第26話 おっさん、と竜王の巣①
竜王の巣の近くまでやってきた。
「すげぇなここ」
思わず呟いてしまった。
なんかすっごい。
ほぼ壁みたいな斜面の山がいくつか並んでた。
一番高いところで雲にかかるくらい高いものもあった。
「あー、たしかにこれワイバーンじゃないと無理だな」
「さらに登っていくときにドラゴンからの襲撃もある。気をつけることだな」
「ドラゴン?!」
ドラゴンってあれだよな?
あの創作とかだとめちゃくちゃ強いって言われてるあれだよな?
(竜王って聞いた時からなんとなく想像はしてたけどやっぱいるんだな)
エリザは口を開いた。
「この竜王の巣には1000体のドラゴンがいると言われている。戦闘を避けて登頂するなんてことは出来ないから覚悟しておくことだな」
エリザはワイバーンの背中に飛び乗った。
「飛べ」
そう言うとワイバーンは飛んだ。
俺もニャゴの背中に乗った。
エリザが言った。
「避けて登頂することは無理だと言ったが、出来るだけドラゴンとの戦闘は避ける。奴らは一体でAランク冒険者パーティを倒すほどの実力がある。それが推定1000体だ。全部相手していては体がもたない」
ゴクリ。
「今更になってやばさが分かったよ」
「クロイドが依頼を受け無かったのはそれもある。仮に20万積んだとしてもこの依頼は受けてないさ」
そう言うとエリザは聞いてきた。
「それにしても驚いたよ。竜王の巣に行くなんて言う馬鹿げたこと言った人間がいると思っていなかったから」
「そうなの?」
「この竜王の巣は危険すぎて最後に冒険者が来たのは何十年も前の場所だ。誰も来ないよ普段は」
苦笑していた。
俺の中でのハードルはバカ上がりしていた。
ほんとにヤバそうな場所らしい。
が、約束してしまったし、依頼は死ぬ気でがんばろう。
エリザも協力してくれるわけだしな。
ニャゴはやがて飛んでいく。
「んにゃ〜」
気の抜けそうな声を出して上がっていく。
そして標高100メートルくらいまで上がった。
一応山が集合しているような地形になっているって話だが。傾斜が凄すぎて三角柱が密集しているエリアみたいになってる。
例えるなら、そうか。
(上空から見たときは剣山みたいになってそうだなこれ)
しかと柱と柱の感覚が狭すぎてマジで視界が悪い。
エリザから声。
「私も初めて来たが本当に厳しい場所だな。視界が悪すぎる」
俺も同じことを思っていた。
なんというか、四方八方から銃口を向けられているようなそんな感覚がずっとしてる。
(視界が通らないってこんなにキツイんだな)
そのとき。
ビュン!
視界の端をなにかが通った。
「ドラゴンか?」
「そうみたいだね。そっちの柱の影から向こうへ言ったな」
エリザも同じものを見ていたようだ。
「とりあえず逃げられるとこまでは逃げよう」
エリザがそう言って高度をあげていった。
俺も上げる。
しかし、ドラゴンが追ってくる様子は無い。
(どうやら逃げ切ったようだな)
胸をなでおろしているとエリザは言った。
「ここのドラゴンは実力ごとに縄張りが分かれているらしい」
「もしや、上に上がれば上がるほど強いドラゴンがいる?」
頷いたエリザ。
「言ってみれば今のは最下層のカーストのドラゴン。臆病なのだろう」
「この先ずっとそれが続くことは無いってことね。より好戦的になるのかな」
頷いたエリザ。
その時だった。
ヒュオォォォォォォォォォォォォ!!!!
「タツヤ!上だ!ドラゴンが落ちてきた!避けろ」
「ドラゴン?!」
上を見あげてみると白い体のドラゴンが落ちてきていた。
ドラゴンの落下位置からズレて俺はふと呟いた。
「あのドラゴンこのまま落ちたらどうなるんだ?」
「どこかに叩きつけられて死ぬだろう」
エリザの声。
俺はニャゴに言った。
「あのドラゴン、掴めるか?落下を止めてくれ」
「にゃ!」
ドラゴンがニャゴより下に差し掛かったところでニャゴはドラゴンの体を足の指で掴んだ。
「な、なにしてるんだ?タツヤ?」
エリザに聞かれたけど俺はそのままドラゴンをせり出した足場に運んだ。
壁のような斜面ではあるが、ところどころにせり出した足場がある。
そこにドラゴンを置いた。
じっくりと観察してみる。
どうやらこのドラゴン、翼に怪我があるようだ。
(穴が空いてる。いったい誰が?)
俺がそう思ってるとドラゴンがゆっくり目を開けた。
「人間、か」
「うおっ!喋った?!」
驚いた。
いきなり声をかけてきたから。
「人間の言葉が分かるのか?」
「ドラゴンは世界で一番頭がいい種族だ。理解など簡単だぞ?ドラゴンナンバーワン」
(なんか、かわいい。じゃなくて)
「けがしてるけど」
「ドラゴンはもう飛べない」
目を閉じて悲しそうにしてる。
「このままここで野垂れ死にするだけだ」
「どうにかできないのか?」
「翼さえ治れば。飛べて生存確率あっぷ」
そう会話していた時エリザが言ってきた。
「時間の無駄だ。もうそのドラゴンは助からない。それに助けたってなんの意味もない」
ドラゴンは答えた。
「誇り高きドラゴン族は受けた恩を忘れぬ。たとえ人間に治療を受けたとしてもその恩は忘れずに返す」
唯一ドラゴンに効果のありそうなアイテムを取りだした。
【生命樹の葉っぱ】
「これで治らないかな?」
「なっ……」
ドラゴンが目を見開いた。
「治るぞ。だがそんなレアなアイテムを貴様はドラゴンに使うのか?」
「どうせ取っといてもエリクサー病になりそうだし」
「エリクサー病?」
「あ、いや、こっちの話」
葉っぱをドラゴンに上げるとドラゴンは葉っぱを飲み込んだ。
すると、すぐに体が治っていった。
「助かったぞ人間。ここに何をしに来た?」
「神秘の薬草を取りに来た」
「あぁ、あれか。それなら場所は知っている」
「ほんとか?!案内してくれないか?」
「いいぞ。ドラゴン約束破らない」
「あ、それからさ。竜王結晶の場所知らない?」
そう聞いたらドラゴンは俺の後ろを指さした。
「それならそこにある」
俺は後ろを見た。
キラーンと光る鉱石があった。
名前:竜王結晶
レア度:SSS
人助け、いや竜助けをするといいことがあるようだ。
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