第10話 アイコ?ピンキー?
♢♢♢ 四十四日目 いろんな意見
王都脱出から二日、少し落ち着き隣国に向けまったり進んでいる。
「シルフィエットさん上手くやってますかね?」
「シルフィなら上手く立ちまわるわ。伯爵夫人よ!今頃王家に献上された霊草の件で忙しいでしょうね。」 ベティさんは確信を持って話す。
「他にも高位貴族の方にも情報は売っているんでしょ。」 エルは不思議がる。
「実際にあたしに会ったのは彼女だけよ、あたしの渾名と昔と今現在を知る人は少ないわ。シルフィの言葉は昔の同僚から聞けば確実に証明されるから信用が上がる。シャム様が渡した貸しも上手く使うはずよ。」
「そんなものですか。
ところで、この地域は雪はどれくらい降るんですか? 冬場のピンキー達の牧草が気になってて、寒くなるなら暖かい地域に流れて行こうってシャムと話してたんですよ。」 エルはピンキーが仲間になった時の話しを思い出した。
「そこまでキャッパオの事を思ってくれてるなんて」 ウルウルしてるベティさん。
ベティは先日の[キャッパオ突撃大作戦]で助けられキャッパオにメロメロになっている。ここ二日は馬車の中では無く毛布を持ってサイドタープの下でキャッパオと一緒に寝ている。
「…それで、幌布を追加しませんか? ベティさんキャッパオの横で寝る時に地面と側面に幌布を引くと夜風が防げて快適じゃないですか?」 エルが地面にこんな感じです、と絵を描いてる。
ブロロ『エル良いじゃん。まだ夜に雨降ってなかったけど、雨の夜の野宿は最悪、わたしたちは屋根しか無いからさ、じゃここはこうしてよ。』 ピンキーが蹄を使って地面に改良点を示すとエルは普段通りに会話している。ベティはピンキーの言葉はわからないが、地面の描かれていく改良点を見て、馬の意見は貴重よね。と思うことにした。
後にベティはピンキーについて、エル君と話しをしているのは聞いていましたが、あの時は馬車に付けるロールタープの追加装備の件で図面と見た事のない文字を蹄で地面に書いてました。ただ細かい字が書きにくいのか広い地面が無いと書けませんけど。たまにエル君が文字を間違えたのかピンキーが地面に書いて教えていたのが衝撃的でした。
追伸・ピンキーが最近蹄の間に木の枝を挟んで地面に見た事もない文字を書いていました。
♢♢♢ 四十六日目 アネスト出国
すぐそこには国境の検問がある、メールバードも有るし、伝達手段が無いわけじゃない。わざわざ取り締まりまでしないと思うが用心に越したことはないので、最悪は検問突破も視野に入れて望んだ検問。
全くのストレスフリーで検問通過。出て行って欲しかったのか?
隣国フラッツ王国までは、30キロほど距離がある。治外法権、誰の土地でも無く、誰もが欲しない土地。ちょっとした荒野だ。 荒野とは言え整備されていなくとも路はある、皆が歩き踏み固めただけの路。目印もなく方角も大雑把でよく辿り着くものだ。
「ベティ、我は兎を所望する。」 シャムはベティと旅を共にする時からすっかり肉食にチェンジした。 自ら魚を獲る事さえしなくなった。
「そうですね、今日はもう少し奥まで入ってみますね。穴兎がいるかも?」 ベティはシャムの要望に応えるべく回答するが。
「ダメだよ、奥は危険じゃないか。行くなら馬車で一緒にだよ。」 エルは安全重視主義だ。
「この街道は荒野を横断してますし、少しそれたらオオトカゲとかいないですかね?」 ベティ
「ベティさんそのトカゲは美味しいんですか?」 エルは意外そうに聞いてくる。
「そうね、素材としてはいいわね、脂身の少ない鳥肉に近いかしら、少しパサついて硬い…噛みごたえのある感じね。 騎士団時代のサバイバル訓練で体験しただけよ。 皮も売り物になるからヘッドショットで決めたいわね。 首は跳ねたらダメなのよ価値が下がるから」 仕留め方も気を使う商人ベティ。
「昔は身体が弱くて運動が出来なかったんで騎士は憧れますね、刀を思い通りに振り回すみたいに。」 身振り手振りのエル。
ブロロ『エル、刀なら騎士じゃなくて武士になっちゃうよ』 ピンキーからのツッコミに
「あれ、本当だ。刀と剣はそんなに違うんですか?」 あまり知らないエルに
ブロロ『エルは日本刀のイメージでしょ。刀は包丁と一緒で引きながら切るけど剣は叩き切る感じって聞いた事あるよ、ほんまか知らんけど』
「でた、関西の知らんけど。藍子さんって関西ですか? オレは名前も覚えてないんですよね。人と馬では違うのかな?」
「?アイコさんって誰なんですか?カンサイさんも初耳ですね」 ベティは秘密の多いエルに斬り込む。
「アイコさんはピンキーの源氏名ですよ」 エルは悪ふざけで言うと
ヒヒーン『ちがーう!ちゃんと答えてといてよ。変に思われちゃうじゃない』 プンプンのピンキー
「ごめんごめん、アイコって言うのはピンキーの本名なんですよ。オレも後から知ったんですけどピンキーって名前付けた後でしたし。やっぱりピンキーが良いですよね。」
ヒヒン『藍子は気に入ってるんだよ、おもちゃにしないで、失礼しちゃうわ。トウキビ草で手を打つわ。』
「すいません、ちょい悪ふざけしすぎました。了解トウキビ草ね。 カンサイは関西ね土地、地域の名称だね」 エルは答える。
「どちらも聞き馴染みの無い名前ですね。」 ベティは騎士団時代は訓練で、雑貨屋の時は雑用で王都内外はあちこち行っていたが聞きなれない名前だった。
小さいながらも箱馬車だが、二人は御者台でシャムとグレッグはルーフキャリアに乗り、今日もたわいも無い話しで楽しく旅をする一行。
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