第2話 初めての村

♢♢♢ 村


結界を跨いで、小休憩はシャムの愚痴で大休憩になった後


「あそこに見えるのが街道さ、ここからだとスクエアシティーが近いけど、エルはタグ持って無いよな、じゃカミナリオコシムラだな。そこで薬草を換金してタグを用意しようぜ♪」 少し楽しげなシャムだった。 

*タグ=このお話では個人を特定する為の認識表


相変わらずシャムはエルに乗ったまま(頭から肩に場所は変わりはしたが)カミナラオコシムラに着いた。村の入り口には村人らしき爺さんが椅子に腰掛けていた。


エルが門に近付くと爺さんが手招きするので近寄ると、タグは有るかと聞かれる。どうやら爺さんが門番のようだ。旅人である事とタグは無い事、薬草を売りたい事を伝えて村に入れてもらう。その時、薬草は魔女の大婆が買い取りしてくれると聞き場所も教えてもらった。


カラン♪カラン♪ 魔女の家には似つかわしくない爽やかな音色のドアチャイムを鳴らして

「ここで薬草を買い取りしてくれると聞いたんですけど?」と声をかける。 こじんまりとした店舗に丸テーブルの上にはお茶とお菓子、四脚の椅子には村人と思われる婆様達が姦しく話していた。


「あら、お客さん? どの薬だい? 売りたい? 状態によっては買い取れないよ。」 この人が魔女の大婆さんだろう。エルは風呂敷から売る方の薬草束を大婆さんに はい と渡すと。


「坊主、これはどこで採れたんだい?」 大婆の問いかけにエルは状態が悪いんだと思い「ダメですか?」と呟く。 呟きが聞こえた大婆が、


「ここいらではこの上物は採れないよ、それに見合う金額は払えないんだ。この小さな村じぁ必要ないからね。 っで、どうする?坊主!」 ニヤリ顔の大婆が問いかけると判断に困ったエルはシャムに聞く。


「他に換金できる物も無いしお願いする? どうするシャム?」 

「 そうだな…頼むか‥誠実そうな婆さんだしな。」


ガタン! 大婆が立ちあがり椅子が倒れる 「しゃべる三毛猫…のシャム…」 「脱獄の…シャム…」囁かれると ガタン!ガタン!と婆様が立ちあがり椅子が続けて倒れる。


以前と言っても数十年前、ここにいる婆様達が子供の頃のお話し。

悪戯っ子の三毛猫は村人を困らせていた、直ぐに捕まえる事はできるがすぐに脱走してしまう、その場から消える様に脱走する。 中にはお仕置きで折檻する村人もいたが返り討ちに遭う、絶対。 返り討ちが引っ掻くくらいなら判る猫だし、まぁ判る。 寝ている顔に爪で引っ掻く、頬っぺたに💩さんマークや、額に (肉) マークの者もいた。流石にそれ以上の怪我は無いが、色んな意味で恐れられていた。 その三毛猫の名は シャム 。

最期は教会に渡したと婆様達は聞いていた。


囁きが聞こえたのかシャムが婆様達にニヤリとし猫の手を口の前に。


「坊っちゃん!これで勘弁しておくれ! 銀貨が二枚と大銅貨がこれだけと、こんな村じゃこれでも大金なんだ!」 大婆は手持ちのあり金を出し切った。確かに周りの婆様達も驚いてるようだ。 

「じゃあお願い」 とエルが答えて手を打った。エルは価値がわからないから。


エル達が去った後、婆様達は「シャムが来た」と言い、シャムを知らない婆様には隠居に「シャムが来た」 言えば通じるからと、大婆様はどうするのか聞かれると

「しょうがない‥王都でこの薬草束を売ってくるよ、少しは元が取れると良いけど‥」 

しょんぼりと王都に向かう準備をしていた。



後に、王都に着いた大婆はそのまま馴染みの薬屋に向かい店主に例の薬草束を買い取りして欲しいと伝える「程度もランクも申し分無いんだがうちの村じゃ需要がないんじゃ、どうじゃ? 少し値は張るが極上だろ。」 ーーー 金貨三枚と銀貨七枚の値がついた。

あの方の地で採取した薬草は、風呂敷に一緒に入っていた木の実の成分が混ざり合い薬草が霊草になりかけていた。

疲れた心を癒してから村に帰った大婆は「損はしなかったよ」、と村人に王都のお土産を振る舞った。



♢♢♢ 十六日目 愛玩妖精


薬草束を売って得たお金で一泊の宿をとり旅の疲れを癒した。


「シャム~、この村は何か居心地が良くなくてさ、 避けられているよね…シャムが。」


「エルだろ、黒目黒髪で子供だろ、子供の旅人が珍しいだけさ。」 少年エルは釈然としないまま話しを変える。


「明日には村を出るかな、見るところも無いし。どこに行けば良いんだろう?」 エルには行くあても無い、この星についても何も知らないし。


永住の地を探すか?このまま旅人として放浪するか?まぁ、どちらにしても移動はする。

移動するにはお金がいる、お金を稼ぎながらの生活になる。

異世界物の定番は冒険者!冒険者には登録はできる、だが闘う力が無い、圧倒的に。

商人としてこの世界を回る!うーん魅力的! 売る物が無いし、こんな子供と商売はしないよな。

細々と採取しながら旅人が無難かな。迫りくる外敵はシャムに任すかな!


「シャム~♪」


「なんだよ、エル。 うえっ、やな予感が…」 修行者シャムはニヤケ顔で寄ってくるエルに恐怖する。


「今後の事についてなんですけど。しばらくは採取しながら各地を回ろうかと思いまして、つきましてh.. 」


「そう!頑張って!応援してるよ!じゃ俺はこ…」

「ちょっと、十歳の身寄りの無い子供をねぇ」

「ほら、人里まで着いたら任務完了…」

「あの方はこの世界を愉しめるまで」

「いやっ長いって…」

「あの方は俺が愉しめ無かったら悲しむよなぁ」

「うわぁひでぇ…」

「卒検 だよね!」

「………」


二人の攻防は つづく 事もなく。


最期はエルが拝み倒して、シャムに泣きつき、もう暫く一緒に旅をする事になった。シャムからも旅をするにあたり、戦力を期待するな!と。


シャム曰く、ケット・シーは妖精であり戦闘種族では無い、愛玩妖精だと! 何 愛玩妖精って!?


♢♢♢ タグ


「シャム様~!」 少年エルは満面の笑顔で。


「やめろエル! マジで!  ここで暮すって手もあるぜ。」 修行者シャムはあの方の元に帰りたかったが、エルも放っておけなくなっていた。

「ほら、今日はタグを申請しようぜ、あると街に入りやすいから。 あの魔女の大婆とこに行こう。」 


〜魔女の大婆の店〜


「(暫く留守にします。店主。)はり紙だとよ。 困ったなぁ。村長あたりに聞くか?」


「タグってどこで貰えるの?」 少年エルはシャムに聞くが、


「俺も知らないよ。 おっ魔女の店に居た婆さんじゃないか、聞こうぜ♪」


「あのーすいません、ちょっとお聞きしたいのですが、よろしいですか?」 エルは丁寧にお婆さんに問いかける。


「えっ、な なんでしょう?  ーーー 」


魔女の大婆様は急ぎで王都に向かったので暫く帰って来ないそうだ、それとタグは有料なので村民皆んなが持っている訳でもないらしい。このお婆さんも持っていないとの事だ。村同士なら要らないし、街や王都、他国に行く人が申請するとの事。そして受付は村長が代理で受け付けて王都か街の役所で登録するそうだ。


「魔女の大婆様が王都に行くなら一緒に行けばよかったね。」 エルは暢気に呟くが、横で聞いてたお婆さんは(あんたの肩に乗ってるケット・シーが原因だよ)とは言えない。


村長宅をきいて、シャム&エルは早速向かう。


周りの家より二回りほど大きな家が村長宅らしいので早速ドアノッカーを鳴らす。コンコンコン。 


「はーい、どなたかしらー?」 ちょっと間延びした女性の返事があった。


「すいません、タグの発行を申請したいのですが? あっ、魔女のお店に居た方だ。」 エルは知った顔を見てなんとなく安心した。


「(げっ、ヤバイ旅人じゃない!)ちょっとお待ち下さいね、主人を呼んできますので。」 村長夫人は老体に鞭打ち今季最速で村長である主人を呼びに行った。


「あなたーあなた! 例のシャムとヤバイ旅人が来たわ! タグを寄越せですって!」 

「まぁ落ちつきなさい

…あとの対応はやっておくからお茶の用意を頼む」と、玄関に向かう男性の声がきこえる。



「シャム、薄っすら聞こえたね、ヤバイ旅人らしいよ。」エルはしょんぼりしているし、シャムは(クックックッ)と笑いを堪えてる。 


「やあ、お待たせ。タグの申請かのう? 初めて見る顔じゃの、この村で申請とは訳ありか?」 村長もちょっと身構えている。


すると、肩からシャムが降り立ち、 

「まぁ、訳ありかと聞かれたら、訳ありだ! どうする聞くか聞かぬか? さあ! 

断わるのも自由だ  知っているだろ、ケット・シーに武力は無いさ 俺たち妖精は遣いさ!  誰の遣いだろうねぇ   神か  悪魔か  断っても良いんだぜ!  抗うなら  」


「(シャム!シャム!興に乗ってるところ悪いんだけどさ、ただの申請だよね?)」 


「(おっと、そうだった、つい調子にのったぜ! ほら、村長が冷や汗かいてるぜ! 俺たちはヤバイ旅人だからなヤバく行こうぜ!)」


「決まったか、そ ん ち ょ !」


「村 村だけはどうか 」 項垂れている村長。


「タグの申請書はいただけますか?」 エルはゆっくりと丁寧に話した。


「はっ!タグの申請? 神? 悪魔? へっ?」 村長は狐に化かされた様な顔で唖然とした。


そんな中、村長夫人がお茶を出してくれてひと段落し、誤解も解けて本来の用件であるダグの申請を行った。


「それで保護者はどうしましょう? 」


「それは俺の役目さ!」 と、シャムが何処からともなくステッキを取りだした。空中にステッキで描いている。 `ほいっ`とすると、サインが 

修行者(見習い)シャム 

と浮きでた、シャムは隣で転けていた。(見習い)がショックだったようだ。

エルはシャムに 「次があるって! 卒検!」 慰めていた。



妖精は見える人が限られる。見える人は気になり意識が集中してしまいのめり込む。 

シャムは興にのると芝居がかる話し方になり、聞き手の者はのめり込むと暗示に掛かりやすくなる。 シャムは意図せず村長を暗示にかけていた。

あの方の意思の為に今はステルスを解いてエルと共に旅をしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る