦笑いの案内のおじさん


ベティとお茶を飲みお茶菓子を食べ寛ぐエル。

「特許を取っておいて良かったですよ、自分で売らなくても手数料が入ってきますもん。ベティさんには感謝ですよ」 呑気なエル

「実際の利益は販売者が多いけど、権利だけだとこうやって違う事に時間をかける事も出来るし、次の特許も考えられるし、私たちみたいに旅の者には便利よね」 ベティ

「このお茶菓子美味しいですね、皆んなのお土産に買っていきましょうよ」 エル

「確かに美味しいね。いいお値段すると思うよ。藍子とか好きそうね」 ベティ

「なら絶対買わないと怒られますよ。バレますもん。 南部だと砂糖は産地なんですか?」エル

「あまり知らないわ。それも例の情報なの?」ベティ

「そうですね、温暖な地域で採れる植物から煮詰める感じですかね、黒糖かな? ここにもトウキビ草ってありますよね、似た植物だと思いますよ」 エル

「そんなので出来るの?」 ベティ

「確か…記憶が曖昧で、 作ってみますか!」 やる気のエル

「先ずここの砂糖の作り方を聞いてからね、ちょうどここで聞けるわ」 ウインクベティ


暫くすると、ノックの音と共に組合長が入室する。

「いやー、お待たせしてすみません。立ち上げの選定の件ですね」 汗だくだくの組合長

「ゆっくりで良いですよ、まだ時間がかかる様なら、先に海に行きたくて確認に来たんです」 エル

「へっ⁈」 ベティとエルをキョロキョロ見る組合長

「前回は先代侯爵様がいらして話しが伸びたんです。一週間くらいあるなら海に行こうかと話してまして、もともとそのつもりでこのフラッツに来たんですよ」 ベティが説明

「あぁ、そう言う事でしたか。何か目的でも?」 組合長

「温暖な地域に生えているゴムの木とトウキビ草より甘い草?茎?、あとなんだっけ? あっ温泉、えーと温かい湧水の出る所。これは温暖な地域に限らないんですけど」エル

「なんか、いろいろとあるんですね。 砂糖と塩は国の管理ですので製造も販売も国の認可が要りますよ。 

ゴムの木ですか?聞き覚えはないですね。何に使う物ですか? 

熱いお湯の様な湧水?温い川なら東の山に流れているそうです。魚が居ないのと臭いので人気が無いんですよ、それに王都の外ですし。」ひきつり気味の組合長


そんな雑談をしながら本題に

「正直言って職人は難しいかもしれません。生地問屋のココさんは了解を貰いました。工房の場所は先代侯爵様が用意するそうで確認が取れていません。今はここ迄ですね」組合長

「わかりました。よし、海に行こう!」 エル

「エル君気持ちはわかるけど、後から大変になるパターンだよ。 職人さんは(女、子供に)って奴ですね。組合長が悪い訳では無いですし。 それはこちらで試作品を作ります。特許は抑えてますから。クライアントが発注すれば聞きにくれば良いんじゃない。頭をさげさして。 生地は相談だね大きさと厚みで変わるから。 あとは工房か。 あと材料の仕入れも紹介して欲しいですね」 テキパキベティ

「そうだ、良い返事が貰えなかった職人さん教えといてもらえますか!お話しの材料にするだけですから。」 不敵な笑みを浮かべるベティ

「いやーファイルもう無いか‥」 冷や汗の組合長

「覚えてますよね組合長様ですから(ニコッ)」 目が笑っていない笑顔のベティ

「まだ引き出しに残って‥」 汗っかきな組合長

「先代の馬車をモデルカーにして貴族街でも廻ってもらいましょ。食い付いたら頂きましょうか」 狩人ベティ


材料の仕入先も紹介状を書いてもらい例の職人リストももらう。ベティがすぐさまDeath listと書いてたのは見てない。組合長も素早く横を向いてた。見てないはずだ。


お茶菓子で出された菓子を買う、多めに。無賃で働くピンキーとキャッパオの為。

組合を出て材料を仕入れにあちこち廻る。 ベティがヤル気なのだ。どうしたのか聴くと。

「商売には行く通りかやり方があるんだよ。今回は焦らせるやり方にする。侯爵家の馬車にフル装備で貴族街を廻ってもらい、それぞれ貴族が馬車屋や木工所が聞きに来るだろ。その頃には海でバカンスを楽しむ帰ってもすぐには教えない。侯爵家の紹介にするのさ、すると侯爵家の顔も立つ。嫌ならアネストまで行けば良いさ。 アネストでは売れてるよ。手数料を見ればわかるよ。多分だが予約が溜まっているだろすぐには処理出来ない。商業組合も尻尾を振ってたろ。その為に見本を先に作るよ。 

貴族が絡んで来たら貴族で対抗だ。せいぜい侯爵家の看板で先代には動いてもらおう。」 めっちゃヤル気MAX悪い顔になっているベティ

「YES ma'am」 エル隊員降臨


最後の仕入先であの人と出会う

「待ってたわ、話しを聞かせて」と連れ込まれた応接室の主人ココ

「どの話しでしょうか」困惑のエル

「ココさん、お別れの御挨拶が出来ずにすみませんでした。今回はお話しを受けてくださりありがとうございます」腰を折り礼をするベティ

「それは良いのよ、あの時から決めてたの貴方達と仕事したら楽しそうだって私の感が教えてくれたわ」 ウインクするココ


ケップ男爵邸での事、もともと南下する予定だった事、侯爵家の後継人がついた事は偶然で今も戸惑っている事、一仕事したら海に行く事、アネスト王国では貴族が好んで装備している事でフラッツ王国でも勝算がある事、あとデスリストの存在。


ココの一番気を引いたのがデスリスト…を用いて侯爵家に恩を返す事。

工房が決まっていないなら決まるまでここを使いなさいと材料を降ろし出した。

ココさんも女性商人の苦労が解るしこの生地問屋も女性の使用人が大多数だ、なので余計にちからを貸したいそうだ。 

エルは肩身が狭い思いをした。

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