第11話 おっさん、依頼される
ジーッ。
リッカが俺を見て聞いてくる。
「タツヤって冒険者なんだっけ?」
「うん。フリーランス」
パシっ。
リッカがカウンターに出したクエスト用紙を取って俺に見せてきた。
「フリーランスかぁ。ちょうど良かった。これ、受けてくれない?」
【マップ作成を頼む】
目的:グリノヴァの街周辺のマップ作成(敵がいないエリアの調査)
目的地:グリノヴァの街周辺
報酬:30万ジェル
難易度:Dランク
希望日数:3日
(マップ作成、か)
「俺空間把握とか苦手でさ、マップ作成とか苦手だけど」
「あー、これ使えばいいよ。簡単だからさ」
ぺラッ。
彼女は俺にこの街周辺のマップを渡してくる。
ほとんど真っ白だったけど、なんとなく分かるような地図だった。
白地図ってやつかな?
「このマップに調査した結果を書いていってくれたらいいんだ」
「ごめん。具体的になにを調査したらいいの?初心者でなんも分からないんだよね」
そう聞くとリッカは嫌な顔せず答えてくれた。
「この付近には【マッドフロッグ】ていうモンスターがいてさ」
「マッドフロッグ?」
「地面に埋まってるカエルだよ。埋まってる場所の上を通ると急に出てきて襲ってくるんだ」
地雷みたいなモンスターらしい。
いやらしいよな。
「強いモンスター?」
聞いてみるとリッカは首を横に振った。
「強くないよ。でもさ、飛び出す勢いが強すぎて馬車が転けるんだ。それで商品がダメになることが多くてさ」
そう言ってリッカは続けた。
「さっきガルド商会の方が早かったでしょ?ガルドロードはマッドフロッグがいない最短の道なんだ」
リッカがそう言った時だった。
バーン!!!!
またギルドの扉が開いた。
そこから入ってきたのは
(さっきのガルド商会のおっさんか)
そいつはリッカを見つけてニヤッと口元を歪ませた。
そして歩いてくる。
「よう、ポンコツ商人。相変わらずマッドフロッグに怯えているようだな」
「そりゃ、荷物がダメになるからね」
「道を持ってない商人は可哀想だねぇ」
そう言っておっさんは地図を取りだしてきた。
見せてきた地図には何本もの線が引いてあった。
そこで俺を見てきたおっさん。
「教えてやるよ。この線が引いてあるルートは安全なルート。マッドフロッグが出現しないルートだ。この俺イヤーミ・ガルドが大枚はたいて完成させた道である」
俺はリッカに聞いてみた。
「このルートを頼んで使わせてもらえばいいんじゃないのか?」
「無理だよ」
リッカが悔しそうに答えた。
イヤーミが笑った。
「このルートはガルド商会が占領している。他の商会が通りたければ通行料は1回50万ジェルである」
「50万?!」
「ガーハッハッハッ!当然であろう?安全なルートを調査させたのもガルド商会、そして、その道を整備したのもガルド商会。金がかかってるんだよ。それを占領して何が悪い?通りたけりゃ金を払え貧乏人。ここは私有地だ」
地図をしまうイヤーミ。
そのまま高らかに笑ってイヤーミはギルドを出ていった。
「あいつらの荷物を運ぶ時間が早すぎて私たちも商売あがったりなんだよね。だからさ、私達もルートを開通させることにした」
リッカは口を開く。
「お願い。ギルドを通さないなら書いてある代金の倍払えるし、地図作成をお願いしたいの。期間も伸ばせるよ」
上目遣いで頼まれた。
だから引き受けようと思ったわけじゃないけど。
「いいよ。この依頼受けよう。期限だけど2週間貰っていい?その、一応。不安でさ」
パァァァァァァっ。
リッカの顔が明るくなった。
「いいよ。2週間でぜんぜんいいよ!」
俺は放置してた受付嬢に目をやった。
「ってわけでごめんなさい。さっそく仕事が入ったんで、では」
びしっ。
受付嬢に敬礼をしながら俺とリッカはギルドを出ていくことにした。
そのまま俺とリッカはとりあえずこの街の酒場に移動することにした。
そこで細かい説明を受ける。
リッカも地図を広げて説明してくれる。
【地図】
□=グリノヴァの街
■=マッドフロッグ出現ポイント
→=ルート
【ガルド商会のルート。通称ガルドロード】
→→→→→→→→→
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
→ ■■■■■■■■■■→→→→□
■■■■■■■■■■
【他商会のルート】
→→→→→→→→→
↑ ↓
↑ ↓
↑ (通行禁止) ↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
↑ ■■■■■■■■■■↓
→ ■■■■■■■■■■→→→→□
■■■■■■■■■■
というような地図を書いてくれたリッカ。
「ガルド商会はこうやってマッドフロッグを回避出来るルートを持ってるの。でも他は持ってないから迂回する分だけ時間的な損失が出る」
俺は顎に手を当てて見ていた。
「ふむ。たしかにガルド商会はかなり早いように見えるね」
「だから理想としてはこうなの」
【理想のルート】
→→→→→→→→→→→→→→→→→□
そう言ってくる彼女。
「つまりこのマッドフロッグってやつを全滅させてくれって話?」
「理想としては、ね、でも無理だから道を見つけて欲しい」
一応討伐の方向でも考えてみよう。
「ちなみに全部倒すとなるとどれだけ時間かかるかな?」
「分かんない。1000匹いるかもだし100匹かもしれない。ちなみに攻撃するにはマッドフロッグを地面から出してから攻撃しないと倒せないよ。慣れた人でも一時間で3匹とかだと思う。奴ら地面の中にいる間無敵だから。めんどくさい割にドロップも良くないから嫌われてる」
リッカに言われた数字は気が遠くなる数字だった。
(それにしてもこれはさっそくクソモンスってやつか。地面にいる間無敵……か)
ふぅ、どうしたもんか。
そう思っていたらリッカはこう付け足してきた。
「聞いての通り気の遠くなる数だからさ、マッドフロッグがいないところを探して調査する、でいいよ。多分今より早くなるルートもあると思うからさ」
そう言ってリッカは立ち上がる。
「じゃあ、私荷物の積み下ろしとかあるからさ、また5日後。作業の進捗でも聞かせてくれると嬉しいな」
彼女は最後にこう言った。
「終わんなくても途中までの給料は払うから安心してね」
リッカはそう言って出ていった。
(俺が頑張ればあの子の仕事も楽になる、そして俺は報酬が貰える)
ウィン・ウィンの関係というやつだ。
さて、頑張りますか。
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