第7話 おっさん、リンゴを拾いに行く
翌日。
俺は朝起きて速攻で黄金リンゴを取りに向かうことにした。
リンゴのある場所は昨日俺がマシロを助けた森の近くだ。
もちろんモンスターも出る。
(有事の際に備えて雑貨屋にでもよるか。俺もおっさんだしやらかすかもしれないしな)
雑貨屋に立ち寄った。
雑貨屋には先客の冒険者が何人かいて話をしている。
「おい、聞いたか?魔法少女ゴブリンの話」
「はぁ?魔法少女ゴブリン?」
「なんでも魔法を使えるゴブリンが現れたらしい」
そんな会話が聞こえてきた。
(魔法少女ゴブリン、か)
イメージしてみよう。
ゴブリンに魔法少女の衣装を着せて杖を持たせるんだ。
(ぶふぉっ!)
吹き出した。
とんでもないモンスターが出来上がってしまった。
どこの世界に魔法少女の衣装着たゴブリンがいるんだよ。
(でも、この世界にはいるらしいんだよなぁ)
「しかし魔法少女ゴブリンか。倒したら結構経験値もらえそうじゃね?」
「だなぁ、モンスターならなんのためらいもなく倒せるしなぁ、見かけたら倒してみるか」
冒険者たちはそう言って雑貨屋を後にした。
その魔法少女ゴブリンとやらがどこに出るのか分からないが俺も対面したら倒してみよう。
しかし、だ。
(ほんとにいるのかね、魔法少女ゴブリンなんて)
なにかの見間違えじゃないのか?
でも、見間違えるようななにかあるか?
そんなこと思いながら俺は必要なアイテムを購入することにした。
アイテムの購入が終わると雑貨屋を出た。
そのまま俺は森の方に向かっていく。
「あったあった」
リンゴを探すとすぐに見つかった。
「でけぇなこの木。10メートルくらいか」
木の上にリンゴがなってる。
「こういうの取ったことないんだけどどうしたらいいんだろうな」
とりあえずよじ登ってみるか?
農家だとなんか器具みたいなのを使うんだろうか?
多分、そうだったと思うけど。
そんなこと思いながらとりあえずよじ登ってみる事にした。
よじよじ。
木登りなんて子供の頃にちょっとやっただけだ。
すごい懐かしさを感じながら登っていく。
意外と取っ掛りがあったりして登るのに苦労はなかった。
「ふぅ」
最初の幹に到着。
そこで気付いた。
「ふぎー。ふぎーっ」
猫?
小さな赤ちゃんみたいな猫が幹の上にいる。
なんでこんなところに?
「ふぎー!ふぎー!」
威嚇しているようだ。
だが、近付かなければ俺に手出しをしてきそうな雰囲気でもない。
「悪かったよ。何もしないから大人しくしててくれ」
俺は猫から目を背けてそのまま木を登っていくことにした。
案の定猫が襲ってくる様子はなかった。
しかし、なんでこんなところに猫が?
木に登ってみたけど降りられなくなった?
色々考えながら木を登ってみるとやがて木の頂上に着いた。
右も左も見渡す限り金のリンゴがなってる。
取り放題だ。
「うひゃー。バイキングかよー」
そんなこと呟きながら俺はリンゴを回収することにした。
とりあえず1つ。
ブチッ。
引きちぎってみた。
「他のリンゴも取ろう。10個くらいでいいか?とりあえず」
ブチッ。
ブチッ。
ブチッ。
木の枝からリンゴを取ってはアイテムポーチに放り込んでいく。
それを繰り返した。
【金のリンゴ×10個を入手しました】
キリのいいとこで止める。
まぁ、こんなものでいいだろう。
(あんまり調子乗ると俺おっさんだから足滑らせるかもしれないしな)
俺は木を降りていく事にした。
正直登るより降りる時の方が怖い。
そうして木を降りていくとやがてさっきの猫がいた幹のとこまで到着。
「ふぎゃー!」
どうやらまだ俺を威嚇しているらしい。
敵だと認識されているのだろう。
しかし、もし降りられなくなってるのだとしたら、かわいそうだ。
俺は猫の方に少しだけ移動した。
「ふぎゃー!!!」
威嚇してる。
全身の毛を立ててるし威嚇してる以外に見ようがない。
「これ、やるよ」
さっき上で取ってきたリンゴを俺は猫の前に置いた。
「ふぎゃー……」
心なしか威嚇の勢いがマシになった気がする。
そろり、そろり、とリンゴに近付いて前足で触る。
ぺろっ。
毒味のようなことをして猫はその場で少し齧り付いた。
むしゃむしゃ。
食べてた。
ツン。
しばらく食べると顔で俺の方にリンゴを押してくる猫。
どうやら「もういいよ、食べて」と言いたげなようだが。
「あ、いいよ。あげたものだから」
手を前に出して横に振った。
すると、また食べ始めた。
どうやら警戒心はだいぶ解けてきたようだ。
で、そのとき俺は気づいた。
(怪我してるのか?こいつ)
猫の右の後ろ足が潰れているのに気付いた。
「どうりでね。そりゃ怖いよな」
足が潰れてるところに俺が来たんじゃ敵だと認識するのも無理は無いか。
しかし、今ならいけるんじゃないか?
「ほらいい子だから」
猫にそろりそろりと近付くと猫はその場で横になった。
俺を味方だと認識したのかもしれない。
猫の足を触れる距離まで近付くと俺はアイテムポーチからポーションを取りだした。
ポーションを猫の足に使う。
ポォッ。
緑の光が足を包み込んだ。
やがて、光が収まるとそこには問題のない足が戻っていた。
「これで歩けるな」
俺は笑顔を作りながら少し猫を撫でた。
ふさふさ。
気持ちいい。
猫は触って欲しいのか頭を自分から差し出してくる。
ワシャワシャ触ってやる。
「んにゃ〜」
猫なで声ってやつかな?
かわいらしく鳴いていた。
しばらく触ってから俺は立ち上がった。
「じゃあね、もうそれで降りられるだろ?」
俺がそう言って幹から降りようとしたら猫が足にしがみつく。
「ふにゃー」
「まだなんかあるのか?」
俺がそう聞くと猫は俺の足から手を離してとある方角を見た。
茂みがある方向だった。
「にゃー!しゃー!」
威嚇を始めた。
なにか来るのか?
俺はしゃがみこんだ。
そして猫と同じ方向を見ていたら。
カサカサ。
茂みをかき分けるような音が聞こえた。
そして、茂みの間から、かすかに見えた。
白色のドレス。
(人間?)
なんだよ、驚かせやがって。
猫に目を向けると、まだ威嚇してた。
しかし、こんなに威嚇されるなんて何をしたんだろうな?あのドレスのやつは。
(顔でも見てやろうか)
そう思って茂みの方に目を戻した。
カサっ。
大きな茂みの音がなって、ドレスの奴は姿を見せた。
「ギィィィィィィィィ」
茂みから姿を現したのは人間じゃなかった。
緑色のモンスター。
ゴブリン。
なぜか手には棍棒ではなく魔法使いが持つ杖を持っていた。
そして、服装は魔法少女が身につけるようなドレス。
俺は察してしまったね。
(こいつだっ!こいつが魔法少女ゴブリン!!!ほんとにいた!)
えーっと、スマホ……。写真撮らなきゃ。
って、スマホないわ、この世界。
日本なら間違いなく写真を撮っていただろうと思われる光景が目の前にあった。
こいつはとんでもないレアモンスター!
だが、しかし。
「あいつ、あの装備どこから持ってきたんだ?元々人間のものだろ?」
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