第8話 おっさん、vs魔法少女?

 ゴブリン(魔法少女)が現れた。


 即座に俺たちに気付いたようだ。


「ギィィィィィィ!!!」


「ふぎゃー!しゃー!」


 相変わらず猫の威嚇は続いている。


 もしやだがこの猫はあのゴブリンに追われて、この木を登って来たって訳だろうか?


(ってか、なんであいつ、魔法少女の姿になってんの?)


 いや、ありえないだろ。


 色々思うことはあったがゴブリンが手を動かすのが見えた。


(魔法が飛んでくるっ!)


 俺は猫を抱えて幹から即飛び降りる。


「ギィィィィィィィィ!!!!」


 ブン!

 ゴブリンが杖を俺たちに向けると、俺たちがいた場所に電撃が飛んで行った。


「本当に魔法使えるのかよ」


 だが、この状況であいつが魔法使いってことは、実は俺が有利だ。


「ふぅ」


 息を吐き出して一気にゴブリンに詰寄る。


「ギィィィィィィ!!!」


 ボウッ!


 飛んでくるのは火の玉ファイアボール


 俺は難なく避けた。


 そして、そのまま距離を詰めて。


「教えてくれといてやるよ。1対1で強いのは剣の方だってな。特にこの距離だと、なおさらなっ!」


 ザン!


 ゴブリンを切り裂いた。


「ギィィィィィィィィ……」


 ドサッ。


 その場に倒れるゴブリン。

 光となって消えていく。


 残されたのは宝箱と魔法少女の衣装と杖。


 俺は猫をその場に下ろした。

 全てのドロップ品を回収する。


 猫に目を戻した。


「ほら、もうこれで帰れるよな?」


 俺は街の方に帰ろうとしたのだが。


「ふぎゃっ」


 猫が足にしがみついてきた。


 後ろ足で立って前足日本で俺の足を掴んでる。


 かわいい。


「で、連れてけって?」

「にゃっ」


 スリスリ。

 俺の足に頬をこすりつけてくる。


 どうやら懐かれてしまったようだ。


 んー。


 仕方ない。

 連れていこう。


「ほら、こいよ」


 しゃがむと猫は俺の肩に飛び乗ってきた。


「にゃ〜ご」

「猫は可愛いな」


 猫に癒されながら俺は歩いていくことにした。


 で、その時だった。


【経験値を獲得しました】


【レベルが上がりました】


【ボーナスポイントを獲得しました】


「おっ。またレベルが上がったか」


 どれどれ。


「ステータスオープン」


名前:タツヤ オノ

レベル:45

攻撃力:55

防御力:45

スキル:防御無視

ボーナスポイント:30



 よ、よんじゅうごぉ?!


 ポカーン。

 口が開いた。


 塞がらない。


「え?今のゴブリン倒して一気にこんなにレベルが上がったってことだよな?」


 こんなことあるんだなぁ。


 今まで全然上がらなかっただけに、これだけ上がってしまっていいのか、逆に不安になってくるが。


(そういえばこんな法則を聞いたことがある気がするな)


 エネミーのレベル=素のステータス+装備の強さ


 で、レベルが高ければ貰える経験値も多いのだが。


(この装備がそれだけ強かったってことなのかもな〜)


 よし、考え事終わり。


 とりあえず猫を連れて街に帰ることにしよう。


 んで、とりあえず猫についてだけど、獣医にでも見てもらおうかな?

 一応野生の猫っぽいし寄生虫とか問題があっても困るし。


 ボーナスポイントについてはもう少し保留しておこうかな?

 困ってから使えばいいと思うし。




 街に戻ってきて獣医のところに向かった。


 今の時間はそんなに混んでいないらしくすぐに診察室に通される。


「タツヤさん、ですね?」

「はい。こちらの猫をとりあえず見てもらいたくて」


 俺は机の上に猫を載せた。


 目をぱちくりする先生。


「猫?」

「なにか?」

「これ猫じゃないですよ」


 そう言ってその場で椅子から落ちて後ろに倒れる先生。


「き、キメラです……」


 俺は猫を抱えてまじまじと観察してみることにした。


「にゃ〜ご」


 顔はたしかにライオンっぽく見えなくもない。


 おしりの方から頭の方まで撫でるように触ってみる。


 背中くらいになんか突起があった。


 毛をかき分けてみると小さな翼が毛に埋もれるようにして生えていた。


 毛だらけの尻尾を見てみる。


 よく見ると先端は蛇の口のようになっていた。

 ほんとうによく見ないとキメラだと気付かなかった。


「にゃ〜ご」

「き、キメラぁぁぁあぁぁあ?!!!!!」


 今更になって俺も驚いた。


 うおっ!俺キメラ連れてきたのかよ?!


 先生は腰を抑えながら椅子に座り直した。


「このキメラの何を見ればいいのでしょうか?」

「あ、えーっと病気してないかを見て欲しいんですけど」

「キメラは病気になりません。体が頑丈で繁殖力も強いのです」

「あ、はい」


「にゃ〜ご」


 すりすり。

 キメラは俺に頬を擦り付けて来る。


「すごい懐いていますね」

「そうなんですよね。できればその、飼ってあげたいって気持ちがあるんですけど。モンスターの飼育って大丈夫なんですかね?」

「うーん」


 先生は口元に手を当てた。


「これだけ懐いてるなら大丈夫だと思いますよ。キメラは頭がいいと聞きます。これだけ小さな頃から育てるのなら人間に危害を加えることもないでしょうし」

「おぉ」

「それにあなたに捨てられたら裏切られたと思い、それこそ人を襲うようになるかもしれません」

「大丈夫ですよ。ペットを捨てるようなことはしませんよ」


 そう言うと先生は言った。


「素晴らしい飼い主さんですね。これだけ懐いてるキメラなんて初めて見ました。珍しいものを見せていただきました」


 ぺこり。

 頭を下げてくる先生。


「お代はけっこうですよ。これと言って診察をした訳ではないですから」


 おぉ〜。


 診察代無料チートだ。


 俺は診療所を出た。

 俺の肩の上にキメラは乗ってる。


「にゃ〜ご」


「かわいいやつめ〜」


 喉を撫でてやるとゴロゴロと音を鳴らす。

 かわいいもんだ。


 さてと。


「名前決めないとな」


 ペットと言えば名前である。


 どういう名前にしようかなーって少し悩んだが、


「ニャゴでいいか」

「にゃ〜ご」


 喜んでいるようだった。


 キメラだからかっこいい名前でも付けようか迷ったけど可愛げがある名前の方がいいや。


 それから俺はそのまま酒場に向かうことにした。


 んで酒場に向かいながらこれからの事を考えることにした。


(この街にいてもリダスがいるんだよな)


 昨日は許されたが、これからも許してくれるとは思わないし。

 となると。


(せっかくだし、この世界の旅でもしてみようかな)


 ここに転移して半年。

 俺はこの街以外行ったことがないのだが、探せばここよりいい街も見つかるかもしれない。


 というわけで俺はマシロに依頼のクリアを伝えてこの街を離れることにしようと思う。


 元々冒険者ってのは世界を渡り歩いてるみたいだし、俺もそういう生活を送ることにしよう。


 そうやって考えをまとめて俺は酒場に入っていった。


 今日がここでの最後の晩餐になるだろう。


 思い立ったら即行動だ。






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