第31話 おっさん、S級美少女に求婚される

 俺はマシロに言われた通り酒場までやってきた。


 先に中で待っててほしいと言われたので席に着いて待っていた。


 久しぶりに会うので少し緊張していた。


「なんか、変じゃないよなぁ?寝癖は?大丈夫か」


 あんな可愛い子に会うのだ。

 緊張するなという方が無理だった。


 ソワソワしたりして待っていると、


「お待たせしました」


 そう言って俺の対面に誰か座ってきた。


 顔を上げると


「久しぶりだねマシロ」

「はい」


 笑顔を向けてくるマシロがいた。


「俺に何の用なの?」


 そう聞いてみると彼女は言った。


「私考えてたんです、やっぱりタツヤさんといっしょにいたいなって」

「えーっと、それはどういう?」

「私を連れて行って欲しいんです。好きです、結婚してください」


 頭を下げてきた。


(うーん・・・?)


 いろいろ段階すっ飛ばして、求婚されてしまった。


(あららら、おっさん……どうしたんだよ)


 自分で自分に聞いてしまうくらい動転してた。


 今まで冴えないおっさんだったのに、こんなに若くて可愛い子から求婚されてしまうなんて。


「お仕事の邪魔はしませんから。一緒に連れて行って欲しいんです」


 俺は普段は使っていない頭を急回転させて考えた。


(この子ほんとめちゃくちゃかわいいんだよなぁ)


 正直ここで逃したらこの後ここまで可愛い子に求婚される、どころか話しかけられることもないんだろうなってレベルの美少女である。


 そして、なによりおっぱいがそこそこでかい。


 嫁にするなら文句なしの美少女。


(あのレビューのやつ本気で書いてたっぽいな)


 この子なりの冗談かと思っていたが、改まって言われると本気であることが分かった。


 それと俺決めていたことがあるんだよな。


『結婚するなら自分が好きな子より自分のことを好きになってくれる人と』って。


 んで、今俺のことを好きになってくれている子は文句のないような完璧美少女。


 もう悩むことは無い、よな。


「マシロ、本当に俺でいいの?俺こんなおっさんだけど」


 そう聞いてみると頬を赤らめた。


「はい。あなたがいいんです。タツヤさん。この世界であなたより尊敬できる男性はいません。私はそう確信しています」


 正面からそう言われて少し困惑するレベルだった。


「分かった。マシロ、俺と結婚してくれるか?」

「はい。こちらこそお願いします」


 マシロは笑顔になった。


 それからこう続けた。


「あの、今から元パーティの脱退申請を行いますね」

「うん」


 俺が頷くとマシロはパーティを抜けたようだ。


「これからはあなたについて行きますから」


 にこっ。


 笑顔を向けられた。


「よろしくね」


 俺がそう答えると俺の目の前にウィンドウが出てきた。


【マシロから結婚申請が届いています。受け入れますか?】

→はい ・いいえ



(この世界の結婚ってこんな感じなんだなぁ)


 なんか、割とあっさりしてるんだなぁ、って感じ。


 俺はそう思いながらふと呟いた。


「割とあっさりしてるんだね結婚って」

「でも、私の気持ちは本物ですよ。それに結婚は一度しかできません。私はもうこれ以上他の人とは結婚できません。その大事な1回をタツヤさんに使ったのです」

「お、おぉ、ありがとう」


 マシロの気持ちはこれでもかってくらい伝わってきた。


 俺はマシロからの結婚申請を受けいれた。

 すると、


【指輪を付与します】


 ブゥン。


 俺の指にひとつの指輪が現れた。


 マシロの手にも同じものが浮かび上がる。


(これが結婚の証ってことか)


 初めての指輪に少しドキドキしていた。

 向こうもドキドキしていたようだ。


 しかし、ムードもなにもなかった結婚だっなぁ。


 俺らしいと言えば俺らしいけど。


 で、俺はマシロに聞いた。


「ちなみにこの話をするためだけに呼び出したの?」

「まだもう一個あります」


 そう言うと彼女は答えた。


「ドネス防衛作戦についてのお話もあります。タツヤさんと受けたいなぁと思いまして」

「あー、その話ね」


 俺は頷いた。


「いっしょに受けよっか」

「はい」


 俺はマシロからクエストの受け方を聞くことにした。


 どうやらこの依頼はギルドに行けば受けられるらしいのでギルドに向かうことにした。


 酒場を出てギルドへ向かった。


 ギルドの中に入ると周りの視線が俺に集まってきた。


「タツヤさんだ」

「おーあれがタツヤさんか」


 そういえばこの街では俺は既に有名になって来ているんだったな。


 そう思っていたらマシロが聞いてきた。


「すごいですね。タツヤさん。やっぱり有名になっちゃった」

「実力が伴っていない気がするからちょっと恥ずかしいけどね」


 俺がもっと強ければ堂々とするんだけどなぁ。

 そう思いながら俺は壁のポスターを指さした。


「ほら、ちょっと色々あって俺飾れてるんだよね」

「あ、ほんとです。すごいー」


 マシロは目をキラキラさせてた。


「でもこんなんじゃ終わらせませんよ私は。世界中にタツヤさんの名前を広めますから」

「ありがとう」


 マシロは俺より気合十分って奴だった。


 それにしてもこれからはこんなにかわいい嫁と仕事ができると思うとワクワクしてくる。


 これからのことを考えながらギルドカウンターに向かった。


「あのー、防衛作戦について話を聞きたいんですけど」


 そう言うと受付嬢は俺の顔を見て言った。


 その顔はいつもと違う表情をしていた。


「タツヤさんですよね?しょ、少々お待ちを」


 受付嬢は奥の事務室に入っていく。


 いつもと違う反応に戸惑っていた。


「あれ?俺なんかしたかな?ブラックリストとか?」


 何もしていないと思うけど急に不安になってきた。


「そんなことないですよ。でも、なんで入っていったんでしょうね?」


 マシロがそう言った時。

 事務室から一人の男が出てきた。


 ヒゲの男。


「あなたがタツヤさんですね?」


 ヒゲに聞かれて頷いた。


「は、はい。俺がタツヤです」


 そう言うと仏頂面だったヒゲは思いっきり笑顔を作った。


「ようこそお越しくださいましたタツヤさん。私はこのギルドのギルドマスターでございます」


 この人がギルドマスターかぁ。


 でも俺になにか用でもあるんだろうか?


 そう思っているとギルドマスターは俺に依頼書を渡してきた。


「タツヤさん、私からあなたにしか頼めない依頼があるのですが、こちらを受けてくれないでしょうか?」


 ぎ、ギルドマスターからの依頼?


(予想してなかったなぁ)


 そんなこともあるのかぁ、フリーランスだと。


(とりあえず依頼を確認してみよう)


 依頼書に目を通すとこう書いてあった。


【超重要!!防衛作戦で使う拠点の設営をお願いします】




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