底辺のおっさん冒険者、見下してくるパーティを思い切ってやめてフリーランスになったら待遇が3000倍になった~異世界でゆるゆるで楽しいフリーランス生活を送りたい!
第30話 おっさん、鍛冶師に会いに行く
第30話 おっさん、鍛冶師に会いに行く
次の日。
俺は【竜王結晶】を欲しがっていた鍛冶師のところに行くことにした。
依頼に届け先の住所はあったので、どこにいけばいいかはすぐに分かる。
ヒナやシルフには依頼の更なる読み込みをさせてる。
細かい依頼内容などを読ませて、エリアごとに仕分けさせている。
この作業でもすごい時間がかかりそうだし、2人がいてくれて助かったと心の底から思う。
鍛冶師のところに行くとそこには工房があった。
「すいませーん」
声をかけるとすぐに顔を覗かせてくる人影がいた。
「あれ、タツヤ?」
気さくに声をかけてくるのは女の鍛冶師だった。
「はい。約束のもの持ってきたんですけど」
「おぉ、もう持ってきたの?早いな。あと一週間くらいかかるかなぁって見てたんだが」
「ちょうど行く用事があったんですよ」
「へぇ。偶然だなぁ」
俺は結晶を鍛冶師に渡した。
「ほえー」
鍛冶師は色んな角度から結晶を見てた。
「俺のこと誰から聞いたんですか?」
「リッカ。グリノヴァでは世話になったって言ってたね」
「へぇ、リッカが」
俺のこと宣伝してくれたんだなぁとか思う。
人のクチコミってけっこう大事なんだなぁ。
「あの子けっこう辛口レビューばっかなんだけど、タツヤのことはべた褒めしててさ。それでこの街にタツヤがいるっていう噂を金髪の子から聞いて」
「シャーディーって子ですか?」
「そうそう、その子。その子もタツヤに世話になったって聞いたから、関所の方に依頼送っといたんだよ」
(なるほど。そういう経緯があったんだなぁ)
クチコミが次のクチコミに繋がってる感じだなぁ。
そこで鍛冶師は鉱石の観察をやめた。
「んー、よしよし。いいねー。さすが竜王結晶だ。ていうかなんでこんなに綺麗なの?この鉱石は」
「え?もともと綺麗だからじゃないです?」
「んにゃ、違うよ。鉱石頼むと毎回欠けてたり、破損してたりするんだけど。どうやって持ってきたの?」
「普通に梱包しただけですけど」
ハンカチを取り出して実際にやったように動かしてみた。
「へぇ、珍しいね。そうやって梱包するの」
「そうなんです?」
「うん。包んでる人見たことないよ。みんなアイテムポーチに直投げだから、こんなふーに」
バコーン。
鍛冶師は近くにあった紙くずをゴミ箱に投げてた。
苦笑してた。
「だからタツヤみたいに真面目な人は珍しいよ」
「へぇ、そうなんだ」
驚きだ。
俺は普通に仕事をやっていただけなのにこんなに評価してもらえるなんて、これからも続けようと思える。
その時だった。
俺の視界の隅っこに通知のメッセージが出てきた。
(ん?)
マシロ:お久しぶりです。私もドネスに来ました
と表示された。
最初に俺に依頼してくれた子だ。
(まるで俺がドネスにいることを知っているような感じだな?)
そう思ってたらマシロから更にメッセージが届いた。
マシロ:タツヤさんもいるんですよね?噂届いてますよ!これから会えませんか?
(そうだなぁ、久しぶりに会ってみるかぁ?)
俺は鍛冶屋に目を向けた。
「知り合いに呼ばれたから、じゃあね」
そう言って立ち去ろうと思ったけど鍛冶屋は声をかけてきた。
「ちょっと待って」
不思議に思って足を止めてると鍛冶屋は近くにあった箱を開けた。
その中に入ってたのは剣だった。
名前:レッカソード
レア度:SSS
そう表示されていた。
ちなみに刀身には文字が入っていた。
バカでかい文字で住所が書いてある。
それはここの鍛冶屋の住所だった。
反対側の刀身も見せてきた。
そこにはこう書いてあった。
【レッカ鍛冶工房】
と。
「タツヤ、この武器使ってくれない?広告して欲しいんだよね、ウチの店の。お金払うからさ」
(お金もらって武器も貰えるのか?)
「50万ジェル払うよ。どう?」
「わ、分かった。使うよ」
「ほい」
鍛冶屋は俺に武器を渡してきた。
おぉ……。
なんな持っただけで凄い武器だってことが分かった。
というより
【武器の変更を確認。攻撃力+450】
と出ていた。
あきらかに強い武器だった。
「こ、こんなのいいの?本当に」
「もちろん。今噂のフリーランサーさんが使ってくれるとさ、それだけで広告になるからさ」
俺に皮袋を渡してきた鍛冶屋。
「じゃ、よろしく頼むよ、タツヤ」
「は、はい!」
俺は返事をしてから鍛冶屋に聞いてみることにした。
「ところで、リッカとはどういう関係?」
「あぁ、私はレッカって名前で姉。あの子は妹」
(へぇ、姉妹だったのか)
でも、俺は思っていたことを口にしてみることにした。
「俺普段はひとりで仕事してて武器を使うところなんて他の人に見られること少ないけど、本当にいいの?」
そう聞いてみるとレッカは答えた。
「数日後にけっこうでかい作戦があるんだよね、実は」
「でかい作戦?」
俺がそう聞くとレッカは続けた。
「ドネスは地理上モンスターに狙われやすい位置にあるんだよね」
ピラッ。
レッカは俺に依頼書を渡してきた。
【ドネス防衛作戦】
報酬:10万ジェル
目的:ドネスの防衛
「ここには来たばかり、なんだよね?なら知らないかもしれないけど、この街は定期的にモンスターの大軍に襲われることになる」
「へぇ、たいへんな場所なんだなぁ」
「タツヤってフリーランスなんだよね?」
「まぁ」
「なら丁度いいじゃん。ドネスの防衛作戦に参加するといいよ」
「俺になにかメリットが?」
そう聞くとレッカは頷いた。
「ドネス防衛作戦で功績をあげるとさ、すっごい有名になれるんだよね。その効果は凄くて、世界中に名前を知られるくらいなんだよ」
となると……。
俺は呟いた。
「世界中から俺に依頼がくるようになるかもってことか」
「いえす。フリーランスは実力があればあるほど報酬もあがる。タツヤに依頼を受けてもらおうと思って報酬額もどんどん上がっていくってわけ。んで、作戦に参加してもらうと他の冒険者にも私の武器を見てもらえる。で、宣伝になる」
お互いウィン・ウィンの関係ということか。
「ま、無理強いはしないけどね?決めるのはタツヤだしね」
どうする?みたいな目で見てくるレッカ。
「とりあえずさっき言われた友人に会ってから決めてみることにするよ、何か別の用事があるのかもしれないし」
俺はそう言って今度こそ鍛冶屋を後にすることにした。
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