第8話
訓練を開始してから1週間後…
「できた…」
僕の手の中には安定した魔力弾があった
(魔力弾すら作るのに一週間か。やっぱり厷と比べて才能がないんだな)
少し離れたところを見ると、すでに厷が師匠に教わって魔法陣を起動していた
「しかし、この一週間は大変だったな)」
◇◇◇
遡ること一週間前
訓練場で魔力を開放してしまったことで何人ものの人が倒れてしまった次の日
セリナさんにこの世界の成り立ちなどを教えてもらっていると、突然ポティスさんが部屋の中に現れて手を掴んだと思ったら、昨日の訓練場に移動していた。昨日の惨状などなかったかのように綺麗だ
そして、ポティスさんの足元に魔法陣が現れたと思ったら、また現れたときには厷が首を掴まれていた
「さあ、今日から本格的に君たち魔法を教えることになったからよろしくね~。とりあえず私のことは師匠と言うように」
「えーと?つまりポティスさんが魔法を教えてくれるってことでいいんすか?」
厷がそう聞くとポティスさんは、ん?と笑顔を向けた
(これが笑顔の圧力か)
「こほん。とりあえずカイナは昨日と同じように魔法陣構築の練習。ソータはちょっとこっちにおいで」
と言われたので、ポティスさん改め師匠についていく
そしてついていった先には箱を持っている人がいた
「ソータ。君が昨日魔力を暴走させてしまった理由は、君の制御力に対して魔力量が膨大すぎることで起きたっていうのはいいかい?だから制御力を上げなければ今後も魔力を暴走させる危険性もあるんだよ~。だけど制御力を上げるには魔法陣を起動させなければならない。そして魔法陣を起動しようとしたら暴走しちゃう。これじゃあ訓練なんてできたものじゃない」
そうだろ?と僕を見てくる
内容自体は理解できたし、その危険性も昨日体験したからわかる
(けれどそれって、僕は魔法陣を起動できないから魔法を使えないってことじゃないか)
長年の夢である魔法というものを使える世界に来たのに魔法を使えない。そのこと絶望してしまったような顔をしていると、師匠は苦笑いをしながらこう言った
「そんな顔をしないでよ~。確かに今のままだと魔法陣の起動は危険すぎる。けれどそんな君にこれを渡そう」
と言いながら箱を開ける
その中には幾何学的な模様をした腕輪が入っていた
「これの名前は『愚者の束縛』と言う。私が昔作ったものの1つでその性能は身につけた者の魔力を制限する。副作用として…」
魔力を制限する。他に何か言っていた気がするが耳に入らなかった
その言葉で師匠が何をしようとしているか分かったからだ
「これをつけるかどうかはソータ次第だけどどうする?」
僕は一瞬も迷わずつけた
「君は迷わないんだね…」
「なんか言いました?」
「いや~何も言ってないよ~。じゃあとりあえず魔力弾を作る練習をしようか」
それからの毎日はかなり濃密な日々となった
魔力を暴走させる危険性がなくなったことで常に魔力弾の作る訓練ができるようになった。
セリナさんからこの世界について学ぶ時も、風呂に入る時も、食事中にもいたるところで魔力弾を意識して生活した
3日目には、たまに魔力弾ができる時もあったが安定してないせいで1分も維持できなかった
5日目には、安定した魔力弾ができる確率も上がり、ほとんど意識せずに魔力弾を維持できるようになった
◇◇◇
そして現在に戻る
「やっぱり才能ないのかな…」
と独り言を聞いたのか近くを通っていた師匠が
「あまりカイナと比べないほうがいいよ~。あれは世界でも片手で数えるほどしかいないレベルの才能だからね~。ソータも普通よりかは才能あるよ」
師匠の話によると普通だと魔力弾を安定させるのに1か月はかかるのだという
(けど、厷に追いつきたいとは思っちゃうんだよね)
自分が才能あるほうだとしてもそれは厷ほどではない。だからさらに努力をして追いつくしかないだろう
顔をたたいて気合を入れなおすと師匠が紙を渡してきた
「ソータも魔法強度がかなり上がってきたことだしそろそろ魔法陣の起動練習をしないかい?」
「やりたいです!」
ついに魔法を使えるということで興奮してしまったのを分かったのか師匠は笑って紙を手渡してくれた
「これは給水の魔法陣だよ~。これの通りに魔力よ出ろ~って念じてみて」
渡された紙に書いてある通りに魔力を放出する
魔力弾とは違い形を整えるのに苦労はしたが、少し時間をかけて作るとかなり安定した魔法陣を作ることができた
それをみた師匠が
「魔法陣を起動させるときに名前を言うと安定しやすいよ~」
とアドバイスをくれたので、アドバイスに従って
「給水」
というと魔法陣から水がちょろちょろと出てきた
想像していた魔法と違ったから少しがっかりした
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