第40話 【リダス視点】
Side リダス
~飛び込む前~
「俺はどうしたらいいんだろう」
リダスは誰にも相手にされていなかった。
防衛作戦に参加して成果を上げれば高く評価されると聞いて飛びこむように参加したのだが、特にやることはなかった。
「全部あいつのせいだ、あのタツヤっておっさんのせいだ」
そこでルインが虚空から現れてきた。
「う、うわっ!」
その場に尻もちをついたリダス。
ルインは笑った。
「どうしまちたか?そんなにビビって、なかわいいでちゅねぇ」
「お前と会ってから嫌なことばっかなんだ。そりゃビビりもするさ」
ルインは覗き込むようにしてリダスを見ていた。
「いいこと考えまちたよ」
「いいこと?」
「この作戦で活躍したいんでちゅよね?」
「あぁ」
コクンと頷くリダス。
「活躍しましょうよ」
「どうやって?」
ルインは笑顔を作った。
「ここから飛び込むんですよ。谷の底に。そこではたくさんのモンスターがうじゃうじゃいまちゅ。それをバサバサ倒すんでちゅよ。そうすればあなたは活躍できまちゅ。直接リッチを狙ってもいいし」
「とは言ってもよ。だいぶ深いだろ?ここ」
「大丈夫でちゅ。足場がありまちゅからそれを伝っていけばいいんでちゅよ」
ゴクリ。
唾を飲み込むリダス。
それから意を決して谷を覗き込んだ。
「ここをかよ」
「やるなら早くした方がいいでちゅよ?」
ルインはタツヤの方を指さした。
「あの人も同じこと考えてまちゅから。手柄全部奪われちゃいまちゅよ?」
「うぐっ……」
言い返す言葉もないリダス。
畳み掛けるようにルインが言った。
「早くやらないと、先越されちゃいまちゅよ?」
ルインは1つの方向に目をやった。
「それに、そろそろドラゴンがきまちゅ。全部ドラゴンに奪われまちゅよ?」
「ドラゴンだと?!」
「はい。このままだとタツヤさんに奪われなくてもドラゴンに全部奪われまちゅよ。功績も何もかも」
ルインは誘導するように言った。
「今ならまだ間に合いまちゅよ?」
リダスは剣を取った。
「分かったよ。行ってやる!ぶっ殺してやる!」
リダスはそう言って下へ降りていく。
下まで降りるとそこにはおびただしい数のモンスターがいた。
その数は数えられないほどの量。
「とりあえず狙いはあのリッチってやつだ!」
リダスはリッチを狙うことにした。
雑魚モンスターを無視しようとしたが。
その時横から雑魚モンスター、ゴブリンの手が伸びてきた。
足を掴まれて前に倒れ込む。
「がっ!」
地面に頭を打ち付けた。
「どけよ!」
ブン!
剣を振ってみたがゴブリンはリダスから手を離さない。
何度振ってもびくともしない。
「くすくす。必死でちゅね〜」
「見てないで助けろよ!」
リダスの悲痛の叫び。
でもルインは顔色ひとつかえない。
「なんで、あたちが助けないといけないんでちゅか?」
「は?」
リダスは思い出していた。
この女が味方でもなんでもないことを。
目の前で人間が死にそうでもいっさい手を差し伸べるようなやつじゃない事を。
「言いましたよね?元々あたちはあなたに破滅をお届けにきただけだって」
「まさか……お前」
「えぇ、はい。ここであなたが死ぬように誘導しただけでちゅよ?」
チラッ。
リダスは周りにいた雑魚モンスター達に目をやった。
「ギィ」
「ギギッ」
ゴブリンが周囲に集まってくる。
ゴブリンは棍棒や斧などを持っていた。
ゴブリン達は武器を振り上げた。
「た、助けて……」
ガン!
ザクッ!
リダスに向かって武器が振り下ろされていた。
「んぎゃぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!」
その叫び声を聞いてどんどんゴブリンたちが集まってくる。
「ギィ」
「ギギ」
更にどんどんとリダスを攻撃していく。
だけど、
「いてぇ……でも、まだ生きてる……」
リダスはなんとかゴブリンの包囲を抜けてルインを見た。
「おい、雑魚共。あの女を狙えよ。なんで俺だけなんだよぉぉぉぉぉ」
リダスはルインの近くへ逃げていった。
ルインを盾にするように後ろに回ったが、ゴブリンたちはそれでもルインを見ない。
(こいつら、まるで視界に入っていないような感じだ……モンスター共も見えてねぇのか?)
そして、スカッ。
一匹のゴブリンがルインをすり抜けた。
がん!
棍棒で殴られてリダスはふらついた。
その場に倒れた。
意識が乱れてきていて立っていられなくなったのだ。
その後もゴブリン達によってどんどんと攻撃を加えられるリダス。
やがて意識が薄くなっていく中見えたのは上空を飛んできていた黒いドラゴンだった。
それから最後に見えたのはルインが自分を見下ろしている姿だった。
「破滅おめでとうございまちゅ」
その時ドラゴンの口から炎が放たれた。
リダスは全身を焼かれながら苦痛に悶えながら意識を失っていった。
そして、最終的に死んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます