第13話 おっさん、とマッドフロッグ②


 宝箱の中身だがさっきと同じだった。

 肉だ。


【マッドフロッグの肉を獲得しました】


(出てこないと倒せないって聞いていたが、中にいる状態でも倒せるんだな)


 これは嬉しい誤算だ。


 そのまま次のマッドフロッグのところに行こうかと思った時だった。


 ボコッ!


 また地面が膨らんだ。


(あー、これ無限湧きか。もうこれで復活は2回目……だもんな?)


 なら倒しても倒しても無駄だ。


 どうせ次から次に湧いて出てくるんだから。


(マッドフロッグを全滅させるなら別の対策が必要、だなこれ。無闇に倒してもダメだ)


 マッドフロッグを根元から根絶させるのは無理っぽい、となると。


 マッドフロッグを地面から出てこないようにする方向の対策が有効かもしれない。


 とにかく地面を思いっきり固くして、こいつが飛び出せないようにする。


 例えば……


(コンクリートでも流してみるか?この世界でも偉い人の所有する道はたしかアスファルトとかが使われていたよな?ならコンクリートもあると思う)


 コンクリートを使えばおそらくだが、このマッドフロッグが飛び出してくるのも抑えられるかもしれない。


 だが当然俺は今コンクリートを持っていないのでどこかで調達する必要がある。


(今日のところはいったん街に帰ることにしよう)


 とりあえずの方針は定めた。

 正直いうとけっこう体がクタクタである。


 考えてみれば昨日の夜から寝ずに起きていたからな。

 徹夜だ。


 今日は早めに切り上げて帰ろう。

 本当は外でご飯を食いながら焚き火でも楽しむつもりだったんだが、それは無理そうだ。


 空を見ると綺麗な夕焼け空。


(何だかんだもう夕方なんだよなぁ、明日のことは明日の俺に任せよう)


 だが……。

 チラッ。


 俺は最後にもう一度膨らんだ地面を見た。


「無限湧きということは、無限に狩れるって言うことだよな?」


 ダラダラダラ。

 なんか地面から汗のようなものが流れているように見えるのは気のせいだろうか?


「許せよ。この世は弱肉強食なのだ」

「にゃご!」


 ニャゴの言葉が皮切りとなった。


 ファーミング開始!

 マッドフロッグは上を通らないと地面から出てこない。そういう特性があるのはすでに確認済みだ。


 安全圏からひたすら攻撃をして世界最高の安全最速ファーミングを行う!



(年甲斐もなくファーミングに熱中してしまった)


 無限湧きをいいことに俺はここぞとばかりにマッドフロッグを乱獲してしまった。


 ちなみに俺を1番ファーミングに熱中させたのは経験値が毎回ちゃんと手に入ることだった。


 微々たるものでも塵も積もれば山となるってやつ。


(ゲームとかだと無限湧きって経験値なかったりするけどな。ちゃんとあってよかったよなぁ)


 ちなみにだがお金は出ずに全て肉だった。

 だがそれを差し引いてもエグいくらいの経験値を貰っていた。



名前:タツヤ オノ

レベル:80

攻撃力:90

防御力:80

スキル:防御無視

ボーナスポイント:110



 となってた。


 俺がパーティを抜けてから数日でこんなにすごい数字になってしまった。


(実は俺フリーランスの才能あったのかもなぁ)


 なんて自画自賛をしたくなるくらいの成果を今日も得ていた。


 さて、今日の成果確認も終わったところで。


「今日の宿でも探そうかな」

「にゃご!」

「ペット同伴OKのとこ探さないとなー」


 そんな軽口を叩きながら歩いていたところだった。


 ん?

 とある店の前で足を止めた。


「おっ。石屋か」


 また明日でもいいかと思っていたが、先に入っておくことにしよう。


 目当てはもちろんコンクリートである。


 石屋の中に入るとヨボヨボのじいちゃんが店番をしていた。


「すいませーん。コンクリートってあります?」


 そう聞いてみると爺さんは言った。


「コンクリートはないなぁ。セメントならあるが」

「セメントっていうとコンクリートの素ですよね?」

「うむ」


 そう答えると爺さんはカウンターにセメントの入った入れ物を出してきた。


「これに水と砂利と砂を混ぜればコンクリートが出来る」

「混ぜてコンクリートにして売って貰えませんか?」

「すまんのう。砂利も砂も置いとらんのじゃよ。そのへんで手に入るからわざわざ買う人間もおらんからの」

「そうですか、ならセメントだけ買わせて貰えますか?」

「ふむ。いいじゃろう」


 とりあえず俺は適当な量のセメントを購入した。


 20キロほど購入したが、1000ジェルだった。

 これが購入できる最低重量だった。



(あとは問題は砂利とか砂だよな。どうしようかなぁこれ)


 その辺で手に入るとは言われても大量に集めるとなると、意外と集めるのが大変じゃないか?


 そんなことを考えながら店の外に出て。

 俺はとある方向を見た。


 実はこの街なんだが鉱山があるようで、それが少し離れたところに見えている。


(あそこに行けば交渉できそうだが、うーん。あーいう仕事現場ってアポ無しで行ってもいいものなんだろうか?)


 そんなこと考えてた。

 で、今度こそ宿に向かおうと思ったのだが。


 右の方から馬の走る音が聞こえた。

 右に目をやると馬が走ってきていた。


 ドタッ、

 ドタッ!


 ものすごいスピードで俺の前を素通りしていった。


(危ないなぁ。70キロくらい出てないか?日本じゃ速度オーバーだろあれ)


 そう思った時だった。


「キャァッ!!!!」


 左から高い声の叫び声。


 ギギィ!!!!


「ヒヒーン!」


 馬が急に止まるような音も聞こえる。


「うるせぇな!もうすぐぶつかる所だったぞ!クソガキ!お前にぶつかって俺の馬がケガしたらどうするんだ?!」


 それから怒号。


(あっ、この声……)


 俺は急いで声の方に近づいて行くことにした。


 すると何が起きたのかが、すぐに理解出来た。


「貴様。急に飛び出してきおって!俺が誰か知らぬわけではないな?イヤーミ・ガルド様であるぞ!謝れ今すぐに謝れ!土下座だ土下座!」


 イヤーミが子供の女の子に向かって偉そうに怒鳴っていた。


 女の子はまだ10歳前後くらいに見える。

 そんな子に向かって大の大人が本気でブチ切れて怒っている。


(またこいつか。本当に偉そうで嫌なやつだ。相手は子供だぞ?)


 子供がやったんなら許せというつもりもないけど今のは明らかにこいつに落ち度がある。

 それくらい有り得ない速度で走ってきた。


 言ってみれば青信号で横断歩道を歩行者が歩いてるところに速度制限無視、信号無視で突っ込んできて歩行者にブチ切れてるようなもんだろう。







【補足】

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