底辺のおっさん冒険者、見下してくるパーティを思い切ってやめてフリーランスになったら待遇が3000倍になった~異世界でゆるゆるで楽しいフリーランス生活を送りたい!
第19話 おっさん、特殊な依頼を受ける
第19話 おっさん、特殊な依頼を受ける
俺はそのまま家まで通された。
応接間で話すことになった。
応接間には真ん中に2つのソファが向かい合うように置いてある。
間にはテーブルがあった。
そして、片方のソファには綺麗な若い女性が座っていた。
「お初にお目にかかります。タツヤ様」
俺を見て会釈してきたので俺も会釈で返した。
執事がその女性の後ろに立つ。
どうやらこの女性が雇い主?らしい。
俺は指示を出されたので女の人の対面に座った。
それから冒険者カードを取りだした。
「ど、どうも。タツヤです。冴えないおっさんです」
そう言いながら俺はカードをスススーっとロボットみたいな動きで渡してみた。
いつも依頼を受ける時はこうやって見せてるんだけど、相手が相手なのでさすがに緊張する。
(こんなんでいいのかなー?貴族相手。貴族だよな?この人?うー、あー)
悩んでいると女の人がクスッと笑って答えてくれた。
「私はシャーディー・ブルーフィールドと申します。そんなにかしこまらないで下さい」
「は、はい。心遣いありがとうございます。見ての通りおっさんは礼儀を知らんもので、優しくしていただけると助かります」
シャーディーは答えてくれた。
「はい。友達と話すような感覚でかまいませんよ。私としてもそちらの方が新鮮さがあっていいのです」
シャーディーが咳払いした。
それから本題に入る。
「タツヤさんお願いがあるのです」
「はい」
俺をテストしてまで頼む依頼だ。
さぞ難易度が高いのだろう。
俺は覚悟を決めてその続きを聞くことにした。
「話します。私のことを護衛して欲しいのです」
「護衛?」
首を傾げて聞くとシャーディーは頷いた。
「私はこれからとある街へ向かいます。そこに向かうまでの間護衛して欲しいのです」
パチクリ。
まさか、俺が護衛任務に携わることになるとは。
「俺でいいんですか?」
そう聞くとシャーディーは頷いた。
「タツヤ様なら信用に値する方だと思いました。私もここから働きを見ていましたが、素晴らしく真面目でていねいな方という印象を受けました」
シャーディーは俺に聞いてきた。
「いかがでしょうか?」
「うーん。いいんだけど、さ。なんで俺なの?言っちゃなんだけど適任はもっとほかにいると思うけど。俺別に強くないと思うし」
そう言うとシャーディーは言った。
「あなたが真面目で誠実そうな人だからです」
シャーディーはそう言った。
(よく分からんな。真面目で誠実って普通なことだと思うけどな。)
俺なんて普通くらいの人間だと思うがこの世界では違うんだろうか?
そう思ってたらシャーディーは言った。
「3日後ここを出発します。それまでに準備を済ませておいていただけますか?」
「準備か。元々俺にはなにも準備するようなものもないから、別に準備期間はいらないんだけど」
そう言うとシャーディーは言った。
「ではもしよろしければ、明日出発してもよいでしょうか?」
「出発日は変えれるものなんですか?」
「はい。できれば急ぎたいのですよ」
そう言ってきたので俺は頷いた。
「別にいいけど。なんなら今でもいいですよ」
俺には特に荷物はない。
体ひとつあればどこにだって行ける感じだ。
「まぁ、好きなタイミングで声掛けてよ。俺はいつでもいいからさ」
そう言うとシャーディーは頷いた。
「ではこれから私達も準備します」
彼女は頭を下げてそう言った。
俺はこの部屋で少し待つことにした。
残されたのは俺とヒナ、それから執事だ。
執事と軽く話してみることにするか。
「なんであんな急いでるんですか?」
「少し事情がありましてね。気分のいい事情ではないので、お知りにならない方がいいかと」
「ふーん」
どうやら依頼に必要な情報ではないらしい。
聞き出すのも辞めておこうか。
執事は口を開いた。
「長丁場になると思います。食事の準備などこちらでしましょうか?」
「そんなに長いんですか?」
「結構距離がありましてね。あと道が険しいのですよ」
はははって笑う執事。
笑ってはいるがその口調からそこそこ厳しい旅になりそうだなと思った。
数時間後にシャーディーはやってきた。
「お待たせしましたタツヤ様」
「深夜だけど」
ぐーぐー。
ヒナは寝てるし。
「できれば深夜に出たいのですが。モンスターの活動時間などの問題もありますので。厳しそうでしょうか?」
いろいろと事情があるらしい。
俺は頷いた。
「いいよ」
俺はヒナを抱えてシャーディーについて行くことにした。
屋敷を出て門の敷地外に出たらシャーディーが声をかけてくる。
「これから向かうのはドネスという街です」
俺は頷いた。
「なんでこんな夜中に?」
シャーディーは俺の質問には答えずに執事に目をやって聞いた。
「例のアレの動きは分かりますか?」
「お待ちくださいお嬢様」
【千里眼】
カッ!
執事の目が見開いていた。
(おー、なんか見えてんのかなぁ?)
それから執事はお嬢様を見て言った。
「動作停止しています」
シャーディーは頷いて俺を見た。
「ドネスまでの道ですが、ゴーレムがいるのです」
「ゴーレム?夜に動くのと関係が?」
「夜はゴーレムの動きが鈍るのです。迂回するつもりですけどね。念には念を重ねます」
「なるほど、ね」
俺が答えると執事は馬車の入口を開けた。
「お乗り下さい、お嬢様、タツヤ様」
そう言われ俺とシャーディーは馬車に乗り込んだ。
中はかなり広かった。
(さすが、貴族様だな)
俺たちを載せた馬車はそこそこの速度でシャーディーの敷地を抜けていく。
そして、この街の外に繋がる関所前まで来たらシャーディーが息を飲んだ。
「ゴクリ」
(ん?なんだ?その反応)
なんで今息を飲んだ?
関所なんて別に警戒するような場所じゃないと思うが。
「まさかとは思うけど違法な運搬とかじゃないですよね?なら俺はこの依頼受けるのやめますよ。さすがに犯罪には加担できません」
シャーディーは首を横に振った。
「いえ、違います。ここの関所にはクズがいるのです。もしかしたら鉢合わせする可能性もあるので。少し緊張しているのです」
俺は察した。
「なるほど。そいつと鉢合わせしないためにわざわざ深夜を選んだってことか」
「はい。実は付きまとわれてまして、本当に会いたくないのです」
貴族様ってのも大変らしいなぁ。
だが、この時間に出てきた理由もわかった。
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