第12話 おっさん、とマッドフロッグ①

 俺は酒場を出て雑貨屋に向かうことにした。


 リッカが2週間の延長を受け入れたことを考えてかなりの長期間がかかる仕事であると思うので、念のため野営をするための準備をしている。


(正直言って毎回毎回街の外に行って帰ってを繰り返すのは手間だよな。その場で眠れるとベストなんだよなぁ)


 なので雑貨屋でとりあえず【テント】を購入することにした。


 それから非常食とか、飲み物とか、必要そうなものを買ったのだが……。


 とあるものが俺の視線を射止めた。


(米かぁ……食いたいよなぁ)


 この雑貨屋には焚き火セットと釜もあった。


(買っちゃうかぁ、せっかく異世界に来たわけだし買わないと損だよな(謎理論))


 さいわい、最近の俺の財布には金があるわけだし、ここで余計なものを買っても損にはならない。


(そもそも憧れてたんだよな、ちょっとしたキャンプみたいなことを楽しむのって)


 外で食う飯はどんな味なんだろうなぁ、食える時間あるといいなぁ、とか思いながら結局、米炊きセットを買うことにした。


 準備を終えた俺はそのまま仕事現場に向かうことにした。


 初めての本格的な仕事である。

 ものすごくていねいにやろうと思う。


(できれば期限の2週間ギリギリまで使いたいな。実際はそんなにかからないかもしれないけど)


 関所で簡単な外出するための手続きを行いさっそく外に出た。


「ひぃ〜ふぅ〜」


 果てしなく続く道をジョギングのような感じで走っていく。


 そのとき、肩に乗っていたニャゴが泣いた。


「にゃ〜ご」


 悲しそうだった。


 多分だけど自分がもっと大きければ俺を運べたのになぁとか思ってるんだと思う。


「ははは、お前はそうやって俺の癒しになってるんだから、それでいいんだよ」


 頭を撫でてやる。

 小型サイズのペットはそばに居るだけで癒しになるのだ。


 そうして走っているとやがて、ゴツゴツとした岩が見えた。


「ふむ」


 地図を取りだして見比べてみる。

 こういう岩は書いていないようだ。


「念の為書いておくか」


 地図に岩を書き込んだ。


 ちなみにだが俺が今いる場所は荒野とでも言えばいいんだろうか?

 石や岩ばかりの場所だ。


 かなり荒れている。

 よく見てみるとそこら辺ヒビが入っていたり段差が出来ていたりするところもある。


(この段差結構でかいよなぁ馬が足取られたら大変だぞ?)


 というより、よく見てみたら血(?)のようなものが乾いたような跡がある。


(既に犠牲者がいるのか、ここは危険かもな)


 俺は地図に【Danger】の印も付けることにした。

 注意した方が良さそうな所があればこうやって追記することにしよう。


 そして、少し離れた場所では地面が隆起している。

 下になにか埋まってますよ、と言わんばかりの膨らみ。おまけに地面には×マークのようなヒビが入ってる。


「あれがマッドフロッグってやつかな?」


 とりあえず地面の膨らみに近づいてみる事にした。


 つんつん。

 膨らんでいるところを剣で突っついて後ろに下がってみたが、シーン。


 反応がない。


「死んでるのか?それともやっぱり上を通らないと意味がない?」


 ってわけで。

 スタスタスタスタ。


 歩いて膨らみの上を通り抜ける。


「ゲコォォォォォォォォ!!!!!」


 バーン!


 地面の下からカエルが飛び出してきた。


「マジで上を通ったら出てくるんだなぁ、こいつら」


 スタッ。

 マッドフロッグは着地した。


(とりあえず動きを観察しよう)


 観察してるとフロッグが動き出した。


 ガサッ。

 ガサッ。


 地面を掘って地中に帰ろうとしていた。

 俺の事を敵だと認識していないのだろうか?


(それとも本当に嫌がらせしてくるだけのモンスターなのか?こいつ)


 だが俺にとってこいつは明確な敵である。


「すまん。【スラッシュ】」


 ザン!


 俺はマッドフロッグに向けて剣を振り下ろした。


 マッドフロッグが消えた場所に宝箱が落ちた。

 開けてみる。


【マッドフロッグの肉を入手しました】


「うーん。肉をもらってもどうしたもんか」


 まぁいいや。

 俺はもう一度地図に目を戻した。

 そして、地図にマークをする。


「ここは、駆除完了っと」

「にゃごっ!」


 ニャゴも俺の初討伐を祝ってくれているようだった。


 それから次の場所にある膨らみに目を向けたのだが。


 ボゴっ!

 後ろから音。


「ん?」


 振り返ってみる。


 俺がさっきマッドフロッグを倒したはずの場所がまた膨らんでいた。


「うげっ、マジかよ」


 復活した?

 ま、まさかな。


 今のでか?


 とりあえず来た道を戻った。


 目をこらすと視界に敵のステータスが浮かび上がってくる。



名前:マッドフロッグ

レベル:1

体力:10

状態:無敵(あらゆる攻撃を受け付けない)



(このレベルじゃ経験値も期待できないよなぁ。これはクソモンスですわ)


 むしろ俺も少しだけこの依頼を受けたことを後悔し始めたくらいである。


 だが……


(一度受けた以上は最後までやり遂げる。日本人なら当たり前だよなぁ?いや、さすがに異世界人でも当たり前か)


 そんなことを思いながら俺はもう少し目を凝らしてみる事にした。



名前:地面

防御力:9999



 すると地面のステータスも表示された。


(地面にも防御力があるのか)


 いや、待てよ。


「俺のスキルは防御無視ってことは、この地面の防御力も無視できるんじゃないか?」


 ゴクリ。


 唾を飲み込んで俺は剣を向けた。


「地面を切りつけるなんて、よく考えたら変な人だな。誰にも見られていないウチに済ませてしまおう」


【スタブ】


 俺はスピアで突くように剣を突き出した。


 力の限り思いっきり地面に向ける。


 すると、どうだろう?


 ズボッ!


 地面の中に剣が入っていく。


【防御無視が発動しました】


(おぉっ!スキルのお陰で地面の防御力を無視してあっさりと貫通した?!)


 あとは


(マッドフロッグの無敵はどうなる?)


 そのまま剣を突き刺していくと、確かな手応え。


【防御無視が発動しました】


 勝ちを確信した。


(いける!マッドフロッグの【無敵】を俺のスキルは無視したぞ!)


「ゲェコォォォォォォォォォォォォ!!!」


 地中からマッドフロッグのでかい声が聞こえてきた。

 そして、ポツン。


 目の前に宝箱が現れた。


 俺のスキルは【無敵状態】すら無視して敵を倒せるみたいだ。


(このスキルまじでやっべぇぇぇぇぇぇ!!!!)









【補足】

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