第4話 仲間?ペット?
♢♢♢ 廿二日目 評価
エル達一行は王都に向かって街道をポックラポックラ歩いてる。
ピンキーの背にはボロローブの風呂敷で荷物を固定して、シャムはその上に乗っている。
ピンキー?ピンキーは新しく仲間になった驢馬。
エルが持っていた薬草(あの方の地産)で後ろ脚を治して動かせる様になり、あの方の地の木の実を貰いすっかり元気になり仲間になった。
エルはピンキーの鳴き声とは別の声が副音声の様に聴こえていたが、ピンキーの脚治療の為に話していると、主音声の鳴き声と副音声の日本語が意識して切り替えできる様になっていた。
ヒヒン『エル乗りなよ、エルくらいなら余裕さ!』
「いゃまだダメだ。もう少し様子を見てからね。しかし、ピンキーが元気になって本当によかったよ!」
ブロロ『その名前はやめてよー、藍子って名前があるんだから!』
「そう?でもやっぱり ピンキー! だけど、アイコって日本人っぽい名前だよね!誰が付けたの?」
ぴたっ、ピンキーの脚が止まり、
ブロロロブロロロ『ニホン? ちょっとエル!今 日本って言った?どこにあるのよ! どうやって帰るのよーー!』
ヒヒン、ヒヒンと大人になれない馬が暴れている様にしか見えない。 少ししてピンキーが落ち着くと、エルはピンキーにこの三週間の出来事を話して聞かせた。
ヒヒンブロロロ『やっぱり、私も死んだのかな。でもさ、なんでエルは人のままで私は驢馬なのよ!私も人がいいよ!』
「シャム、どうしてピンキーは驢馬に産まれてきたのかな?」
「おうエル、話しは済んだかい? でっピンキーの事か? そうだなぁ、亡くなった時の強い想いだったり思考かな。 怨み妬みはリセットされるけど、害悪が無くて真っ当に生きた者には寛容だからな、あの方は。 ピンキーも御祈りしてみたらどうだ?」
修行者シャムの副音声は修行で違う星の標準語は理解出来る様に訓練している。地球の場合は英語がセットされていて日本語版は聴こえているけど言葉が解らないので無視している。
少年エルの主音声はこの世界の言葉を、副音声には日本語がセットされた。
ピンキーの主音声は馬類の言葉・この世界の言葉(聴き取りのみ)、副音声は日本語がセットされている。
ヒヒンブロロロ『ちょっとシャム君、私も御祈りしたら人になれるの?』
「????エル、ピンキーは何を言ってるんだ?」
「ああシャム、御祈りすると人になれるかって?聞いてるよ!」
「無理だよ!エルもまだ魔法使えないだろ、そんなに簡単じゃないんだ。日々の積み重ねさ、あの方の地の薬草や木の実も食べたし少なからず縁を築けたから先ずは心からの御祈りを捧げてみてわ。」
ヒヒンブロロロ『先ずは感謝から、エル君より頂戴した薬草により脚の怪我を治癒して頂き、ありがとうございます。 木の実も頂戴して体力と気力が回復しました、ありがとうございました。 そして、エル君とシャム君に巡り合わせて頂いた貴方様に感謝を。 御蔭をもちまして息長らえることができました。 全ての事に感謝を。』 ふわっと一陣の風、シャンと微かな鈴の音がした。
「「‥‥」」 修行者シャムと少年エルは声にならないこえをあげる。目の前の御祈りしているピンキーが人型になり薄っすらと光っている、驢馬の耳と尻尾付きで。 驢馬娘ここに現る。
「ピンキーー!」
我にかえり叫ぶように名を呼ぶと、
ブロロン『んっ?どしたの』
と驢馬の姿のピンキーがそこにいる。 目の錯覚を疑うエルにシャムは言う。
「ピンキーの祈りはあの方に届いてる。 凄く貴重だよ!驢馬娘!」
それから何度か御祈りをして検証すると、御祈りしている間は驢馬娘になるけど、薄っすら光続ける事は無かった。ピンキーも見たいだろうと思い、久しぶりに風呂敷からタブレットを取り出し撮影したものをピンキーに見せると、「キャーー!」と赤面し、蹄を器用に使いタブレットの撮影データを消去していた。
映っていたのは驢馬娘。人の頃の姫野藍子の頭に驢馬の耳が可愛くクルクル動き、尻尾がフリフリフワフワ、膝をつき手を合わせている姿。 違和感は無い。 着衣が無い以外は‥。
驢馬娘 もとい ピンキーはエルとシャムに小一時間に渡り説教を説いた。どう言う事だと。年頃の女子を許可無く撮影するな覗くなと。犯罪だと。
少年エルは子供感覚で、修行者シャムは三毛猫感覚で悪気はなかったがピンキーのあまりの剣幕に押され頷くしかなかった、二度としないと。
この日のシャムの評価ポイントがマイナスに振っているのは あの方のみぞ知る。
♢♢♢ 廿三日目 蘭 乱 卵
エル達一行は採取をしながら旅をしていた。
木の実や果実を採り、町で売れそうな薬草を採り、山菜は湯がいて灰汁抜きしないと美味しく食べれないとピンキーが教えてくれたので採取はしなかった。お鍋が無いから。
川沿いを通る時はシャムに頑張ってもらい魚を獲る。戦績は小魚で三割ほどで貴重なタンパク質だ。 ピンキーは人の時の感覚で焼き魚を食べてみたけど受け付けなかった、すっかり草食ベジタリアン?ヴィーガン?だ。そのかわり、休憩で休んでいるのにずっと草を食べてる。 冬に向けて干し草も考えなくてはいけない。冬場は暖かい地域に移動する他ないかな。
最近は簡単な会話ならシャムも参加して楽しい旅がつづいてる。
「あー、お肉食べたい!」 突然のエルの激白!
「どうしたよエル、突然。気でも振れたか?」
ブロロ『私は食べたい気持ちはあるけど、魚も受け付けないし無理だろなぁ。』
「よし、牛を狩ろう! 野良牛ってどこに居るのかな?シャム!」
「よせよせ、腰に差してるナイフで狩る気か? 奴らはエルの何十倍は重たいぜ!それに、捌けるのか?初めは鳥にしておけよ、羽根ならむしるだけだし。飛べない鳥も居るからさ!」
「わかった!飛べない鳥を探ってよ!シャム!」
そして一行は只ひたすら走ってる、ピンキーが必死で。
飛べない鳥…ダチョウの様な鳥に追われて…エルはピンキーにしがみ付き、シャムはエルのボロローブに爪をたてて必死にしがみ付いてる。
しはらくするとダチョウらしき鳥が羽根を広げてギューギュー怒っている、やっと奴のテリトリーから脱出できた様だ。三人は息も絶え絶えに寝転がった。
ヒッヒッ ヒヒン『もう脚が動きません…』
「ぜはぁぜはぁ、ありがとう ピンキー 助かったよ。」
「それで守備はどうだ?エル!」 シャムもヒーヒー言ってる。
ジャーン「卵1個ゲットだぜ!」 エルはお腹に隠していた卵を取り出した。
「今日の晩飯だぜ!」 「『ウォー!』」
三人の努力の結晶の卵!やり遂げた想いに歓声があがる。
巣の中で1番大きな卵を選んで採取した、他より二回りは大きかったし重かった。
少し早いが水場のある野営場所を決めて食事の用意をする。三人ともウキウキで用意をはじめる、お鍋が無いので地面に穴を掘り水を溜めて焼けた石を放り込んでゆで卵にする作戦だ。
水が多過ぎたのかあまり温度が上がらず、追加の石を焼いている途中に卵の殻にヒビが、煮えたか?と思った次の瞬間、
『ピー!』 ドボン!
思わずお湯の中から掬い出した(救い出す では無い)。
手の中にはつぶらな瞳をキラキラさせてエルの手に頭を擦り付けてる。
「ラッキー!卵が肉になったぜ!」 フォークを持つシャムが喜ぶ。
「『食えねぇよ!』」 元日本人二人が同時に叫んだ。
♢♢♢ 廿四日目 名は体を…
「ピー!ピー!」 嬉しそうに鳴く雛。
「エル、そいつを黙らせてくれ、俺には肉にしか見えない。」
シャムは晩飯の卵が無くなり木の実に、翌朝の今も木の実、かなり機嫌が悪かった。
「シャム悪かったよ。機嫌を直してよ。 こんなに懐いているのに食べれないよ。 次は食べられるサイズの卵を獲ってくるからさ。」 ピンキーが蹄で土を掘りエルがミミズを探している、雛の餌を。
ブロロ『シャムも葉っぱ食べれば? 空腹だとイライラしちゃうから、ここの新芽が柔らかくて美味しいよ!』 すっかりベジタリアンなピンキー!葉っぱをムシャムシャ、蹄で土を掘り掘りと忙しない。
「…しかし良く食う雛だな。 あんまり親鳥には似てねえけど、こいつは本当にあの鳥の雛か?」
「良くぞ聴いてくれた!シャムが親鳥の気を惹いている間に五つある卵の中から一際大きく綺麗な色の重い卵を見つけた時は これだ! ってなったよ。それからは無我夢中さ!」 エルは卵奪取作戦の行動を語って聞かせた。
「エル… 同じ親鳥が産む卵の大きさはほぼ同じはず、綺麗な色ってなに?色違い色々あったのか?」呆れ顔のシャム
「こいつは真っ白で艶があっただろ、他の四つは灰色って言うか石に擬態している感じだった、大きさも同じに見えたな。」
「だろ!それだよ。じゃあこいつはなんの雛だ?」シャム
「まぁ良いよ。大きくなれば判るでしょ。 ほらっ可愛いよ! 名前付けなきゃ、ピースケ ピーモン ピー太郎 ピーロン ピーコロは早口で言うとアレと間違える ピーマンは野菜か これも一文字変えるとヤバイな パやッに替えると訴えられそうだ、うーーーーーん」
「わかったよ。 しかしエルはセンスが無ぇよピーだけじゃねーか。 そうだな グレッグ でどうだ。 おいでグレッグ!」 シャムが雛を呼ぶと、ヒョコヒョコとシャムの足元にやってくる。
「ピー!」 シャムは雛を抱き上げ、
「よし決まりだ!お前は今からグレッグだ!」
「ピー!」 グレッグは上機嫌に羽根をばたつかせる。エルは えっ ちょっと と考えたあと、まぁいいかと。「じゃあ決まりで」としめた。
エルはシャムに名付け親ってぐらいだからシャムも親だよねと迫り、今では一緒にミミズ探しも日課に追加された。
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