第25話 憂鬱
♢♢♢ キリングはやっぱり憂鬱
お祖父様一団が去った後、チャリオット隊隊長が近寄って来た。
「おぅ、キリングいい所に居た探す手間が省けたよ。 お前の家にチャリオットを駆る女騎士は居たのか?何処の家の者だ? 全く記憶に無いのだ」 チャリオット隊隊長
「ジョージ隊長、彼女はお祖父様の客人の内のお一人です」 キリング
「何人か居るのか、そう言えばエインサーク様の隣にも見知らぬ美人が居たな。騎士達が騒いでいた。 いや、それよりも女騎士だ、キリングは彼女の腕前は知っているか?」 ジョージ隊長
「いえ、知りません。ただ、自前のランスをお持ちですので得意な武器なのでしょう」 キリング
「ランスを持つ様な女性だと俺が知らないはずないのだが。他国か?」 ジョージ隊長
「ええ、隣国アネスト王国と聞いています」 キリング
「アネストの女騎士か。ん、ライムグリン家はアネストと繋がりがあったか? 初耳だな」 ジョージ隊長
「いえ、ありませんよ。お祖父様の横の女性が客人です。女騎士の方は護衛みたいな者です。 何かありましたか?」 しらばっくれるキリング
「いや、何でもない。 時間を取らせて悪かったな」 ジョージ隊長は何事もなく去る。
その後は騎士隊に合流して演習に参加した。演習が終わり帰りがけにレイトン騎士隊長に声をかけられる。
「キリング少し聞きたい事がある、10分後にミーティングルームだ」 レイトン騎士隊長
「了解しました
(根掘り葉掘り聞かれるな)」 キリング
~ミーティングルーム~
「キリング騎士兵参りました」 キリング
「よし、入れ。 呼ばれる事に心当たりはあるかね」 レイトン騎士隊長
「推測にはなりますが、あります。 本日祖父が騎士団に連れて来た人物でしょうか」 キリング
「そうだ。早速アネストに送っている者に照会をかけると直ぐにわかったよ。 隠蔽もされていない様だ、身元も素性も噂も直ぐに集まった。間者の可能性は低い。 女騎士と小型馬だけだ。 昨日商業組合でトラブルの渦中の一団だろう。報告は来ているよ衛兵隊長からな。それで君から報告を聞きたいと思ってね」 レイトン騎士隊長
「商業組合前の件は衛兵隊長の通りです。実はその前に王都の入門の時にもトラブルがあり門兵の詰所でも聴取されているはずです。その際は三人組の冒険者が御者をしていた彼女達から馬車を奪う所でした。 その件もあり、小生が聴取に名乗り出ました。そうしました所、祖父の探し人である方が居りまして意図せず当家にて客人として滞在しております」 キリング
「それが女騎士か?」レイトン騎士隊長
「いえ違います。祖父の隣に居た女性です。 女性騎士はベティと言いまして商人兼護衛の役割りと聞いています」 キリング
「そのベティと言うお嬢さんは元ランディ男爵家のベルベッティという名で、元騎士、今は貴族席を返還して平民だ。高位貴族の御夫人の護衛に定評があったらしい。嫉みで騎士を辞めた後は護衛依頼のあった貴族の御夫人の小間使いの様な事をしていた様だ。しかし、容姿が違う。顔に大きな切り傷がトレードマークだったらしいぞ。何処の山賊だ。ハッハッハッ。
それでだ、 噂と言うのが傷が消えていて、肌が白くなり、髪が艶艶になって現れたそうだ。たった三週間の間に。
他はアネストの王都の東門扉を破壊した疑い、南門での近衛兵結界隔離騒動の当事者の疑いで各件で手配されていた。どちらも高位貴族の御夫人の働きで手配が取り消されている、これは冤罪の取り消しの手順のようで揉み消しでは無く、正規の手順に倣ったやり方だな。 ん、どうしたキリング?」 レイトン騎士隊長
「いえ、何もありません。 ただ それですと年齢が合わない気がしまして…」 キリング
「そうなのか?、貴族年鑑からだと、24歳、25歳だぞ。若作りか? 他の客人の名は?目的は? 」 レイトン騎士隊長
「祖父の隣の女性は関しては話しをすることが許されておりません。後はエルという名の少年です、彼はベティ嬢の見習い商人だそうです」 キリング
「そうか、話せないとなると、良い噂にはならんぞ、いやいや、脅しじゃないさ。あれだけの騎士と貴族の令嬢が観ていたんだ騎士団の中では既に渦中の人だぞ。 令嬢達も面白おかしく今日の模擬戦の話しを親にするだろう。
そう嫌な顔をするな、普段のお前は仕掛ける側だからな、解るだろ。 俺だってキリング・ライムグリンを敵にしたい訳じゃ無いよ。 先ずは事実確認だ」 レイトン騎士隊長
「はい、承知しています」 不機嫌なキリング
同席していた各部の隊長達は意見を出す事なく尋問ミーティングは終わった。
残っているのは不機嫌なキリング騎士兵。
♢♢♢ 七十日目 教祖さま
朝起きるとベットに驢馬が居た。藍子が戻ってピンキーだ。
思わず抱きしめてピンキーの鼻先にキスを落とす、エル。
ヒヒーン『エルって驢馬に欲情するタイプ?!』 驚いたピンキー
「チ、チガウヨ。 ピンキーが余りにも可愛くてついだよ。つい。」 慌てふためくエル
「そう苛めてやるなよ。エルはいつも言ってるぜ。ピンキーは可愛くて最高ー!だってさ」 ニヤケのシャム
「ダァー、全然フォローになってないー」 顔を真っ赤にエルが叫ぶ
静かに両手をいっぱい広げるベティがエルに向けて
「おはようのキスはまだかな?! お姉さんが受け止めてあげよう!」
「ダァー、ーーー」真っ赤なエルが恥ずかしさに耐えきれず部屋を出て行く。
さぁ、今日も楽しい一日が始まる。
朝ご飯の席でひとり膨れっ面のエルがいる。
「皆んな酷いよ」 エル
「ごめんね、お姉さんついついエル君が可愛くて!」 照れた素振りでベティが言うと
ブロロ『いきなりでビックリするよ。ちゃんと段階を踏まないと、』 てへぇ、って聞こえてきそうなピンキー
「およっ、エル良かったな、段階を踏んだら良いんだってよ! 驢馬との禁断の恋!」 楽しそうなシャム
アハハッ、と笑い声が絶えない食卓を覗く者がいる。
「ビッグか、どうした一緒に食うか?」 シャムが朝ご飯に誘う。
「良いのか? 」 ビッグ
「食うなら来いよ。皆んな良いよな。」 シャムは皆に問う。
「『良いよ』」
「用意するよ」「麦が湯食べれる?」「お肉焼く?」『ピィー』
一行とビッグは一緒に朝ご飯を楽しく食べた。
今日は買い物と観光に出る。日は決まっていないが釣りに行く事になっている。川ではシャムが地道に猫の手で捕っていたが時間がかかる上、あまり上手く無い。 人は道具を使うことが出来る。 それ故に釣具を求めている。
ついでに、エルに武器を持たす意見も出たが、武器を持つと諍いが大きくなるとの事から取り止めに。持つならしっかりと稽古をしてからとの事だ。
朝ご飯が終わり、ほっこりしていると。キャサリンの使いの者が午前のお茶に伺います。と連絡が届いた。家を借りている手前、我らに拒否権は無い。
~モォーニングティ~
「ごめんなさいね、突然。どうしても聴きたくて!あの木の実は本物ね!見て髪にコシを感じるし、肌は潤いが増しているわ。10年前の肌より良いわ。 それでね、手に入らないのは聞いているわ。御祈りを、ちゃんとしたいの。教会の方が良いかしら教えて欲しくて。」 すっかりハマるキャサリン
「そうですか、それは良かったです。 その問いの専門家は… シャム様ですね」 投げた、ベティはシャムに丸投げだ。
「そう!シャム様、私を御導き下さいませ」 シャムの手を両手で取り拝むキャサリン
「私はグレッグの餌の用意がまだ残ってまして、(ピィー)失礼します。」 しれっとベティ 離脱
「(は、計ったなベティ)わ、 私目でよけれで構いません。」 ベティに恨めしい眼差しを向けるシャム 確保
キャサリンは熱心にシャムの話しを聴いた。太陽や月の信仰、信仰心は悪いものではない。ただ恩恵は無いが心の平静を得られる。
教会の傀儡を祀る信仰を聴いても頷き、寄付をすれば極楽浄土に行ける訳では無いと。
自身の中にある本心からの御祈りに勝るものはないと。シャムが力強く唱えると、キャサリンはシャムの手を取りシャム様の銅像を作ると言って帰って行った。
シャムは あの方 ではないのでシャムを拝んでも得られるものは何も無いのだが、人は何かに、誰かに縋りたい生き物かもしれない。
対象は物でも人でも構わない。
心の拠り所を求めてる。
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