第21話 晩餐会準備
_刻を少々遡る_
ライムグリン侯爵家の離れの使用人支度部屋に招集された各種専門のエキスパート侍女の面々、マッサージ師やメイクアップ師、ドレスの直しをする洋裁師達は、初め馬のマッサージ?ドレスアップ?と聞いて、憤慨する者、嫌気の者が多数、しかしここは侯爵家、彼女達も貴族の者、それに準ずる者が蠢く職場だ。今回集められた者は口が堅いのは勿論のこと、出自は確かで話しが漏れればすぐに辿れる。リーダーは副侍女長とガチガチのメンバー構成。
「皆さん、メンバーを見てお気付きかと思いますが、歴代最高と謳われた先代からの極秘ミッションです。他言無用の徹底を。 私も含め思う事も在りましょう。しかし、我らライムグリン侯爵家の精鋭として最高のパフォーマンスで最高の仕事をしようではありませんか。
我らに栄光を
ラーイムグリン♪・(ラーイムグリン♪)・ラーイムグリン♪・(ラーイムグリン♪)ーーーー」
~~
そして、仕事が終わった精鋭達の反省会ミーティング。副侍女長は報告書を作成中。そんな中、施術を行った者達は、各々が話しをし問題を解決してから解散となる。 他言無用な為この場で解決しておく必要があるからだ。
「藍子様つて何者」「本当に馬なの」「耳は上に付いてた」「尻尾もちゃんと生えてた」「マッサージは全裸よ」「あのくびれ」「あの吸い付く様な白肌」「あの肌ならずっと触っていたい」「あの髪の艶は何」「馬って神馬」「堂々とした佇まい」「惚れ惚れするわ」「あのプロポーションは反則だわ」「年齢詐欺よ」「物語の獣人」「普段は馬って話しよ」「その後のベティ様も綺麗だったわ」「藍子様の肌は赤ちゃんの様だったわ」「それが近いわ」「ベティ様の肌なら、公爵家から王家クラスね」「ベティ様は今日も狩りに行かれたそうよ」「日傘も差され無いの」「移動は御者台らしいわよ」「やだっ日焼けしちゃうじゃない」「ベティ様って元騎士よ」「日焼け跡なんて無かったわ」「首周りもたるみは無しよ」「ローティーンの肌ね」「掌の豆なんか無かったわ」「有り得ない」
「美しい肌の秘訣は何ですかってつい聞いてしまったの、そしたらなんて言ったと思う?あの方への心からの御祈り。それだけですって。」「私も横で聞いてたよ」「あの方は?って聞いたらこの星のトップって。」「椿油って売ってるの?」「椿油は自家製ですって」
「(パンパン)はい注目。皆さん、今回もご苦労様でした。極秘ミッションでの情報の漏洩はお気を付けくださいね。彼女達は我等の監視者を早い段階で見破っています。私も報告書は書きますが、この中にも監視者が混じっている事でしょう。私も知らされておりませんがいつも以上に慎重な行動を。 そして、いつも通り他言無用。 では、解散。」 物知りな副侍女長
エルはキャッパオを井戸横の洗い場で洗ってやり、そのまま自分もチャチャと洗う、キャッパオの毛並みをタオルで拭きながら自分も拭く。キャッパオにも椿油でブラッシングしながら、手に付いて残っている椿油で自分の髪の毛を撫でつける。 宿舎に戻り用意されている服に袖を通す。
そう、藍子以外はゆっくりとしていない。
藍子はその間、馬車の横に置かれたテーブルでお茶を、傍にはグレッグが、
なぜか、キリングも相席している。
「ご機嫌よう。先程ぶりね、キリング様。 お昼はグレッグが失礼をいたしまして申し訳ございません。彼は私たちに向けられた悪意に敏感でして。まだ幼体の未熟者なの、大目に見て頂けると助かります。」 恭しい藍子
「その御美しい御姿では、はじめましてキリングと申します。エル君から晩餐会に席を一つ増やせないかと相談があって伺ったのですが、詳しくお伺いできますか?」 キリング
「この姿の時は藍子と言います。 そちらのビッグいえ、モグでしたか。お祖父様にお聞きになられましたか? なぜクー・シーであるモグが貴家に永らく居る理由、結界は気付いていましたか? 我らは多くを語れません。許されていないからです。先程はモグが話す事、立って歩く事に驚いていたご様子、我らはシャムとの交流は認められている事、あるいはそちらの先代であるお祖父様とモグは交流があるかも知れません。キリング様が知らない知らされていないのはそれまでの者。 先に情報を探られるのは必要 かも しれませんが、命は大切になさりますように。」 ゆったりと話す藍子は椅子に座ったまま腰を折って礼をする。
「脅すおつもりか?」 少しキツイ口調のキリング
「シャムは我等の仲間。モグはお祖父様の友。侯爵家への遣いでは無いのでは? 厩舎で見たモグの犬小屋はクー・シーに対する敬意は感じられません。彼等は妖精。妖精は何方に仕えるのか?何方の遣いか? お気付きかしら」 マウントを取ろうと必死な藍子
「創造し‥」 顔色が変わるキリング
「あっ、あの方はその呼び名がお嫌みたいです」 カップを手に一口、藍子
「しかし、あれは物語のお話し」 蒼ざめるキリング
「少し 、 お話し過ぎました。 答え合わせはお祖父様にお願いされてみては?」 勝ち誇る藍子
「かたじけない。晩餐会には皆様で、お馬様にも場所を、鳥 グレッグ様には何か場所を用意しよう。もう一頭のお馬様は藍子嬢の様なお姿になられるか?」焦るキリング
「いえ、キャッパオは綺麗ですがポニーと言う小型馬ですわ。 グレッグはわかりません、ただ生後一ヶ月程でしょうか、ファイヤーバードと予想はしていますが、シャムも解らずで、楽しみにしております」 してやったりの藍子
「わかりました。では後ほど、晩餐会を楽しみにしております」 引き攣った顔のキリングは足速に屋敷に戻っていく。
「グレッグ、覗き魔が居るんでしょ、(ピー)火を吐くのは無しよ、そうね木の上なら背後から蹴り落とすとかどうかしら。追いかけ回しても良いわね、まぁ脅しね、できる?」 悪い顔になっている藍子
『ピィー♪』 藍子に頼られて張り切るグレッグ
「いい子ね!」 フッと、すました笑顔の藍子
宿舎のリビングでは、シャムとビッグが打ち合わせ、ベティが着替えのチェック中、エルも着替え中で、家の外から藍子の声が聴こえて外に出るのを躊躇った。
相手はキリングのようで、こちらの内情を探りに来たようだ。もともと、聴取に来たのだから当たり前ではある。
「お前とこの驢馬娘は良く知ってるな。しかもキリング坊やを煽りまくるね。内情を喋り過ぎだろシャム」 ビッグ
「いや、ちがうぞ、そんなに話してない」 シャム
「ピンキーはシャム様とエル君の話しはよく聴いてるよ。いつもお耳がクルクルしてるよ」 ベティ談
「あぁ、確かに不意に話し掛けて応えてくれるのはピンキーだけだわ」 エル談
「少年が、異から界する者? まだ覚醒してないの?」 ビッグ
「わかるか、あの方は、エルに寛大だ。 ビッグはここの祖父さんの案内人だろ? どこまで開示してる?」シャム
「まぁ、クー・シーと結界くらいか。 長生きしていると気味悪がられるし扱いも悪いしそろそろ、五十年の大台で切りを付けようかと思ってたんだ。それに代わりが来たかもって俺たち修行者だろほら、交代とか」 ビッグ
「ビッグ様、修行者の方は食事とかはどうされているんですか? 結界も使われているんですか?(おいっビッグっ) シャム様は黙っていてください ね! 食のリクエストとかされますか?」 何かに気がつき始めたベティ
「出された物か、それに妖精は食べないからな。食べるのは趣味だね。しかし藍子は俺の犬小屋とか良く見てんなぁ、シャムが羨ましいぜ」 ビッグ
「シャム様!どう言う事ですか。食べなくても大丈夫という事ですか」 ちょい怒ベティ
「まあ、そうだな。間違ってはいない。 理由はある。(無音のコツン)」 シャム
「聞かしてもらいましょう。」 シャムの前に出るベティ
「俺は攻撃が出来ない、俺の第一警護対象はエルだ。その次が仲間だ。これは変わらないし、替えられない。あの方の意向だから。 店舗が燃やされた後のベティの行動は俺たちを庇う行動だった。義には義で返したいが意向は絶対だ。だから仲間になる様に仕向けた。
子供のエルも木の実と果実だけでは大きくなれない、俺が魚を捕るにも限界がある。タンパク質まぁ肉だが、を狩れる事もベティを選んだ理由だ。しかし一番は良人か否か。あの方がエルに手を差し伸べた。俺はベティを仲間とする事にした。 俺が肉を喰いたいと言うとエルも肉が食べられ、グレッグは臓物を食べる。今や鳥頭のグレッグもベティは仲間と意識している。すり込み以外では餌をやり続けるくらいしか鳥は理解しない。」 無表情のシャム
「「‥‥(良い様に言い過ぎ)(対比にならない対比を使う詐欺やん)(自分が食べたいだけだろ)(若干、鳥頭をバカにしてる?)」」 口の遮音結界でもがくエルとビッグ
「シャム様、そこまで私の事を」 勘違いベティ
「俺の仲間には幸せになってもらいたい」 勘違いをあおるシャムは後ろを向いて姿を消す、そのままエルとビッグの横に移動して
「エル、他言無用だ肯定なら首を縦に、否定なら横に
ビッグ、お前もだ、どうする?」 耳元で優しく囁くシャム
「「・」」二人揃って首を縦に振る。
「賢い選択だ。 横に振ったらショックで解除の呪文を忘れそうだぜ。 結界を解除した後に妙な事は考えるな。」 姿を消した冷静なシャム
結界が解除された二人は並び無言で窓から外を眺めた。
そして、一人勘違いが勘違いをうむ。
「私とシャム様はその種族が違うと言いますか、その、好意は素直に嬉しく思います、ただ、その、ご期待には、添えないかと、お側に居る、だけでは、 ぽっ、 シャム様の御世嗣 キャッ ーーー」 両手を組みモジモジと俯くベティの姿があった。ベティは学園時代に婚約を解消されてから色恋沙汰には縁が無く、騎士時代は遊びでのお誘いばかりで全て断っていた。うぶなベティ。
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