第16話 おっさん、仕事を讃えられる


 すべての仕事を終えて酒場にやってきた。


 リッカには既に仕事が終わったことを連絡してある。


 ヒナと一緒に酒場の片隅で食事をしているとリッカが現れた。


「ちわっす、タツヤ」


 そう言いながら俺の対面に座ったリッカ。


 ぺラッ。


 完成させた地図を渡す。


「もう終わったの?早いねえ」


 地図に目を通し始めたリッカ。

 叫ぶ。


「ん?なにこれぇ?!はぁぁあぁぁ?!!!」

「なにか、おかしいところでもあった?ごめん地図作成なんて初めてだからさ、不手際あったかも」


 ちょっと不安になってきた。


(おかしいな、最後はちゃんと自分で間違いないかチェックしてきたんだけどな)


 俺が作ったルートを指さす彼女。


「こんな最短ルートどうやって確保したの?直線じゃん?ここマッドフロッグが密集してたでしょ?こんなルート作成どうやったの?!」

「埋めた」

「埋めた?」

「マッドフロッグが出てこないようにさ、倒してから穴をコンクリートで埋めた。この道ずーっとコンクリートだよ」

「コンクリート?」


 俺はリッカに説明をすることにした。


「あぁ、あれか。金持ちのお偉いさんが使ってるっていうコンクリートか。ってうえぇぇぇぇぇぇ?!!!」


 叫んでた。


「なにをそんなに驚いてるの?」


 聞いてみたらリッカは咳払いした。


「コンクリートって高いでしょ?たしか、1Lで【50000ジェル】くらいだったと思うけど」


 俺が買ったセメントは1000ジェルくらいだったな。


 コンクリートで買うとそんなに高いんだなぁ。


「ねね、タツヤ。これほんとにコンクリートの道なの?」

「そうだけど、嘘ついてどうするの?」

「この道を国に売っていいかな?きっと買ってくれると思うんだ」

「俺は好きにしてもらっていいよ」


 そう言うとリッカはどこかに連絡を始めた。


 しばらく待ってるとリッカは連絡をやめて俺に目を向けてきた。


「明日の朝いっしょにこの道を見に行きたいんだけど来てくれるよね?」

「もちろん」


 あれ?


 初めはリッカのためにやり出したことなのに、何故か国が出てきてしまったぞ?



 翌朝。

 俺はリッカと共にコンクリート道にやってきた。


「うわっ。カッチカチ」


 コンコン。

 リッカは蹲ってコンクリートを叩いてた。


「この辺全部マッドフロッグの住処だったのに、すごいなぁ」


 リッカがそう感心していると、足音が聞こえてきた。


 ガシャッガシャッ。


 鎧に身を包んでいるせいでそういう音も聞こえてくる。

 足音の方に目を向けると兵士がこちらに向かってきていた。


 そして俺達のそばに来ると一礼。


「関所の責任者です。あなたがリッカさんですか?」

「うぃっす」


 リッカはそう答えてコンクリートの道を指さした。


「これ全部コンクリート。今までマッドフロッグが出てた場所全部塞いでくれたんだって」


 リッカがそう言うと鎧の人は後ろを見た。


 そこにいたのは荷台を引いた馬だった。


「1度この道を通過させてもらいます。ご同行を」


 鎧の人は馬を引いてそのままコンクリートの道を歩いていく。


 数十分後、渡り終わった。

 特に何も無い普通の道だった。


 だが、特に何も無いことが鎧の人を驚かせていた。


「ばかな!この道は今までマッドフロッグが出現して通過出来なかったのに!こんなに簡単に通れてしまうなんて!」


 そう叫んだあとリッカを見て言った。


「この道を買わせてください。国で管理しましょう」


 リッカは指をスっと立てた。


 その指の数は5本。


「5000万」


 頭がちょっと真っ白になった後に俺は心の中で叫んだ。


(5000万?!君俺に80万でこの仕事やらせたよね?!)


 だが、鎧の人は顎に手を当てて困惑していた。


「5000万っ?!」


 驚いていた。


 あまりの額に困惑しているのだろう。


(気持ちは分かるよ。ふっかけすぎだよな。さすがに、うん)


 この道5000万は高すぎる。


 俺もそう思っていたのだが。


「5000万でいいのですか?」


 鎧の人はそんなことを言い出した。


「へっ?」


 リッカも口を開けていた。


 鎧の人は続ける。


「2億の価値はありますよこの道。ガルド商会が持っているルートが5時間のルートです。そして、この道はわずか30分ほどで到着します。この短縮効果には確実に2億以上の価値があります」


 リッカは叫んだ。


「はい!じゃあ2億で!」

「わかりました。2億で買い取りましょう」


 ホクホク顔のリッカが見えた。


 その後鎧の人は俺を見てきた。


「あなたがこの道を数日で完成させたのですか?」

「ま、まぁ」

「信じられませんね。こんな道を数日で完成させるなんて」


 そう言って鎧の人は俺たちに聞いてきた。


「この道を運用するにあたって私たちになにかお願いしたいことはありますか?」


 リッカはにんまり笑って言った。


「もちろん、ガルド商会は通行禁止っ!特にイヤーミは絶対に通さないこと」


 俺に目を向けてくるリッカ。


 どうやら同じことを言って欲しいらしい。


「ガルド商会の通行は禁止で」


 そう言うと鎧の人は頷いた。


「分かりました。ガルド商会の通行は禁止にしましょう」


 鎧の人はあちこちに連絡を始めた。

 その結果このルートの出口と入口に直ぐに兵士が配置されることになった。


 そして【ガルド商会通行禁止】という看板が入口と出口に立てられることとなった。実に因果応報ってやつだろう。


(普段の言動ってやっぱり気をつけた方がいいんだなぁ)


 その後俺は街に戻りリッカと共に酒場に入った。


「ありがとータツヤー。私の懐ほくほくー。こっちは報酬の80万」


 ポン。


 とりあえず80万は渡されたけど。


「まだいるよね?半々くらい?いや、やっぱタツヤがした仕事だから、2億渡すね?」


首を横に振る。


「いいや、いいよ。リッカはガルド商会のせいで損害被ってたんでしょ?2億はその補填に使うといいよ」

「たしかにそうだけど、本当にいいの?」

「いいよ」


 色々と考えてみたけどここはリッカに恩を売っておくことにした。


(なにより彼女は世界を旅する商人だ。俺の名前を各地で広めてくれると思うし)


 目先の利益より、その先の利益を見ることにしたのだ。


 でも、リッカは追加で皮袋を渡してきた。


【420万ジュエルを入手しました】


「とりあえずそれで計500万だよね?タツヤにはほんとに感謝してるからそれくらいは払っとくよ」


 そう言うとリッカは立ち上がった。


 そして伝票を手に取ってからこう言った。


「また何かあった時はよろしくね。タツヤ。またあなたに頼むから。それから何かあったら言ってよ。私たちはあなたのために無料ですぐに飛んでいくからさ」


 俺はリッカとも連絡先の交換を行うことにした。

 彼女は俺の分も料金を払って店を出て行った。


 俺も食事を終えて、立ちあがるとヒナを所有している鉱山の管理者似合いに行くことにした。


 鉱山近くのプレハブを訪れるとすぐに管理者が出てきた。


 薄着でガタイのいいオジサンだった。


「なんだ?」

「この子を身請けしたいんだが」


 ヒナを指さした。


「5万でいいぞ」

「5万?そんなに安いのか?」


 そう聞くと男は頷いた。


「実はな俺はここで働かせている奴隷に関しては、まとめて一括で数百人購入したんだが、何人か女が混じっててな。そいつもそのうちの一人だ。女はいらねぇって思ってたところなんだよ。厄介者引き取ってくれるんだ。5万でいいぜ」


 思ってたより安かった。


 俺は5万を男に渡すと。


「ほらよ」


 俺に鍵を渡してきた。


「それで、そいつの首輪は外れる。あとはお前の好きにするといいさ」


 俺はヒナに着いてた首輪を外した。


 カシャッ。

 抵抗もなく開いた。


 鍵を返すと男はプレハブの中に入ってった。


 あっさりと身請けが終わった。


「あとは君の好きにしたらいいよ」


 俺がそう言ってみてもヒナは俺から離れていこうとしない。


「私はずっとタツヤさんのそばにいますよ。お給料もいりませんので、働かせてください」


 ニコって笑ってそう言ってくれた。


「無料でいいの?んー、じゃあこれからもよろしく頼もうかな」


 一人でフリーランスをやってみたが、もう1人くらいはいてもいいなぁって思ってたところだ。


 俺はこの子を連れていこうと思う。


 俺がヒナの身請けを済ませた時だった。


 冒険者カードが光っていた。


 取り出してみると俺の冒険者カードに変化が現れていた。


【星3つのレビューがつきました】


 表示が切り替わった。


【とてもいい仕事人でした。100点満点の仕事を10000点くらいで終わらせてくれました。いい意味で頼んでない事までやってくれる働き者です!byリッカ】


100%の高評価 0%の低評価


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