第34話 おっさん、休日を満喫する
拠点の設営も終わったことなので俺は久々の休日を満喫していた。
とは言え特段どこかに行ったりとか特別なものを食べたりとかってことはないけど。
拠点の設営から2日目くらいである。
次に外に出ることになるのはまぁ、防衛作戦が始まってからだと思う。
それがえーっと、2日後くらいと聞いているのでまぁそれまでは暇なのだ。
ちなみにギルドマスターからは報酬を払うので防衛作戦にも参加してくれと言われている。
今はマシロと街を歩いてデート(?)のようなことをしている。
俺おっさんだし非モテだし、これであってるのか分かんないけど。
「それにしても驚きましたよタツヤさんがギルドマスターから作戦への参加を要請されるなんて」
「俺も驚いたよ。拠点設営して終わりかなーって思ってたからさ」
「非常に珍しいことなんですよギルドマスターから頼まれるなんて。私も今回初めて見ました!」
(それくらい珍しいことなんだなぁ)
正直意外に思っている。
初めはEランクだの無能だのとバカにされていた俺がギルドマスターから依頼を受けるくらいになるなんてなぁって。
と、だめだな。
今は一応デート中なわけだし、こういうのは後で考えることにしよう。
マシロが俺の顔を見てくる。
「どうしたの?」
「そういえば近くに商人が来ているみたいですよ。なんでも珍しい国のフルーツを販売しにきているみたいです」
「フルーツ?」
「はい。食べてみませんか?」
そう聞いてくるマシロ。
どうやら食べたいらしい。
「そうだな。行ってみようか」
俺はマシロについて行くことにした。
しかし、こういうことならばデートスポットくらい調べるべきだったか?
心の中で反省しているとマシロは広場の方に歩いて言ってた。
で、広場には行列ができてた。
一台の馬車の周りにはたくさんの人が集まっているように見える。
「あの馬車みたいですよ、フルーツ売りに来てるの」
「へぇ。あれが、ねぇ?」
その時だった。
「ちょっと!おい!盗むなって!お前金払ってないだろ!ギルドの職員!お前ちょっと品物見といて!仕事だろ?!」
馬車の方から妙に聞き覚えのある声がしてきた。
(この声……?)
疑問に思っていたら人混みの中から一人の男が果物を抱えて出てくるのが見えた。
どうやらアレが盗人(?)らしい。
泥棒じゃなければあんなに急がないだろうしなぁ。
俺の横を通っていこうとした泥棒の足を引っ掛けた。
「あだっ!」
転んだので背中側に乗って拘束しておく。
「盗みはダメなんじゃないか?」
「んひぃ〜」
そうやって拘束しているとうしろから女の声。
「捕まえてくれてありがと〜」
振り返るとそこにいたのはリッカだった。
「あれ?タツヤ?」
俺もリッカも目を何度もぱちぱちさせて見合っていた。
◇
盗難した男を衛兵に引き渡して俺はリッカの馬車の方に寄った。
どうやらフルーツというのはリッカが持ってきたものらしい。
リッカはフルーツを販売しながら俺と会話をしてくれる。
「いやぁ、それにしてもこの街にタツヤがいるなんて驚いたなぁ」
「俺もだよ。まさかここにリッカがいるなんて思わなかったや」
そんな会話をしながら俺とマシロは客からは見えない位置でフルーツを分け合って食べてた。
「おいしーですーこれ」
「ほんとだな。美味いなぁこれ」
俺たちが食べてるフルーツだが、【アイスメロン】という珍しいフルーツだそうだ。
なんでも熱に弱くてすぐに腐るらしいのだが、俺がこの前作った道の短縮効果により、色んな地方に販売できるようになったらしい。
で、リッカはこのフルーツを今この街に売りに来ているらしい。
金稼ぎにやってきたって訳らしいけど。
ギルドマスターはまだこの場にいてリッカに話しかける。
「リッカさん、さきほどの話は覚えてますか?」
「えーっと、何の話だっけ?」
「防衛作戦のとき使う物資を拠点に運んで欲しいんですよ」
どうやら取引の話をしていたらしいがリッカは頷いた。
「うん、いいよ」
「さっきは悩んでませんでしたっけ?」
リッカは俺を一瞬だけ見た。
「この街にはさ、タツヤがいるし。タツヤも参加するんでしょ?私タツヤには尽くしたいと思ってるから運ぶよ♡」
ギルドマスターが俺を見て頭を下げてきた。
「ありがとうございますタツヤさん!」
何もしていないのに感謝されてしまった。
だが感謝されて悪い気はしないわけだ。
ギルドマスターがリッカに聞いていた。
「これから作戦についての話をしても?」
「いいよ」
リッカは荷台の扉を閉めた。
「ちょうどフルーツも売り切れたしね。もう腐るようなものもないし、話聞くよ」
「では、ギルドまで移動をお願い出来ますか?詳しい説明を行いたいのですが」
こうして俺たちはリッカを連れてギルドに向かう事になったのだが。
リッカが俺に聞いてくる。
「なに?その指輪」
「結婚したんだよ。この子と」
マシロはリッカを見てほほえんでた。
「へぇ、結婚、結婚、ねぇ」
ぼけーっとしてるリッカ。
「どうしたの?リッカ?」
「私こう見えて20超えてるんだけど彼氏すらいたことないんだよ?先越されてない?」
じーって自分の胸元を見るリッカ。
ちなみにぺちゃってる。
身長も低いし幼い顔してるし、いわゆる合法ロリって感じだと思う。
「ねぇねぇ、タツヤ〜」
荷台ひきながら俺に擦り寄ってきた。
「私とも結婚しない〜?」
寄ってきた。
まるで、コンビニ行かない?くらいの感覚で結婚を迫ってくるなこの人は。
「私ずっと考えてたんだよね。2億ほんとに貰っても良かったのかなって。でもいいこと思いついちゃった。結婚したら私たち2人の2億にならない?って思って。それなら私も気後れしない」
(気にしてたんだなぁ。それにしてもおっさん、今更モテモテである)
前世ではまったくもてなかったのになぁ。
とか思ってたらギルドに到着。
「まぁ、返事は待ってるよ」
リッカはそう言ってギルドの中に入ってった。
俺達も続く。
中に入るとリッカ達が話を始めたので俺はギルドの隅の方にあった椅子に座った。
それでマシロと話をしていたんだが、その時だった。
バーン!!!!
蹴破るように扉が開かれた。
ギルドの中にとある人物が入ってきた。
それは
(リダスか?あれ?)
ボロボロの装備身につけてギルドの中に入ってきた。
周りにも目もくれない。
俺にも気付いた様子は見えない。
リダスはヨロヨロとした足取りでギルドカウンターへ向かっていった。
そして、口を開いた。
「水をくれ。とりあえず水をくれ。もう何日も飲んでねぇんだよ」
ガラッガラの声でそう言ってた。
本当に何日も飲んでいなかったらしい。
しかし、あいつに何が起きたのか俺には全く分からなかった。
なんであんなボロボロになってるんだ?あいつ。
(まぁいっか)
俺にはもう関係ない話だし。
それにしても、だ。
(俺を否定してきたやつがあんなにボロボロになっているのを見るのはなかなかいい気持ちだな)
俺も人の子である。
嫌いな奴が悲惨な目に会うのは見ていてなかなか気持ちがいい。
そう思っていたときだった。
リダスは目を動かしてギルド内を見た。
1つの貼り紙を見てた。
それは俺の紹介をした紙だった。
「あ、あのおっさん……じゃないかよ」
どうやら俺であることに気付いたらしいが。
リダスはギリッと歯を食いしばって受付嬢に聞いてた。
「選んでる場合じゃない。おい、あのおっさんに依頼するにはどうしたらいいんだ?」
受付嬢は俺を指さしてきた。
「タツヤさんならアソコにおられますが」
俺とリダスの目が合った。
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