第27話 おっさん、と竜王の巣②
竜王結晶を手に取った。
傷が入ったり、壊れたりしないように何重にもハンカチなどで梱包してからアイテムポーチに入れた。
ウィンドウが出てきた。
【依頼一件の完了を確認】
俺はドラゴンに振り返った。
「ありがとう、ドラゴン」
「ドラゴン嘘つかない」
ドラゴンは頷いてた。
エリザはバツの悪そうな顔をしていた。
「あ、いや。すまなかった。助けて意味がないとか言ってしまって」
「ドラゴンの心はこの空のように広い。許そう」
「ドラゴンナンバーワン」
「いえす。ドラゴンナンバーワン」
なんか仲直りしてた。
平和な世界が広がっていた。
自分の命を軽く見られてなのに許してしまうドラゴンさんの心の広さは凄いらしい。
だがしかしドラゴンさんの心の広さはこれで終わらない。
「人間、この小娘はドラゴンを敵だと認識していただけに過ぎないのだ。敵は殺すものだからな。どうか、許してやって欲しい」
と相手のことをフォローする始末である。
ドラゴンはすげぇなぁ。
俺がドラゴンのことを観察しているとドラゴンが姿勢を低くした。
「ドラゴンの背中に乗りたまえ」
「いいのか?」
「うむ。ドラゴンは空の王者であるぞ。快適さは保証しよう」
ドラゴンはニャゴとワイバーンに目をやった。
「そやつらは疲れているようにも見える。休ませてやってくれ」
ぐてっ!
ぽん。
ワイバーンはその場で寝てしまい、ニャゴは元のサイズに戻った。
俺はニャゴを肩に乗せてドラゴンに飛び乗った。
ワイバーンはドラゴンが前足で持っていた。
やり残しがないのを確認してからエリザも背中に飛び乗る。
「しっかり捕まっていることだ人間。ドラゴンは速い」
バサッ!
一度羽ばたいたドラゴン。
気付けば俺たちは雲の上まで来ていた。
「おぉっ?!一瞬でここまで?!」
「ドラゴンだから」
ドラゴンは答えてきた。
そして、とある方向を見た。
そこにはまだもう少し高さがある山があった。
(雲より標高が高いのがあったなたしか)
そう思っているとそっちの方向に近づいて行くドラゴン。
頂上に着陸。
ノシッ。ノシッ。
二足歩行で歩いていくドラゴン。
頂上の真ん中に一本だけ生えていた薬草の前で止まった。
「これが神秘の薬草である」
ブチッ。
引っこ抜いたドラゴン。
俺に渡してきた。
「こんなものくれてやろう。ドラゴンは心優しいからな」
「おー、ありがとう!」
【神秘の薬草×2】を手に入れた。
2本?とは思ったが、あって困るものでもなさそうだ。
「よし。では、あれが来る前に逃げるぞ」
「あれ?」
ノシッ。
ノシっ。
山の頂上は円形になっていて、端まで着くと崖になっている。
その崖に向かっていくドラゴン。
そのときだった。
ギュオン!
一匹の黒いドラゴンが壁際スレスレで上がってきた。
黒いドラゴンは頂上に着陸すると土下座を始めた。
「すまん!シルフ!翼を攻撃したのはわざとではないんだ!当たってしまっただけなんだ!」
「つーん。もう知らない」
ドラゴンは顔を背けていた。
(なんだなんだ?)
そう思っていたら黒いドラゴンが俺を見てきた。
「お前、人間か?」
「そうだけど」
「シルフを説得してくれ!人間の世界に行きたいと言い出したのだ!」
「シルフ?」
「シルフィード、そのドラゴンの名前だ。そして、私竜王の娘だ」
そこでシルフと呼ばれたドラゴンは言った。
「パパのことは無視していい。ドラゴンはやりたいように生きる」
ピョン。
崖から飛んだシルフ。
俺たちはどうしようもなくてそのまま下界の方に降りていった。
どうやら親子喧嘩していたらしい?
シルフの背中に乗っているとやがて俺たちは竜王の巣から離れた草原に降りた。
「降りろ人間」
そう言われて俺たちは背中から降りると。
シュゥゥゥゥゥゥとドラゴンから煙が出た。
「お?なんだ、この煙は」
そう思いながら煙を見ていたら、やがて煙が消えていった。
煙が晴れたそこにいたのは、女の子。
頭に2本の角が生えていたけど、次の瞬間スポンと頭の中に入っていった。
銀色の髪の毛。
下に目を向けるとなぜか、裸だった。
背中には2つの翼。
それから下の方ではしっぽがチラチラしていた。
胸は……そこそこ?
って、真面目にナニを観察してるんだ俺は。
「ドラゴンも人間の真似をしてみたぞ。これでいいか?」
「真似をしてみたって真似をしてこうなるのか?」
「ドラゴンはすごいからな。えっへん」
胸を張っていた。
胸を張られては視線のやり場に困るな。
俺は上着を脱いで渡した。
「人間の真似をするならとりあえず服を着てくれ」
「ふむ」
俺から上着を受け取ると身につけたシルフ。
エリザはシルフを見て叫んだ。
「待て待て待て待て。なんで人になれるんだ?」
ニンマリ笑ったシルフ。
「大は小を兼ねると言うだろう?最高種族であるドラゴンは人間くらいになれるということだ」
そこでシルフは俺の前に来た。
「人間、お前の名前を聞いていなかったな」
「タツヤだけど」
「ふむ。タツヤか。覚えておこう」
頷くシルフ。
それからこう言った。
「ドラゴンは動いたから腹が減ったぞ。なにか食わせて欲しい」
「ドラゴンって普段何食べてんの?」
「水滴を飲んでいるだけだぞ。だが飽きた、何か食べてみたい」
え?水滴飲んでるだけ?
それで生きられるの?ドラゴン?
マジで最高の種族だなぁ。
(それより、何を食わせようか)
うーん。
(そういえば以前に米炊きセット買ったよな?)
俺はアイテムポーチの中にあった米炊きセットを取りだした。
セットアップを済ませる。
「シルフは火を吐けるのか?」
「吐けるぞ、ふー」
バチパチバチ。
米が炊かれていく。
終わると俺はシルフに米を食わしてやった。
「うまい、うまいぞ!これ!」
バクバクバク!
食べていくシルフ。
「これは美味いぞ。気に入った」
ペロリと食べたシルフは俺の目を見て言った。
「ドラゴンはお前の仲間になっていいか?」
「え?」
「もっともっと美味しいものが食べたい」
目をキラキラさせてた。
うーん。
そうだなぁ。
(既にニャゴもいるし、新しくペット(?)を迎えてみてもいいかもなぁ。これを逃したらドラゴンとはもうお近づけになれないだろうし)
そう思って俺は頷いた。
「いいよ」
「おぉ!ドラゴンは嬉しい!」
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