底辺のおっさん冒険者、見下してくるパーティを思い切ってやめてフリーランスになったら待遇が3000倍になった~異世界でゆるゆるで楽しいフリーランス生活を送りたい!
第6話 ボーナスポイント?スキル?【リダス視点】
第6話 ボーナスポイント?スキル?【リダス視点】
リダスは酒場に入って席に座ると頭を悩ませていた。
(なんだ?あのおっさん、なんの話をしてるんだ?)
ボーナスポイント?
スキル?
リダスはタツヤが話している言葉のほとんどを理解していなかった。
その時だった。
「リーダー」
リダスのパーティメンバーの女が酒場に入ってきた。
それからリダスの座っている席までやってきた。
そこでリダスは聞いてみることにした。
「なぁお前スキルって知ってるか?」
「スキル?知らないなぁ」
「んじゃ、ボーナスポイントは?」
「知らなーい」
首を横に振ってた。
その様子を見て逆に女がリダスに聞いていた。
「変なの。急にどうしたの?」
「さっき、そこでおっさんに会ったんだよ。そうしたら変なことべちゃくちゃ喋り始めたな。レベルあがったらスキルを獲得したって」
「えぇ?なんのはなしー?そんなの聞いたことないなー。レベル上がっても貰えるものなんて何も無いでしょ」
そう言うと女はいつものように注文を始めた。
しかしリダスの中で何かが引っかかっていた。
(あのおっさんは無能の雑魚だが、俺の前では嘘をついたことがない)
タツヤが嘘をつくメリットなんて何一つなかったから。
そして、今回も嘘をついていないのだろう、とリダスは考えたが。
(全然分からん。なんなんだ、スキルって)
リダスがそう思っていた時だった。
バーン!
酒場の扉が開く。
入ってきたのはタツヤではない別のおっさんだった。
「今ゴブリンの森に入っていったら岩を切り裂きながら笑ってる男がいた!」
おっさんはそう叫んだが。
酒場はドワッ!と笑いに包まれた。
「おいおい、なに言ってんだよ」
「岩を切り裂く?なにで?」
「岩なんて切れるわけねぇじゃん」
酒場にいた人間が全員おっさんの言葉を笑う。
しかしおっさんは続けた。
「ほ、本当なんだって!剣を振り回しながら岩を切ってる男がいた!」
酒場にいた1人の男が言った。
「そんなのいるわけないだろ?おっさん、酒でも飲んで森の中入ったんだろ?幻覚だって、げーんかく」
それで話はまとまったように見えたがおっさんはまだまだ続ける。
「ほ、本当なんだって。レベル上がってスキルを貰ったって言ってた【防御無視】っていうスキルを貰ってそれを使えば岩も切れるって」
「へいへい」
店内にいた他の人間は誰もその話を信じなかった。
リダスはと言うと
(なんだ、幻覚か。それにしてもあの冴えないおっさんの妄想が酷いだけか)
リダスも今の話を信じることは無かった。
(バカバカしい。岩なんて切れるわけが無いしそもそもスキルだの、ボーナスポイントだの、そんなもの聞いたことがない)
すっ。
リダスは立ち上がった。
「どうしたの?リーダー」
「今日は帰るわ」
「えー?もう帰るのー?」
リダスはその言葉には答えずに家へと帰って行った。
だがその帰り道の事だった。
(やはり気になる)
リダスはなぜかスキルなどの話が気になってしまっていた。
「ステータスオープン」
名前:リダス
レベル:45
攻撃力:45
防御力:45
項目はこれだけで終わっていた。
スキルなんてないし、ボーナスポイントなんてものも表示されない。
そしてここまでのレベルアップで両方見たことがなかった。
(あのおっさん、いい年だけど変な妄想を始めるにはちょっと早すぎる気がするな)
リダスは変に引っかかった。
で、周りを見た。
静かな通路。
人なんていない道だったけど、とある店が目に留まる。
【ルインの占い屋】
(こんなところに占い屋なんてあったんだな、ルイン?聞いたことないが、人の名前か?)
おっさんのこともあるし、なんとなくリダスは占い屋に入ってみることにした。
垂れ下がった布で店の中は隠れていた。
その布を鬱陶しく感じながら振り払って中へ。
その中にいたのは黒い花嫁衣裳みたいなのを身につけた幼い女だった。
「あたちルイン、よろしくね」
「おいガキ、とっとと占えよ。1回いくらだ?」
「どんな人生送ってきたら、そんなに性格悪くなるのー?反面教師にしたいなー」
「うるせぇよ、早く占えカス。タツヤっていう冴えないおっさんについて占え」
ルインは水晶に手を当てて覗き込む。
「あたちこの人嫌いー」
「お?分かるヤツじゃねぇかよガキ」
「これからこのタツヤって人は仲間に恵まれて、地位が上がって、いろんなもの手に入れていくんだって。つまんないよねー」
「は?そんなわけないだろ。冴えない価値のないおっさんだぞ?」
「この人は異世界転移者って人みたいで、【スキル】と【ボーナスポイント】ってものに恵まれてるみたい、つまんない人生。この世界でこの人だけなんだって、レベル上がっていろんなもの貰えるの」
「あーあーもういい。つまんねぇんだよお前の占い。お前も変な妄想してんのか?次は俺について占え」
スっ、
ルインは真っ直ぐリダスを指さして言った。
「あなたは破滅するのー」
「は?」
「仲間からは見捨てられて、家族からも捨てられて、婚約者にも婚約破棄されて、あなたは強くない無能だから生きるのに苦労するのー、それで惨めに死ね!それが私の大好きな人生ー」
にんまり笑顔を浮かべるルイン。
「人生山あり谷あり。喪失しかない。あたちはそういう人生が好きなの。怒って絶望して心折れて、泣いて、叫んで、それがあなたの人生」
「てめぇ、喧嘩売ってんのか?」
「売ってないよ?全部事実だよ?これがあなたの未来」
「んなわけねぇだろ!」
ガン!
リダスはルインの店の壺を蹴った。
(へっ!ざまぁみろ!わきまえろ!)
だが、割れない。
それどころか自分の足が痛くなってくる、
(なんだこりゃ、かってぇぇぇぇぇぇ!!!)
まるでこの世のものでは無いような硬さをそのツボは持っていた。
おそるおそるルインの方を見たリダス。
「お前は何者なんだ?」
「あたちはルイン。
次の瞬間リダスの体は店の外にあった。
(あれ?俺がさっきいた道だ)
占い屋があった場所をみた。
空き地だ。
(ゆ、夢だ。こ、こんなことあるわけがない!)
リダスは逃げるように走り出した。
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