第19話 連行


♢♢♢ 六十八日目午後 騎士の屋敷


騎士キリングが騎乗する馬のあとを仕方なく馬車を曳いて着いて行くエル達一行。

商業組合や高級な店舗が軒を連ねる二番街通りの突き当たりまでやって来た。並足で30分くらいで着いた先は一際大きなお屋敷。

先頭の騎士キリングが近づくと大きな門扉がゆっくりと開けられていく。 なんとも優雅だ。


「ジイヤ、馬車の入れる場所でお茶をしたい、新しい友人だ何処が良い?」 キリング

「それでは、裏庭の手前はいかがでしょうか? ご用意致します」 ジイヤ

ジイヤは戻り、騎士キリングが近づいて来る。


「ベティ嬢とエイル君だったかな」 握手を求めるキリング

「はい、ベティです。キリング様」 ベティ

「エイルではなくエルです」 エル

「それはすまない、エル君」 握手を求めるキリング


場所を移して庭先に用意されたお茶席、話しやすい様に人払いもしてある。


「ベティ嬢は慣れているようだが、エル君は初めてかな?」 キリング

「聴取は?何が狙いでしょう?」 エル

「まぁ、そう怪しむな。君達はトラブルに愛されているみたいだな。ハッハッハッ

 君達を間者と言う者も居るが私はそう思わない。トラブルを大きくし、目立つ馬車を隠す事なく乗り回す。君達の愛鳥は宿にでも戻したのかい? 城門の時に見ているからね隠さなくても良いよ。良く調教されている、あの鳥の限らず、馬も猫も殺気がダダ漏れだ」 ゆったりお茶を飲むキリングに近づくビーグル犬


「あっ、ビーグル」 思わず口に出すエル


「ほう、 この世界にはね、 犬に種類は無いのだよ。 このモグも特殊な犬だ。エル君は何処の世界から やって来たのかな?」 ニヤリと笑うキリング

「‥‥」 取り付く島もなく、狼狽えるエル

「エル、そいつはビッグだ。小型犬なのにビッグだぜ、笑ってやれよ。

一応俺のパイセンだ。久しぶりだなビッグ!」 ビーグル犬に話しかけるシャム

「‥‥シャム、お前バラすなよ、あと一年で五十年の大台だったのによ」 モグことビッグ

モグも後ろ脚で立ち、歩いてシャムと合流し肩を組んでる。

一同騒然、キリングも目を剥くほど驚いてる。 

「久しぶりだなシャム、お前も外界に降りたのか、いつ頃だ?」 モグことビッグ

「俺は二ヶ月ほど前か、俺はあの方の指示でケット・シーとしてのエルの案内人だ。

ビッグはバラしたら マズイんじゃないの~」 ニヤけて話すシャム。

「あっ、お前嵌めやがったな」 モグことビッグは顔が青褪めながらもシャムにヘッドロックをかけてる。

「シャム~オレは何を見せられてんだよ、痴話喧嘩?余興か?」 呆れるエル

「おい、騎士のだr…キリングだっけか。ビッグはクー・シーなんだ内緒だからな。だいたい普通の犬がこんなに生きれる訳ねーだろ」 辛辣なシャム

「私もおかしいとは感じていたんだ。ただ、侯爵家の特別な何か力とかがある物とばかり。 他所者には話すなというのはこの事だったのか…」 一人納得のキリング

「エル、信頼は出来なくても、ビッグがいる家だ ある程度の信用はあるんじゃないか」 シャム

「ピィ〜」シャムが指笛を鳴らし、「ピィピィ」もう一度鳴らす。

ドン! ポテ。

近くの木から男が落ちてきた。

「あーバレちゃたか。 侯爵家だからね隠れた護衛くらい付いているよ」 事もな気に言うキリングはお茶を一口

「これにも黙らせろよ。ビッグの結界が切れちまうぜ」 シャム

「許可を願いたい。一人だけモグの事を話したい、いや確認したい人がいる。モグを飼い始めたのは爺様なんだ。」 何かに気付きお願いするキリング

「まぁ、知ってんだろうが、確認だけにして言い回るなよ。あそこの陰にいる執事にもな。

これだけ秘密を共有してんだ。保護はしてくれるんだろ。 祖父さんの客だったとか言ってさ。 

 あ〜あ、こんなに時間が掛かって時間も遅くなって宿屋空いてるかな〜」 最後が棒読みのシャム

「わかった、部屋を用意させよう。(パンパン)」 キリングが柏手を打つと、

「ご用意致します」 陰からジイヤが出てきて一言。 やっぱり聴いてたのね。 



客間があまりにも豪華で眠れそうにないので、使用人用の離れの住居にしてもらった。近くに馬車が置けるのはポイントが高い。

隠居の先代が話しをしたいと言うので母家おもやでは無く離れの屋敷で夕食をとる事なった。

裏の森も自由にして良いと許可を得てベティとグレッグは兎を狩りに行く、主にグレッグの餌として。ピンキーとキャッパオは厩舎に預けられ世話をしてもらう事になった。


シャムとモグことビッグは少し話しがあるとかで居間から出て行った。


この日からライムグリン家のモグの扱い方が分かりやすい程に一変する。約五十年変わらなかった犬小屋が‥

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