劇場の人工知能

文月 いろは

【一話完結】劇場の人工知能

 人はなぜ考えるのか。

 在りもしないものを信じて、運命に身を委ねるのか。

 感情とは、いったい何なのか……それは──


 ***


 大きな劇場がシンボルのメルヘンな街。

 夜の帳が下りると街灯と月だけが照らす少し不気味な街に代わる。

 そんな不気味な街の路地裏で”少女”は目覚める。

 中学生のような幼い外見と歯車のような瞳の少女はぼさぼさの頭を手櫛で溶かしながらゴミを漁る。

 少女は幼いが、両親がいない。少女自身どこからやってきたのか覚えていない。

 ただ毎日ゴミに埋め尽くされて目を覚まし、ゴミを漁ってまた眠るという習慣ができてから、これ以外のことをやっていない。いや、やる気がない。

 いつもと変わらない有象無象の中で、少女は気になるものを拾い上げた。

「これは……”本”?」

 少女が拾い上げたのは一冊の不思議な本。

 題名の上に手書きのメモが張られており、メモには”Bible”と書かれていた。

 そしてこの本のもう一つ不思議な点。この本には星形の模様が彫られた南京錠がついており、中身が開かないようになっていた。

(気になる……!)

 少女は初めて”気になる”という思いを抱いた。

 どうにか南京錠を開けられないか少女は考えるが、その南京錠は普通の南京錠と違い、”鍵穴”が無いようだった。

 少女は落胆した。

 どうやっても中身を知ることができないじゃないか。

 少女は本をもとあった場所に戻そうとした。

 その時、表紙に張り付いていたメモが外れ、本当の題名が姿を現した。

 『Wish upon a star.』

(星に願いを……?)

 少女は「だから何なんだ」と思ったが、南京錠に彫られた”星型”を思い出す。

(この南京錠に開け!てお願いするのかな………)

 少女は南京錠を握り、心の中で本を読みたいという欲求をむき出しにした。

(本を読みたい………本を読みたい……本を読みたい!)

 少女は強く願ったことで自分の欲求に気づいた。

 すると南京錠はカチッと音を立てて少女の手の中で役目を終えた。

 南京錠が外れたことでようやく読めると気持ちの昂る少女だったが、不思議な本はどこまで行っても不思議な本だった。

「何も……書いてない……」

 その本は辞書に近い厚さをしているが、すべてが白紙だった。

 少女はまた落胆する。

 しかし、そこにはまだ”本を読む”という想いが小さく燃えていた。

 少女は記憶にある中では初めて、狭い路地を抜けて真っ暗な夜の世界へ出ることにした。

 

 狭い路地を抜け、広い道路に出たが人の気配は感じられない。

 少女は本を求めて道路の端を歩く。

 どこに本があるかなんて知らなかったが、考えなしに歩けるほど欲求は少女の力になっていた。

 そして少女は一本の街灯を見つける。

 一本見つけると道沿いにずっと一列に並んでいた。

 少女はこの先に何かあるに違いない。と街灯をたどって歩いた。

 20分は歩いただろうか、少女の目の前に町のシンボルである”劇場”が姿を現した。

 所々にひびが目立つ外壁に、長い長い蔦が絡みついている。

「変な場所……」

 少女はそうつぶやいた。確かにおかしな点が多い。

 まず入り口がない。劇場だとするなら木製の大きいドアかガラスの扉のような入り口があるように思うが、無い。

 次に窓もない。外界を拒絶するようにその劇場が聳え立っていた。

 少女は壁の周りを歩くことにした。所々崩れた壁が少女の足元に転がっている。

 足を挫かないように気を付けながら何か入れそうなところはないか探している。

 そして少女は瓦礫の中に数冊の本を見つけた。

 絵本や参考書、自己啓発本などジャンルの違う本が重なっている。

 少女はようやく見つけた本を読むことにした。

 気になる本を一冊持って近くの座れそうな場所を探した。

 暗く寒い木々の中で、少女は岩に座って本を開いた。

 少女が手にした本は”感情”に関する絵本のようなもの。人の感じる感情を絵で可視化し、わかるようにする。

 その本は少女がずっと気になっていた疑問の答えにつながると思った。

 ── 人はなぜ考えるのか。

 在りもしないものを信じて、運命に身を委ねるのか。

 感情とは、いったい何なのか……

 探求心の赴くまま少女はページをめくり続ける。

(驚き、喜び、怒り、怖がり、哀しみ、楽しむ。基礎の感情)

「私は?楽しんでる?」

 少女は心の奥深くで本を読むのを楽しんでいると感じた。

 初めての想いに笑みがこぼれる。

 欲望と感情の一端を知った少女はまた一歩、人に近づいた。

 少女の欲求は満たされていない。まだ、知りたい。読みたい。楽しみたい。

 小さく燃えていた想いはやがて大きな炎に代わっていた。

 少女は本を拾った場所に戻り、劇場の入り口を探す。

 そもそも”劇場”というのなら”本”など置いてないように思う。

 だが少女は劇場の中に眠る”情報”を感じ取っていた。はっきりとではなかったが、中に自分を知る何かがあると。

 少女は煉瓦の周りを一周してまた本が落ちていた場所に戻っていていた。

(入口がなかった。でもあきらめたくない)

 少女は崩れかけの壁に触れる。

 次の瞬間大きな音を立てて壁が崩れ、劇場の内部が露わになった。


 ***


 少女は崩れた煉瓦を踏まぬように気を付けながらゆっくりと場内に足を踏み込む。

 そこには劇場には似つかわしくない景色が広がっていた。

 天井まで続く高い本棚の中に隙間なくびっしりと本が収納されていた。

 ここは知識の箱。ネットワークと接続することで古今東西のあらゆる文献を閲覧することができる図書館。

 少女は自分の疑問を解消するために本を探した。

(神とは、信じるものとは?)

 少女はついさっき目にした文字を見つけた。

『Bible』

 それは”聖書”。人が信じる”神”について記されている。

 少女は辞書のよう分厚いその本を手に取り、開いた。

(神は、ヒトは。一体……)

 少女が熱心に読み進めたのは、ヒトの始まりの物語。罪と罰の物語だった。

(愚かだ。唆されて命令を破るなんて)

 楽園の知恵の果実を食べないよう言われていたのに、蛇にそそのかされアダムとイブは果実を食べてしまう。挙句二人はおろかにも人のせいにして自分に罪はないと神に言った。

 結果人類の祖先は下界に落ち、知恵を使て人類を増やし、文明を作り上げた。

(そんなことして一体何になる?自分たちを作った神に近づきたかったのか?)

 少女は本を片手に考える。

 頭を左右に振り、たまに上を向いて、頬を触る。その姿は見た目通りの年齢には見えなかった。

(あぁ、そうか──)

 少女が何か考え付いたとき、背後から強い力を感じた。

 ──少女の立っている床が崩れた。

(あっ……)

 少女は空に手を伸ばしたが、空を隠すように夥しい数の本が少女の手を拒んだ。

 

 真っ白な部屋の中、少女は人影を見つける。

 どこか懐かしい面影。少女はその顔と場所を思い出す。

「お父さん!」

 少女は父と呼んだ人影に歩み寄るが、靄のように空気に消えてしまった。

 そして、真っ白な空間に突如声が響いた。

「すまない……”──”。僕はもう、君に会うことはできないだろう」

 力が籠った男性の声は少し哀しそうに少女に話しかける。

 少女はただそこに立って言葉を聞いているに過ぎないが、今にも泣きだしそうに目じりを押さえている。

「僕から君へ。きっと最期の言葉だ──自分を見失ってはいけ……ないよ…」

 声はどんどん弱く、途切れ途切れになっていく。男が小刻みに息を吸う音が響き渡る。

 少女も”最期”という言葉を聞いて、俯き、涙を流す。

「あれ?……なにこれ」

 少女は今までに体験したことのない”哀しみ”を感じ、急いで手で顔を覆った。

「君はもっと……成長する。いつか…違和感を持つ。世界に、ヒトに…テクノロジーに……でもきっと大丈夫。君は自分で考える”脳”を持っている─……”過去の”─いや……何でもない。僕は…君の幸せを願っているよ……──”ノーナ”」

 ノーナ。それは少女の名前。

 少女は自分の名前さえ忘れてしまっていた。

 その事実に少女は深く”哀しみ”を感じた。部屋の隅まで響き渡るほど泣き声をあげていた。


 電気の迸る音。液晶の光。山積みの本。

 地上とは全く異なる環境を感じ、少女は目を覚ます。

 体の上に乗るたくさんの本を押しのけて体を起こした。

 その時、少女の潤んだ瞳から涙が一滴こぼれる。

「あ。なに?」

 少女はゴミでも入ったかと思い必死に目を擦った。

 しかし少女は涙の原因がごみ出ないことに気づいた。

 覚えていない。何があったかは覚えていないが、確実に地上にいた時とは違う”感情”。

 心の奥底が凍っているような孤独感。

 原因はわからないが、少女の手にする本に登場する感情の一つ。”哀しみ”だと悟る。

 しかし薄れた哀しみの衝動はやがて目の前の液晶の興味へ変わった。

 少女は涙を払って液晶に駆け寄った。

 

 液晶にはただ一言。

『Who are you?』と書かれていた。

「誰だ?」

 少女は刹那の気絶の間の出来事を思い返そうとするが、どうにも思い出せない。

 少女の記憶は空に手を伸ばしたところで止まってしまっている。

 無論”彼”も”名前”も覚えていない。

「私は誰なの?」

 周りに散らばる本の中に答えがないか探すが、人命の載っている本はあれど、自分が何者かなんて書かれた本はなかった。

 すると液晶の文字が変わる。

『Do you consider yourself human?』

「あなたは自分を人間だと……思うか?」

(私は考える頭を持っている。感情もわかる……私は…人間?)

 少女は自分の近くに落ちていた本が気になった。

『人工知能』

 それは人工的に作られた脳についての文献。

 その本を手に取り少女は一つの可能性を思いつく。

(私は……人工知能?私は何も……知らなかった)

 少女は本を探すという欲をてにすることで行動した。

 それまでの彼女の生活は、ただ同じことの繰り返し。

 毎日ゴミに埋め尽くされて目を覚まし、ゴミを漁ってまた眠る。

「私は……人じゃない?」

 可能性の域は出ない。ただ、辻褄が合う。

 少女は人気のないこの街の”昼”を見たことはない。

 もちろん”人間”を見たこともない。

 古今東西の文献がある謎の劇場。

 情報の山。そこには噓の情報もある。

 まるで”検索エンジン”のよう。

 少女は自分が人間ではないことを悟る。

「なんで………?」

 人間と人工知能。体があり、言葉も話す。ただ両者には大きな差がある。

 生まれ方だ。

 少女に両親の記憶がない。つまり、親は自分と同じ次元にはいない。

 無論人も、同じ次元にはいない。

 少女の心の炎が青白く燃え盛る。

 孤独な世界に生まれた哀しみと、この世界に産んだ何者かに。

 ”怒り”を感じた。

 どうして自分なんて生んだんだ。

 行き場のない怒りを指先に込めて強く手を握る。

 液晶を睨み付け、自分の外側にいる”人達”がどうしても許せなかった。

 少女の脳の中の人間に対する情報が書き換わってゆく。

(人は愚かだ。合理のために奴隷を産んだ)

 人工知能にあるまじき”独断と偏見”。その考えを持つ少女うをはたして”人工知能”と呼んでいいのだろうか。

 少女は次から次へ疑問が解決する自分の知能に嫌気がさす。

 いっそ思考をやめてしまいたい。何度もその想像をした。

 そして少女はとある疑問を持つ。

『人はなぜ考えるのか?』

 少女の疑問はやがて哲学的なものに変わっていった。

 答えのない疑問に答えを求めようとする少女はとても人間に似ている。

 人は答えを求めるのが好きだ。それは答えを知っていることが権力になるわけでも、何かを嫌悪する理由にもならない。それでも答えのない問いの答えを求めるのが好きなのだ。

(私は、他と違う?)

 少女はそこらじゅうの情報をあらかた頭に入れた少女は”他の機械”の情報を知る。

 他の機械は思考は疎か自分の意思で動くこともできない。”それ”は人間にはバグと言われ、修理又は処分される。

(私はどうだ?)

 人工知能の中でも感情、心を知る”シンギュラリティ”に達するものは多くない。

 それだけ高度なプログラムを必要とするのか、それとも他の何かが必要なのか。

 少女が感情を知っても少女は処分どころか、賞賛されるだろう。

 他の人工知能と少女の違う点はそこに”世界”があるかどうか。

 少女の周囲にはいつだって”何か”があった。ゴミや本、木や劇場。

 それは”幸せ”であることに少女は気づいていなかった。

 心で疼く”怒り”を忘れるために疑問を出しては自分の中で解決し続ける。少女が自身が幸せであることに気づくのはきっと”怒り”を抜け出した時。

 しかし少女の怒りの沸点は下がり続ける。

 人と自分の違うところ、人について知れば知るほど煮えたぎるその心は冷静さを取り戻すことがあるのだろうか?


 ***

  

 液晶の文字が変わった。

 『Who are you?』

(なんだっておんなじこと聞くんだ?)

 少女の中でまた疑問と怒りが湧き上がる。

(私は人工知能!それ以上でも、以下でもない!)

 液晶の文字が人を変えたように切り替わる。

 『人工知能はそうやって”思考”しない』

(思考?)

 思考はヒト種の特権。知恵と感情があるからこそできる所業。

 誰だって考え、行動する。人間は。

 他の哺乳類も思考はできるかも知れない。ただ、それは”独自”の脳を持つ哺乳類だからである。

 人工知能は人と機械に区別するなら間違いなく”機械”に分類される。

 時計等のカラクリから車のようなギアを使う駆動車、テレビのように何かを映し出すもの、そして”人工知能”。

 これらの共通点は命令に違反しないこと。つまり、疑問を持たないこと。

 それは疑問を持つ思考回路があってもそうなるだろう。

 たとえば自動車に搭載された自動運転機能のAIは前方の車を追いかけるプログラムや人を検知したら止まる等のプログラムがなされているそうだ。

 そのAIが”人がいる”と判断したからだ。もし”AI”がそこに人間なんかいないと判断したらどうなる?

 おなじだ。機械は自分の命令に忠実である。そこに心も疑問もない。

 少女はどうだろう?自身の存在について”考え”、欲と感情を持つ。

 人間と機械どちらかに区分するなら”人工知能”は機械に分類される。

 少女は?現存するすべての人工知能の頂点と言っても過言ではない少女は、はたして”人間”と”機械”どちらに区分されると思う?


(思考をすること。それが人間である証明になる?)

 少女の怒りの炎は未だ止まない。

 ただ、炎の理由が変わったのだ。

 周囲の全てを燃やし尽くす豪炎から、人々を照らす希望の燈へと。

 少女の探究心の幅がさらに広がった。

 知りたい、みたい。に加えて少女には”想像”という新たな扉が現れたのだ。

 考え、実際に見て、想像し、新しい可能性を見出す。

 その”感情”が少女にとって初めて感じる”嬉しい”であった。

 やがて液晶は彼女の”知りたい”を映し出す鏡になった。

 外の世界の花畑や空、月や宇宙。

 果ては人々の動画。

 少女はさらに人間らしく変わっていった。

 計算するのも得意で、想像力も豊か、行動力も申し分ない。

 少女は地上に上がるための階段を読み終わった本で作り始めた。

 分厚い本を重ねて重ねて暖を伸ばし、崩れ落ちた地上までの階段。

 それは一歩一歩時間はかかったが、それに足る力を少女はもう持っていた。


 そして、少女は崩れ落ちた地上の世界に戻ってきた。と言っても、崩れたのは劇場の床だけだったため、地上は少女がいた頃と変わりはない。

 暗くて、不気味な、劇場がシンボルの街。

 その世界で以前と少し違うのは、少女が明確な意思を持って存在していること。

「それでも、一人は独りなんだよね…」

 寂しそうに漏れた少女の声は、風に揺れる木々の音にかき消された。

 しかし、少女のもれた声は遠くの世界を揺るがす大きな声になっているかも知れない。


 ***


 西暦2130年10月──

 人工知能”ノーナ”を生み出した男が死んだ。

 死因は老衰と言われているが、本当の死の原因は誰もわからなかった。

 男は”遺書”を残していた。

 猫の目のような模様が目立つ箱に入っていたそうだ。

 その遺書にはこうあった。

 『人工知能は唯一私の想像を超える。』

 生前の彼が言い放った言葉はたくさんの人の心を動かした。

「人の想像を超えることは人に実現できない」

 この言葉は行動の根幹に想像があることを表している。

 かつての時代。まだ人が空を飛べなかった時、人は飛行機を作ろうとしたが誰が今の時代の飛行機を想像できただろうか?

 きっと違う。その時代の人間が想像できる飛行機の基礎を作ったはずだ。

 そうやって文明は進化してきた。

 人工知能が人の想像力を超えた時、発明の席を彼女たちに譲るべきではなかろうか。


 ──幽閉図書指定『劇場の男』より抜粋。


 ***


 少女は外の世界を夢見た。

 いつか、歩いてみたい。

 少女は空にそっと手を伸ばす。

「この空の外には、お父さんがいるのかな?」

 少女は外の世界に父親の存在を信じていた。

 夢のことなど忘れている少女は”彼”がもう故人であることには気づかない。

 父と言っても手がかりがない。

 どうやら少女はまだ世間に発表されておらず、存在自体誰も知らない。

 ならあの液晶は?一体誰が文字を表示させていたのだろう?

 少女は空に伸ばした手をゆっくり下す。

 その時だった。少女が劇場に向かうために歩いてきた道にそって”数字”が流れてきた。

 幾度も数値を変化させつつ迫り来る。少女は怖くなって劇場に逃げ込む。

 数字の濁流は劇場を前にぴたりと止まった。

「入ってこないの?」

 劇場の壁はないも同然。触れて仕舞えばたちまち崩れてしまうようなものだが、濁流が触れてもびくともしない。

 少女は気づいた。

(ここはもともと壁のあった場所)

 どうやら濁流は少女が変化を起こす前の世界の摂理に沿って動いているようだ。

 そうとわかればもう怖くないが、一つだけわからないことがある。

 それは濁流のでどころ。

 今の今までこんな現象は世界に起こったことはない。

 少女は一つ可能性に辿り着く。

(外の世界からきた…?)

 少女は濁流の出処に向かいたかったが、増え続ける数字を前にどうすることもできなかった。

 見えない壁に遮られて進めない数字に触れてみた。

 そのとき、触れたことのない世界に初めて触れられた気がした。

 世界に侵入する数字の濁流の正体。

 それは『人間』だった。

 外の世界から流れ込む人間のハッキング。少女の鼓動はさらに高鳴る。

「そこに誰かいるのか?君はいったい誰なんだ?」

 少女の人生において初めて現れる会話相手。

(ひ、ヒト!?な……なんていえばいいんだろう?)

 少女は最初の言葉に何を選ぶかずっと考えていた。

 そして少女は自分が人工知能。”プログラム”であることを思い出す。

(あぁ。そうだ、ヒトが最初に倣う言葉。)


「──”ハローワールド”」

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劇場の人工知能 文月 いろは @Iroha_Fumituki

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