第32話  おっさん、超絶重要依頼を受け震える


ブルブルブルブル。


依頼書を持っていた俺の手が震える。


(超重要って書いてあるぞ?)


そう思っていたらギルドマスターが話し始めた。


「防衛作戦はかなり長期で予定されています。その時に空いた時間で食事をしたり仮眠を取ったり物資の補給をしたりするのに拠点が必要なのです。その設営をタツヤさん、あなたにお願いしたいのです」

「お、俺に?!」

「はい。拠点は超重要な生命線と言っても過言ではありません。作戦の命です」


(かつてないハードルの高さを感じるなぁ。それにしてもすんごい依頼が回ってきたもんだ)


まさか俺にこんな依頼が回ってくるなんて。


「タツヤさん。これだけ重要な依頼は信頼できる人にしか頼みたくないのです。受けていただけませんか?」


「はい。受けさせてください」


俺がそう言うとギルドマスターは喜んだ。


「さすが、タツヤさん。我々の予想通りのフリーランスだ。今回の防衛作戦は楽になりそうですな」

「えーっと仕事は拠点の設営だけですか?」


聞いてみるとギルドマスターは首を横に振った。


「いえ、今回防衛作戦に使う拠点の付近にはモンスターの出現が確認されております。それの殲滅もお願いしたいのです」


「どれくらい数がいるんですかね?」

「監視によると百かもしれないし、千かもしれない、との事ですが」

「そんなに?!」

「はい。ですが、防衛作戦ではもっと多くのモンスターと

戦うことになりますよ」

「とりあえず人手が欲しいのですが」


俺がそう言うとギルドマスターは答えた。


「では、ギルドからも人員の募集を行いましょうか?」


そんな会話をしていた時だった。


「タツヤ」


声がかけられた。


声の方向を見るとそこにいたのはエリザ。


「私が手伝おう。人数はどれくらい必要だ?知り合いにも声をかけてみよう」


エリザの声に周りも答え始めた。


「タツヤさん!俺も行きますぜ」

「俺もだ!」


みたいな俺を手助けしてくれる人がどんどん名乗ってきた。


(これだけいれば十分そうだな)


俺はそう思いギルドマスターに言った。


「これで足りなければ追加でまた連絡します」

「いつでも連絡お待ちしておりますよ」


それから最後に俺はギルドマスターに質問することにした。


「現地では俺が好きに動いていいんですよね?」

「はい。拠点を作っていただければなんでもかまいません」



俺はその後名乗りを上げてくれた人たちを連れて目的地に向かうことにした。

今は目的地に向かうための馬車にいる。


ヒナ達にはしばらく帰ってこないかもしれないということで、しばらくは余裕で生活できる分のお金を渡した。

あの子はしっかりしているし、シルフの面倒を見ながら何とかやってくれるだろう。


目的地は【地獄谷】と呼ばれている場所でここを防衛作戦に使うらしい。

この谷だが、かなり長くて横幅もある谷らしく、この谷を歩いてモンスターが襲来してくるそうだ。


最後の方……というか、ドネス付近の谷は上り坂になっており、谷の底からモンスターが上がってこれるようになっている。


それでモンスターが上がってしまった時はドネスをモンスターが攻める。

だからその前に始末してしまおうというのが防衛作戦の目的らしい。


んで依頼書にはこの谷から少し距離を離したところにテントを設置して欲しい、との事だった。


だが


「テントか」

「それがどうかしたのか?」


俺の呟きに反応したのはエリザだった。


「この防衛作戦ってのは定期的に行われるんだよね?」

「そうだな。モンスターが攻めてくるのには周期があると言われている」

「なら、これ定期的にテントの設営を行ってるってわけだよな?」

「そうなるな」

「その度に毎回テントを張ってるわけだ」

「うむ」


俺はひとつ提案してみることにした。


「地中に拠点を作る、というのはどうだろうか?」

「地中に拠点を?」


エリザは驚いていた。


「俺の故郷には防空壕ってものがあった。地面とかに穴を掘って作るものだよ。地面は頑丈だ。そこに入って空からの攻撃を凌いだりしてた」

「そんなものがあるのか?」

「うん。テントを毎回立てるくらいなら、そういう地下の拠点を作った方がいいと思う。それなら毎回繰り返し使える」


依頼書に目を通してみるが拠点を作れって書いてあるだけで別にテントを使えとは書いていない。


だからそこはアレンジをしてみようと思う。

それにギルドマスターからは拠点を作ってくれ以上のことは言われていない。


だから防空壕でもいいはずた。


「なかなかよさそうだな、防空壕か。それでいいと思う」


エリザも頷いていた。


なので俺は防空壕を作ろうと思うが。


「しかし地面を掘るのはどうするのだ?頑丈なんだろう?」

「そこは俺ならささっと掘れると思う」


俺のスキルは【防御無視】だ。


これとスコップを使えば豆腐を掘るような感じで地面を掘れると思うんだよな。


そうやって会話していたら馬車の前から声が聞こえてきた。


「タツヤさん。そろそろモンスターが見えてきました!」


馬の手綱を握っているやつからの声。

俺も前方を見てみたがたしかにモンスターが見え始めていた。


(オーク、ゴブリン、スライム、ウルフ?種類も多いし数も多いな)


「かなりの量だな。よし、各自好き放題暴れてくれていいぞ」


俺がそう指示を出すと馬車の中から声が上がった。


「好きにしていいんですね?」

「おっしゃ、行くぞぉぉぉぉぉぉ!!!」


馬車から気の早い連中が降りていった。


そして、敵の殲滅へ向かっていく。


俺も馬車から降りた。

マシロに手を差し出すと、リードして下ろした。


「やさしいですねタツヤさん♡」

「奥さんなんだから丁重に扱わないといけないだろ?」

「奥さん……恥ずかしい」


恥ずかしそうにしてるマシロもかわいい。


さて。


「マシロ。サポートを頼むよ。俺もモンスターの殲滅に向かおう」

「はい!」


俺は先に行った冒険者たちを追いかけることにした。


ウルフが先に行った冒険者たちの間を抜けて俺に近付く。


「タツヤさん!すいません!抜けました!」

「気にしないでくれ!そっちは前のモンスターに集中してくれ。一匹でも多く頼む!抜けた分は俺が処理しよう!」


「ガウっ!」


ウルフが俺に噛み付こうと飛びかかってきた。


しかし、ザン!


俺はウルフを一撃で切り伏せた。


「さぁ、次だ、こい!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る